2017年、大阪杯(阪神・芝2000m)がGⅠに昇格してから、金鯱賞(GⅡ、中京・芝2000m)とともに、そのステップレースとしての位置づけがはっきりとした中山記念(GⅡ、中山・芝1800m)。今年もビッグタイトルの奪取を目指して、各陣営は自信の精鋭を過去94回の歴史を持つ伝統レースに送り込んできた。では、その中から注目馬をピックアップしていこう。

 4歳馬、5歳馬の活躍が目立つ近年の中山記念だが、今年は特に5歳馬のメンツが充実している。

 3連勝で中山金杯(GⅢ、中山・芝2000m)を制し、昇竜の勢いを見せているのがヒシイグアス(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)。セリで1億円近い高値で落札されたことからも分かるように、早くから大きな期待をかけられていたが、3歳時はクラシック戦線には乗れず、4歳の昨年は2連続2着のあと、ようやく3勝目を挙げた。そして7か月の休養を経て復帰すると、11月のウェルカムステークス(3勝クラス)を快勝し、明けて1月5日の中山金杯を激しい競り合いの末、クビ差で勝利。ようやく重賞ウィナーの仲間入りを果たした。

 ここまで10戦のキャリアで走ったのは1800m、2000m戦のみで、中山では6戦3勝(2着1回)という戦績を残しているように、ここはベストな舞台。先週のフェブラリーステークス(GⅠ)をカフェファラオ(牡4歳)で制して名門の底力を見せた堀厩舎、先週までのリーディングの2位に付けている松山弘平騎手のコンビにも、さらに期待を膨らませるだけの魅力がある。
  京都2歳ステークス(GⅢ、京都・芝2000m)を勝ち、クラシックでも皐月賞で5着、日本ダービーで6着に入ったクラージュゲリエ(牡5歳/栗東・池江泰寿厩舎)。その後は爪の不安で休養し、昨秋は復帰2戦目のアンドロメダステークス(L、京都・芝2000m)で2着。今年1月の日経新春杯(GⅡ、芝2200m)では中団からじわじわと脚を伸ばして3着に健闘し、復活への足掛かりを掴んだ。

 本馬は週明けの時点では除外対象だったが、賞金上位馬の回避によって出走可能になった幸運があり、鞍上にフェブラリーステークスで今年最初のGⅠをゲットしたリーディングトップ、クリストフ・ルメール騎手を迎えたのも心強い。 出走馬中、ただ1頭の4歳馬バビット(牡4歳/栗東・浜田多実雄厩舎)。昨年4月から4連勝を記録し、ラジオNIKKEI賞(GⅢ、福島・芝1800m)とセントライト記念(GⅡ、中山・芝2200m)を制した実力馬だ。その後、菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)と有馬記念(GⅠ、中山・芝2500m)では大敗を喫したが、これは距離が長すぎたためだろう。今回は得意の中距離に戻っての、大事な仕切り直しの一戦となる。積極的な逃げ・先行で活路を見出せるか。

 その他では、昨年の新潟記念(GⅢ、新潟・芝2000m)勝ち馬のトーセンスーリヤ(牡6歳/美浦・小野次郎厩舎)、単勝11番人気ながら中山金杯で3着に突っ込んでファンを驚かせたウインイクシード(牡7歳/美浦・鈴木伸尋厩舎)あたりまでが馬券圏内の候補となるか。
  そして、どうしても触れておきたいのが、ゴーフォザサミット(牡6歳/美浦・藤沢和雄厩舎)の手綱をとる蛯名正義騎手のことだ。

 3月から調教師に転じるため、この日、このレースが現役最終騎乗となる。通算勝利は歴代4位の2539勝で、菊花賞→有馬記念→天皇賞(春)と長距離戦線で一時代を作ったマンハッタンカフェとの活躍、アパパネでの牝馬三冠制覇など、JRAのGⅠを26勝。また、ジャパンCを制した翌年に敢行したエルコンドルパサーとのフランス遠征ではG1を2勝し、凱旋門賞(G1)でもモンジューと伝説的な死闘を繰り広げての2着と(のちにナカヤマフェスタとのコンビでの2着に入っている)、海外でも確かな足跡を残したレジェンドジョッキーである。残念ながらコロナ禍の影響で現在、JRAは無観客開催となっているが、画面を通しても伝わるであろう気迫に満ちた騎乗を目にしてほしい。

 最終レース終了後に行われる蛯名正義騎手の引退セレモニーは、グリーンチャンネル(BS、無料)と『JRA公式YouTubeチャンネル』でライブ放送、配信される。

文●三好達彦