学生三大駅伝のひとつ『全日本大学駅伝』の関東地区選考会(予選会)が、6月19日に開催され、東京国際大、國學院大をはじめとする7校が本戦出場の切符を掴んだ。その中で注目すべきは、5位通過で9年ぶりに伊勢路に戻ってきた古豪・中央大だろう。

 近年、低迷が続いていた中央大。2013年の箱根駅伝で途中棄権に終わると、チームの歯車が狂い始め、全日本大学駅伝の出場からも遠ざかっていた。そんな苦しむ中央大の再建に白羽の矢が立ったのが藤原正和監督だった。

 今季6年目を迎える40歳の若手指揮官は、復活に至った理由を2つ挙げている。1つ目は、これまでの選手たちの地道な努力が実を結んだこと。そして2つ目は、今季の全日本大学駅伝に向けチームの総力を底上げできたことだ。
  2016年に就任した藤原監督は、部内にあった決まり事を厳格化し、寮内や練習環境を整えるところから始めた。そこには幾多の困難が待ち受けていたが、その中でも「就任時の4年生(町澤世代)には一番苦労かけ、一番つらい思いをさせた」と想いを巡らせた。

「3年間、先輩に良いと教えられてきたことと全然違うことを、海のものとも山のものとも分からぬ新人監督にいろいろ言われて、結構キツかったはず。ルールを受け入れるのに葛藤はあったんじゃないかな。でも彼らが苦しい思いをして受け入れてくれたことが一番大きかった。おかげで、出来て当たり前という生活レベルを毎年上げてこられている」

 当時の選手が監督を信じ、新ルールを受け入れたことが、現在につながった。こうしたベースがあったうえで、やはり今回の復活で外せないのは、監督の思い切った戦略だ。
  中央大は、今年1月の箱根駅伝で往路19位、復路3位、総合12位と凸凹な内容で苦戦を強いられた。藤原監督は「駅伝経験が圧倒的に足りなかった」と受け止め、“経験値”を上げるため全日本大学駅伝の出場を確実に決めようと「全てをかけて戦おうと流れをつくった」のだという。

 例年、上半期は5月に関東インカレ、6月に全日本大学駅伝地区選考会と2つの大会に主力選手が出場する。しかし両大会に全力を注ぐのが厳しいと判断した藤原監督は、大きく舵を切った。

「関東インカレは中距離種目でしっかり得点を取り(入賞させ)、長距離種目は育成の場にした。そしてインカレに出ないメンバーは、全日本に向け集中させた」

 この大胆な采配が功を奏した。「若手選手を大舞台で場慣れさせたことで、自信をもって起用できた」と関東インカレで経験を積ませた2年の園木大斗や1年の阿部陽樹らを選考会に送り込めたのだ。そして選手たちが監督の起用に応え「想定通りの走り」をしたことが、本戦出場を決めたキーポイントとなった。
  さらに中央大には忘れてはいけないエースの吉居大和がいる。この2年生は五輪選考会を兼ねる日本選手権を優先したため、予選会の出場を回避している。それでも監督は、エースが日常からチームに与えてきた影響に、「超一級の選手が入ることで、これだけの化学変化が起こるんだな」と目を丸くする。

 昨春入学した吉居は、入部早々から存在感を示した。藤原監督は「1年生に負けたくないという思いで上級生らに火がついた。“吉居効果”がチームにとって大きかった」と振り返る。この効果でチーム全体のレベルが上がり、「ポイント練習で、こぼれる選手が本当に少なくなってきた。選手らの走力がこちらの求めるレベルに近づいてる」と手ごたえを掴んだという。

 そんな頼もしいエースを中心に今季は、全日本大学駅伝で8位以内、箱根駅伝で5位以内を目指す。「伝統が素晴らしいが故にいろんなプレッシャーがある。その伝統に押しつぶされないような新しいチームをつくっていきたい」と力を込めた。

 伝統「C」マークの復活劇は、今始まったばかりだ。

取材・文●山本祐吏(THE DIGEST編集部)