「スイートスポット」という言葉をよく聞きますが、テニスラケットについては「スイートエリア」と呼ぶのがふさわしいでしょう。辞書を調べると「スポット=位置・小さな広がりを持った丸」であり、「エリア=広がり・領域」ということで、大きさの観点が違います。

 スポットにも面積はあります。はっきりとした定義はありませんが、1円玉や10円玉のようなものと考えてください。

 ラケットのスイートエリアとは、スイートスポットを中心とした「快適と感じる許容範囲」のことです。ですから、一番快適(衝撃や振動が最も小さい)なポイントはそのセンターにありますが、違和感を感じにくいエリアを「スイートエリア」と呼んでいるのです。

 では、スイートエリアを測る基準は統一されているのでしょうか? 実は、各メーカーがそれぞれに計測した反発係数の数値を元に、独自に表示しています。「従来よりもスイートエリアが○%拡大した」といった表現がありますが、あくまで自社内での比較基準。他社ラケットと比べてはいけないことを覚えておきましょう。

 近年のラケットメーカーは、「スイートエリアの位置を××方向へ移動した」という謳い文句を使います。では、スイートエリアの位置はラケットの何で決まるのか?

 まずフレームにおいては、素材や形状によって振動の仕方が違います。また、厚さによっても反発係数が違ってきます。設計者は、フレームのどこを厚くして、どこを薄くするかによって、フレームのしなり方や振動の伝わり方をコントロールするのです。
  次にストリング面です。面の各部分を小槌などで軽く叩いて、グリップに伝わる振動の感触を確かめると、ほとんどの場合が「面の中心が最小振動」であることがわかります。

 また一方では、ストリングの長い部分が反発係数が高いという理論があります。これを応用してフレームの正面形状が決められるわけで、楕円形に近いフェイスや、逆卵形のフェイスがあるのです。

 さらに「ストリングパターンの細かさによるスイートエリアの制御」もあります。パターンのマス目が細かいほど飛びは抑えられ、粗いほど飛びます。そのため、センター部分だけ密にし、周囲のパターンを粗くすることで反発性能を上げ、「スイートエリアが広い」と感じさせる設計思想もあります。

 こうして多くの要素が折り重なった結果として、スイートエリアが生まれます。単純に反発係数や振動という数値だけの問題ではなく、打球した時、ボールへ一番パワーを伝えられる部分がスイートエリアなのです。傾向としては、ビギナーや一般愛好家はスイートエリアが面の中心にあるのを好み、トップスピナーや競技者は、面の先端方向にあるのを好みがちですね。

文●松尾高司(KAI project)
※『スマッシュ』2019年3月号より抜粋・再編集

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