毎年新たなスターが出現するプロ野球の世界。しかし、今を時めく選手たちは、必ずしもアマチュア時代から高い評価を受けていたわけではない。そんな“現在”のスター選手のかつての姿を、年間300試合現地で取材するスポーツライター・西尾典文氏に振り返ってもらった。今回は昨年首位打者を獲得して大ブレイクを果たした佐野恵太(DeNA)について取り上げる。

 昨年まで11年連続でドラフト指名選手を輩出している明治大だが、その中でも最も良い意味で期待を裏切られたのが佐野である。広陵高校時代は残念ながらプレーを見る機会がなく、それほど注目されていた選手でもなかったため、存在を認識したのはレギュラーを獲得した3年秋からだ。スタメン出場した試合を始めてみたのは2015年10月19日に行われた慶応大との試合。5番、ファーストで出場、第1打席で打つ形の良さと力強さがあったため、詳細を書くためにノートにスペースを用意したが、結局4打数ノーヒット、2三振に終わり、強い印象は残っていない。

 ようやく良さが見えたのが最終学年となった4年春の東大との3回戦だ。この試合は東大の勝ち点がかかっており、当時3年生だった宮台康平(ヤクルト)のピッチングが注目を集めていたが、佐野は初回の第1打席でその宮台から先制タイムリーを放つなど3安打、2打点の活躍を見せている。この試合を機に佐野をドラフト候補として見るようになった。
  ただこの時もパンチ力は目立ったものの、タイミングの取り方に余裕がなく、スイングに柔らかさがないように感じていた。また当時のノートに「打つ以外は平凡」ともある。学年は佐野よりも一つ上だが、東京六大学の一塁手であれば同じ広陵の先輩である丸子達也(早稲田大→JR東日本)の4年春の方が強烈なインパクトを残していたことは間違いない。この後の大学選手権、秋のリーグ戦でも鋭い打球は放っていたものの、社会人に進むだろうと思ってプレーを見ていた。9位という指名順位を見ても、プロからの評価が高くなかったことは想像に難くない。まさか首位打者をとるような選手になると思っていた関係者はおそらくいないのではないだろうか。

 改めて思いなおしてみると、一塁手で守備も足も特徴がない時点で、見ているこちらもその存在を軽視してしまっていた点はあっただろう。野手が生き残るには打撃を突き詰めるという道もあるということを改めて感じさせられた選手である。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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