「うーれしいですよ!」と力のこもった一言に、この勝利の持つ意味が、真っすぐに映されていた。

 全豪オープンテニスの2週目に、同会場で開催されているWTAツアー大会「フィリップ・アイランド・トロフィー(以下PIT)」(2月13日〜19日/WTA250)。その初戦で土居美咲は、元世界4位のキャロリン・ガルシアに7−5、6−3で快勝。勝利という結果もさることながら、その内容に大きな価値を見出していた。

 厳しい入国規制を敷いているオーストラリア開催の全豪オープンは、選手たちに多くの制約を強いることとなった。入国時期は1月中旬に定められ、大会側が手配したチャーター便しか移動手段もなし。入国後の2週間の隔離期間中、選手は特例的に1日5時間の屋外練習等が認められたが、完全隔離となった選手も少なくなかった。

 それだけの覚悟で渡航した選手たちに、オーストラリアテニス協会は、リスクに見合う対価と体制を用意する。ATPカップも含め、結果的に6大会に至った前哨戦への参戦確約もその一つ。さらにWTA(女子)に至っては、全豪オープン1週目で敗退した選手たち用の大会まで新設したのだ。

 早期敗退者といえど、今年の全豪は波乱含みだっただけに、PIT参戦選手の顔ぶれは錚々たるもの。昨年の全豪優勝者のソフィア・ケニンに、2019年全米オープン女王のビアンカ・アンドレスクもいる。

 そのような実戦の場を用意してもらえたことを、土居は「めちゃめちゃありがたいです。普段なら帰国なり次の大会に行くところを、またチャンスがあるのはすごくうれしいです」と喜んだ。
  そのチャンスを生かしたいという渇望が、この日の土居の、最大の勝因でもあっただろう。手首を痛めていたため練習不足で入った全豪オープンは、試合勘や球感のないまま初戦で敗退。ただその後もメルボルンに残れたため、治療と練習を重ねることができた。

 もちろん、ケガが劇的に回復するわけではなく、ショットそのものの感覚はまだ戻りきっていない。それでもガルシア戦では、試合の流れと相手の心理を読み、勝負を掛けたゲームを取り切って、最後もダメ押しのブレークで突き放した。

「自分の調子が良くない時に、いかに勝ちにつなげるかが大きい。今日の試合運びなどは、今後につながる良い勝ちだと思います」。昨夏のツアー再開以降、苦しい戦いが続いていた土居は、表情に明るい色を灯した。

 会場のあるビクトリア州は、新型コロナ感染者数が20名に迫ったため、12日から5日間のロックダウンに入っている。そのため無観客の中での開幕となったが、それでも、素早い通達と明瞭な説明、そして迅速な措置をしてくれる大会主催者の対応に、土居は「安心感と感謝しかない」と言った。

 その想いを原動力とし、つかんだ勝利を、さらなるチャンスへとつなげていく。
 
現地取材・文●内田暁

【PHOTO】土居や日比野ら、全豪オープンに挑む日本人選手を特集!
 

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— Misaki Doi 土居美咲 (@MisakiDoiTennis) February 13, 2021