牝馬クラシック第二弾のオークス(GⅠ、東京・芝2400m)が5月23日に行なわれる。

 デビューから5戦全勝で桜花賞(GⅠ)を制し、もはやアイドルホースの域にまで達するほどの人気を博する白毛のソダシ(牝3歳/栗東・須貝尚介厩舎)のダントツ人気が予想されるなか、桜花賞4着からの巻き返しを期す良血アカイトリノムスメ(牝3歳/美浦・国枝栄厩舎)がそれを追う構図となっている。

 オークス・プレビューの前編は、まずこの2頭の分析をしてみたい。

【ソダシ⇒勝負強さは比類ないが、距離適性面ではイヤなデータも】
 オークスは単勝1番人気の馬が強いレースで、現在5連勝中。断然の人気が予想されるソダシにとっては心強いデータだ。

 彼女のここまでの5戦を振り返ると、その抜きんでた勝負強さが際立つ。

 2着以下に大きな差を付けたのはデビューの新馬戦(函館・芝1800m)の2馬身半(0秒4)差と、アルテミスステークス(GⅢ、東京・芝1600m)の1馬身3/4(0秒3)差の二つだけで、他の3勝はいずれも同タイム(クビ差、ハナ差、クビ差)での勝利。まだ記憶に新しい桜花賞でもそうだったが、相手に競られるともう一度脚を使って抜かせない。見かけの愛らしさに似合わぬ勝負根性が彼女の最大のストロングポイントだ。

 あと見逃されがちなのが、スピード能力の高さだろう。

 札幌2歳ステークス(GⅢ、札幌・芝1800m)で記録した1分48秒2は従来の記録を0秒3更新するレースレコード。また桜花賞では、速い時計が続出した当時の阪神ではあったにしろ、1分31秒1はレースレコードを1秒6、コースレコードを0秒8更新する驚異的な走破タイムを叩き出した。父クロフネ、また母系とも活躍した産駒の多くがダート戦であったため、芝でのスピード能力に疑問符を付ける向きも少なくなかったが、須貝調教師が桜花賞の前に「兄姉とは別ものの強さと速さ」と強調したように、そうした懸念を鮮やかに一掃してしまった。
  血統的な前例を覆したという面を紹介した直後に気が引けるが、オークスを迎えるにあたって、また引き合いに出さなければならないポイントは血統的な距離適性の問題である。

 父クロフネの産駒は前週までにJRAの平地重賞で40勝を記録しているが、そのすべてが1800m以下でのもの。2000m以上の平地重賞では0勝(2着7回、3着8回、4着以下11回)と、距離適性に関する疑問符をデータがはっきりと指し示しているのだ。

 ストライドの大きな走法や、息の長い末脚も武器の一つであるソダシには距離延長も問題ないとは思いつつも、こうしたデータはやはり気になるところ。また、たとえ距離不適ではあっても、3歳春の牝馬は能力の絶対値の違いで押し切ることも少なくないのも確かだ。このテーマを「記録は破られるためにある」と考えるか、「血統の壁は超えられない」と受け取るかは、まさにプレイヤーの考え次第、そう言えるだろう。

 ちなみに筆者は、連勝系馬券でソダシを1着固定にはしない予定である。
 【アカイトリノムスメ⇒三冠馬×三冠馬、最強の良血馬で逆転も】
 ソダシが金子真人オーナー(馬主の正式名称は「金子真人ホールディングス」)こだわりの白毛血統から生まれた名馬なら、アカイトリノムスメは、同じ金子オーナーゆかりの”最強血統”というべきか。

 父が無敗の三冠馬にしてGⅠレース8勝のディープインパクト、母が牝馬三冠を含むGⅠレース4勝のアパパネ。金子オーナーが所有した父母から生み出されたアカイトリノムスメがオークスを睨んでの一か月余の間に素晴らしい充実を見せていると評判だ。

 桜花賞のあとは自厩舎に置かれてきっちりと調整を重ね、新コンビを組むクリストフ・ルメール騎手は1週前、当週と2度の追い切りで手綱をとっている。最終追い切りのあと、3週連続でのGⅠ制覇を狙うルメール騎手は、「乗りやすくて、スタミナも大丈夫」と太鼓判を押す。
  桜花賞では好位置の6番手で直線へ向いてスパートしたが、ソダシには0秒2差及ばず4着に敗れた。それでも自身最速タイの上がり3ハロン33秒9を記録してのもので、GⅠ初挑戦としては悪くない結果だったと言えるのではないか。

 母のアパパネも管理した国枝栄調教師は追い切り後の共同インタビューで、「桜花賞は競馬としては特に問題なく運べたとは思いますが、終いもうひと伸びできそうでできずに4着。よく走っているとは思いますが、距離が延びればという感じでした。母親もちゃんと走っていますが、父親がディープインパクトになって、こちらのほうが長い距離には向きそうな気がします」と語り、2400mへの距離延長に希望を託す。

 アカイトリノムスメは全3勝を東京コースで挙げており、ホームグラウンドとも言える馬場で本番を迎えられるのは好材料。また、ソダシをマークしながらレースを進められるであろう強みもあり、筆者には本馬のほうにより強い魅力を感じている。

 昨年のデアリングタクトに続き、無敗の二冠馬が誕生するのか。史上3組目の親仔制覇が成るのか。今年のオークスがこの2頭を中心に回ることは間違いない。

 後編では主役2頭の撃破を狙う伏兵を分析する。

文●三好達彦