16年のNBAキャリアを誇る生粋の司令塔クリス・ポールは、これまで2度チャンピオンシップ獲得のチャンスがあった。

 ひとつはフェニックス・サンズへ加入した昨季。プレーオフへと駒を進めてNBAファイナルまで勝ち上がり、ミルウォーキー・バックスの前に2勝4敗で敗れたのだが、シリーズ2連勝と最高のスタートを切っていただけに、悔いが残る頂上決戦となったに違いない。

 そしてもうひとつは、ヒューストン・ロケッツでプレーした2017−18シーズンだ。ジェームズ・ハーデン(現ブルックリン・ネッツ)とポールというリーグ最高級のガードデュオを形成したロケッツは、レギュラーシーズンで65勝17敗(勝率79.3%)の好成績をマーク。リーグ最高勝率を記録し、意気揚々とプレーオフへ乗り込んだ。

 ファーストラウンドでミネソタ・ティンバーウルブズを、カンファレンス・セミファイナルでユタ・ジャズを、どちらも4勝1敗で撃破。ディフェンディング・チャンピオンのゴールデンステイト・ウォリアーズと、運命のカンファレンス・ファイナルを迎えた。
  当時ロケッツにはハーデンとポールのほか、エリック・ゴードン、クリント・カペラ(現アトランタ・ホークス)、PJ・タッカー(現マイアミ・ヒート)、トレバー・アリーザ(現ロサンゼルス・レイカーズ)と役者が集結。リムプロテクターのカペラを外した5選手によるスモールラインナップを送り出し、ウォリアーズを大いに苦しめた。

 ロケッツは2勝2敗で迎えたシリーズ第5戦を制し先に王手をかけるも、その試合終盤にポールがハムストリングを痛めたことで無念の戦線離脱。第6、7戦、ロケッツは前半こそリードして終えるも、後半に入ってステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ケビン・デュラント(現ネッツ)の爆発を許していずれも逆転負けを喫し、3勝4敗で姿を消すことになった。

 その年、イースタン・カンファレンスを勝ち上がったクリーブランド・キャバリアーズにはレブロン・ジェームズ(現レイカーズ)こそいたものの、ファイナルではウォリアーズがスウィープで勝利。もしロケッツが勝ち上がっていれば、優勝していた可能性は十分にあった。
  8月31日(日本時間9月1日)にYouTubeへ公開された『No Chill with Gilbert Arenas』で、ポールはロケッツ時代をこう振り返る。

「ヒューストン時代のことは覚えているよ。彼ら(ロケッツ)が理解すべきだったのは唯ひとつ。それはジェームズが自身の才能と僕の才能を把握していれば、ということだった。コーチが厳しく話すべきだったと思うね。『ジェームズ、いいか。第4クォーターまでは君のものだ。でも最後の5分間、ボールはクリスに預けるんだ』と言ってほしかったね」

 ハーデンとポールはいずれもボールハンドラーであり、プレーメークだけでなく自らフィニッシュまで持ち込める選手だ。翌2019年のプレーオフのカンファレンス・セミファイナルで、ウォリアーズに2勝4敗で敗退後、ポールとハーデンは口論になったと報じられ、結局ポールはオクラホマシティ・サンダーへトレードされてしまった。

 スポーツの世界で“タラ・レバ”は本来禁物なのだが、もしあの2人が上手くボールをシェアできていたら、今でもロケッツでチームメイトとして共存し、チャンピオンリングを手にしていたかもしれない。

 もっとも、ポールは「あの時、そういった会話がされているべきだった」と悔やみつつも、こう話していた。
 「最初の年、僕を最もイラつかせたのは健康体じゃなかったこと。ヒューストンにいた期間は、なんだか(意識が)ぼんやりしているように感じる。あの時はいろんなことが起きていたからね。でも僕らはいいチームだった。本当にいいチームだったんだ。

 そしてジェームズについては今でもこう思う。彼のように点を取れるヤツはほかに誰もいないということ。クレイジーなことさ……僕がトレードされなければ、あんな経験をしなければと思うし、ああいう会話ができていれば……とも思う。でも僕が健康体を維持できなかったことが最も悔やまれるね」

 2018年にウエストで覇権争いをしていた主要メンバーで、今もロケッツに残っているのはゴードンのみ。優勝へと近づいたチームだったが、最終的にウォリアーズの前に敗北を喫し、解体を余儀なくされた。

 昨季途中にトレードでバックスへ加わったタッカーは、念願のチャンピオンとなり、サンズのポールは自身初のファイナルへと足を踏み入れた。ハーデンはデュラント、カイリー・アービングと新たにビッグ3を形成し、今季は開幕からフルシーズンをネッツでプレーする。

 もし来年6月のNBAファイナルで、ポールが所属するサンズとハーデンがプレーするネッツが激突となれば、ドラマティックなシリーズとなるに違いない。そしてその可能性は決してゼロではないだけに、両者の新たな道のりに注目していきたい。

文●秋山裕之(フリーライター)

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