2020年にOPS1.012という傑出した成績を記録した村上宗隆(ヤクルト)や日本シリーズMVPの栗原陵矢(ソフトバンク)が、2019年以前の過去16年間にプロ野球で投じられた400万球を解析したAIキャッチャーと対戦したら、どちらが勝つだろうか。

 新型コロナウイルスの影響でステイホームを強いられる1月10日、そんな“夢の対戦”を企画したのが日本テレビ系列で放送された『プロ野球No.1決定戦!バトルスタジアム』だ。プロ野球ファンにとって正月の風物詩となったこの番組は1985年に始まり、今年で35回目を迎えた。

 じつはこの番組、読売テレビとともに日本プロ野球選手会が主催している。選手会の森忠仁事務局長は、シーズンオフにお茶の間に向けて露出する目的をこう説明する。

「野球普及のために行なっています。テレビ局を巻き込んでやっているこうした番組は全部、選手会の主催ですね。基本的にはテレビ局が内容を考えて、選手会が安全面などの部分をチェックして、ゴーを出すか判断しています」
  オフシーズンだからできるこうした企画に加え、選手会は近年、さまざまな動きを積極的に仕掛けている。例えば昨年12月、「構造改革協議会」の再開を求めることを決議した。読んで字のごとく、プロ野球の構造について球団側と選手会で議論し、球界をより良くしていこうという場だ。

 設立のきっかけは、2004年の球界再編騒動で選手会が史上初のストライキを実施したことだった。選手会の要求によって2005年1月に第1回が開催され、年に3、4回のペースで開かれた。2004年には明治大学の一場靖弘投手に4球団が金銭を渡していたことが発覚し、構造改革協議会ではドラフトの改革案についても話し合われている。選手会は2005年、FA制度改革やユースチームの設立などについて具体的に提言した「日本プロ野球構造改革案」を発表しており、構造改革協議会では移籍の活性化や年俸問題も議論された(日本プロ野球構造改革案は選手会のHPに掲載)。

 選手会と球団側で話し合った成果は大小さまざまあり、交流戦の実現や、戦力外通告のルール化(10月1日からクライマックスシリーズ開幕前日までに第1次通告を行い、CS全日程終了翌日から日本シリーズ終了翌日までに第2次通告を行わなければならない。日本シリーズ出場チームはシリーズ終了5日後まで)、FA権の取得に関わる故障者選手特例措置制度の導入などが決められた。

 しかし、構造改革協議会は数年間開催されたのち、いつのまにか立ち消えになった。10年以上のブランクを経た今、選手会が再開したいと考えている裏にはコロナ禍の苦境がある。
  観客入場制限により各球団の売り上げは大幅減少、加えて昨年の緊急事態制限下でチームによって練習環境が大きく違うなど、さまざまな問題が発覚した。コロナの影響はまだしばらく続くと予想され、選手たちも中長期的にプロ野球のあり方を一緒に考えていきたいと要望している。

 過去のプロ野球は球団側の主導で形づくられる部分がほとんどだったが、グラウンドの主役である選手たちがもっと声を発することで、球界全体がより良い方向に進んでいくはずだ。その意味で、構造改革協議会の再開には大きな意義がある。
  また、選手会は昨年12月、「Player’s Plus」というオウンドメディアを立ち上げている。各球団の選手たちは野球振興活動やチャリティー活動を行なっており、その内容について世間にもっと発信していこうという狙いだ。森事務局長が説明する。

「選手個々で社会貢献活動をいろいろしているのですが、世の中でなかなかオープンになっていないところもあります。また、そうした活動をやりたいと思っても、具体的にどういうものがあるのかわからないという選手もいます。すでに行われている活動をオープンにしていくことで、新しい選手もやりやすくなるだろうと。そこで表に発信していこうというのが狙いです」

 今後プロ野球がさらに発展していくには、選手たちの価値をより高めていくことが不可欠だ。そうした意味で、本稿で紹介したような選手会の新たな動きは、プロ野球が明るい未来に進んでいる兆しのように感じられる。

取材・文●中島大輔

【著者プロフィール】 
なかじま・だいすけ/1979年生まれ。2005年から4年間、サッカーの中村俊輔を英国で密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』。『中南米野球はなぜ強いか』で2017年度ミズノスポーツライター賞の優秀賞。近著に『プロ野球FA宣言の闇』など。