今から約17年前、当時のフロレンティーノ・ペレス会長が押し進め、ラウール・ゴンサレス、ルイス・フィーゴやジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイビッド・ベッカムら各国のスターたちを一堂にかき集めたレアル・マドリーは、“ロス・ガラクティコス(銀河系軍団)”と謳われた。

 世界的な知名度を誇る名手たちが入り乱れるチームにあって、異彩を放っていたのが、デンマーク代表MFのトーマス・グラベセンだ。2005年1月にエバートンから加入したボランチは、スキンヘッドと筋肉質で武骨な見た目とは裏腹に、気の利いた守備で小さくない貢献を果たした。

 とはいえ、彼のマドリーでのキャリアは長く続かなかった。入団からおよそ1年半後の2006年8月にはセルティックへ放出されている。戦力としてそれなりの存在感を示していたグラベセンは、なぜ銀河系軍団の中で居場所を失ったのか。原因は“狂犬”と周囲から恐れられた、その気性の激しさにあった。

 現役時代のグラベセンの凄みは、かつてのチームメイトたちも認めるところだ。英スポーツ専門ラジオ局『talkSPORT』は、元マドリーのブラジル代表MFジュリオ・バプチスタのコメントを紹介している。

「ある日の練習でロビーニョとグラベセンが衝突したんだ。そこでは他の仲間が間に入って収拾したんだけど、グラベセンはずーっとキレていた。しばらくして、ロビーニョが更衣室に戻っていった後に、彼は僕に向かってこう言ったんだ。『おい。俺は今からロビーニョを殺す』ってね。そのあと、本当にボコボコにしようとしていたからビックリした」
  そのヒートアップしやすい性格がゆえにマドリーを追われたグラベセンは、2009年に古巣エバートンで現役を引退。44歳となった現在は指導者転向を目指しているという。

 サッカー界への帰還を目論む男は、英衛星放送『Sky Sports』の取材を受けた。現役時代の自分自身に対して、興味深いコメントを残している。

「俺がまだキレやすいかって? 昔からそういうつもりはなかったんだ。たしかに少しはキレやすかったけど……、あくまでサッカーに対する情熱からくるものなのさ。あのパッションは俺にとっては欠かせないものだし、なによりも重要なんだ」

構成●THE DIGEST編集部