パドレスのダルビッシュ有が先日、自身のYouTubeチャンネルで中日・大野雄大のツーシームを試し投げした動画を公開した。昨季はMLBのサイ・ヤング賞にもノミネートされた右腕は「今年は大野投手のツーシームで1個は三振を取りたいなぁ」と呟き話題になったが、果たしてこのツーシームはどのようなボールなのか。改めて大野雄のツーシームの凄さについて振り返る。

 大野雄は昨季、ストレート(51.4%)、フォーク(20.8%)に次ぐ第三の球種として、14.5%の割合でツーシームを活用した。特に右打者相手に投じることが多く、外角のゾーンギリギリへ制球されたツーシームは多くのゴロアウトを量産。またシュート・ツーシームを150球以上投げた投手の中ではリーグ2位となる空振り率19.1%を記録するなど、三振を奪う選択肢の一つとしても機能した。一般的にアウトになる確率の高いとされるゴロ打球を多く生み出し、かつ守備に依存せずにアウトになる三振増にも寄与した大野雄のツーシームは、安定感抜群の投球を作り上げた原動力と言える。
  そんなリスク管理に長けた大野雄のツーシームは、右打者から逃げていくように落ちるのが特徴だ。平均球速は134.1キロとストレートと10キロ以上差があるものの、膨らみが少なく打者の手元で鋭く変化するため、見極めが難しい。同じくストレートと近い軌道からストンと落ちるフォークも合わせて、3つの球種が似たような軌道から異なる球速・変化をすることで、打者を幻惑する最適な組み合わせとなっていた。

 さらに映像を見る限り、大野雄はツーシーム、フォークの両方の球速や変化量を自在に操っていたようにも見えた。ストライクゾーン内で小さく落とす、ボールゾーンへ大きく落とす、打者の意表を突くように抜いて投げる…などなど、打者の狙いを察知したり状況に応じて、クレバーに二つの変化球を駆使していた。メディアによってツーシームやフォークの投球割合にばらつきが出るのは、変化量まで繊細に操る大野雄ならではの事象だろう。
  ストレートに近い軌道から変化するツーシームとフォークのコンビネーションは、大野雄の最大の武器であるストレートの威力をさらに引き出す効果ももたらした。大野雄のストレートは左の先発投手としてはNPB屈指の平均球速146.1キロを誇るが、空振り率10.7%、被打率.190といずれもリーグトップレベルの数値を記録できたのは、配球の妙もその要因だったはずだ。

 たとえどんなに素晴らしいストレートを持っていたとしても、まっすぐ一本だけで抑えられるほど今のNPBは甘くない。現に大野雄も2018年や2019年の序盤は、ストレートを6割前後も投げ込むなど投球割合にバランスを欠いていたことで、痛打を浴びることも多かった。

 一方で、昨年はストレートを投球の軸に据えながらも、ツーシームやフォークを効果的に活用することで打者を幻惑。落ちる変化球で三振を狙うだけでなく、ツーシーム、フォークをゾーン内で小さく落としカウントを稼ぎ、最後は自慢のストレートと木下拓哉の巧みなフレーミングとの合わせ技で見逃し三振を奪う、そんな配球も印象的だった。
  かつて大野雄は、谷繁元信から「ツーシームでゴロを打たせる投球を覚え、楽をしている」と指摘されたことがあった。ストレートをもっと磨くべきというのがその真意だが、現在の大野雄はストレートの球威を高めるだけでなく、ツーシームとのコンビネーションをさらに進化させることで、沢村賞投手にまで上り詰めた。

 もはや大野雄の代名詞となったツーシームは、ダルビッシュだけでなく多くの野球選手の手本となることだろう。

文●ロバートさん

【著者プロフィール】
1988年生まれ。Twitterにて中日ドラゴンズの戦力分析・考察を行う中日ファン。中日新聞プラスにて「データで考える中日ドラゴンズ」を連載中。Twitterは@robertsan_CD

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