格闘技界の至宝の“キックボクシング・カウントダウン”が始まった。来年、ボクシングに転向することを公表している那須川天心は、キックボクシング残り3試合。その1試合目として、今回は9月23日のRISE横浜大会(ぴあアリーナMM)に出場した。

【RISE PHOTO】パンチで勝負した那須川天心が鈴木真彦を判定で破りデビューからの連勝を45に伸ばす

 対戦相手はRISEバンタム級王者の鈴木真彦。6年前、那須川にKO負けを喫してから、ひたすらリベンジに執念を燃やしてきたハードパンチャーだ。昨年の対戦権をかけたトーナメントの決勝では志朗に敗れたが、それまで20連勝を記録してもいる。コロナ禍で外国人選手が来日できない状況でもあり、RISEの中では最善の相手だった。

 鈴木には今年、RIZIN東京ドーム大会で那須川戦のオファーがあったが、その時は「プライベートな事情」があり、試合を断っている。それでも今回、こうしてリマッチが実現したのだから強運というしかない。あるいはそれも鈴木の執念がもたらしたものなのか。
  だが、意地や執念といったものさえ無効化してしまうほど、那須川は強く、巧かった。「強かったし巧かった」というのは、鈴木の試合後のコメントでもある。鈴木としてはもっと思い切って攻めたかったのだが、それができない。那須川にさせてもらえなかったのだと鈴木は感じた。

 那須川は1ラウンドにハイキックをヒットし、後半はパンチ主体でコントロールして判定3−0。KOではなかったが、それでも差はあった。パンチが交錯する場面もあったし、鈴木の右ストレートは鋭かった。それでも、那須川はあと一歩を許さない。「そうさせてくれないのが天心選手の巧さ、強さだと思います」と鈴木。

 もちろん、那須川にも反省点はある。来年を見据え、今はボクシングの練習を増やしているという(キックの練習は減らしてはいない)。そこで闘いが「パンチに寄ってしまった」のだ。ボクシングの練習で身につけたことを試したいという思いもあった。

 次の試合では修正が必須。もっと蹴りを使っていきたいともコメントしている。ボクシングに行くのだからこれでいいというわけではないのだ。キックボクシングの試合では、あくまでキックボクサーとして闘う。そのあたりも那須川の非凡さだろう。
  ボクシングがレベルアップし、その上でキックボクサーとしての完成度、パンチと蹴りのバランスも高めてくるであろう次戦。その舞台は大晦日のRIZINになると那須川は語っている。キック最終戦は、年が明けてからのRISEだ。

 誰もが期待する武尊戦に関しては「動きがないのでマジで分からない」、「決まってないので何も言えない」という状況。その一方で、今大会のセミファイナルでは同じTEAM TEPPEN所属の風音が53キロトーナメントで優勝している。しかも決勝で勝ったのは、那須川もその実力を認める志朗だ。

 試合後の風音は「言っていいのか分からないけど」と那須川との対戦をアピールした。これに「ジムではボコボコにしてますけど、ストーリーとしては面白い」と那須川。決まればやるというスタンスだ。
  ただ同門だけに、周囲としては慎重になる部分もある。ジムの代表は那須川弘幸氏。天心の父である。「対戦の可能性は低いですけど、ゼロではない」とはRISE・伊藤隆代表の言葉だ。

 キックボクシングは残り2試合。カウントダウンが進むごとに、誰と闘うのか、どんな試合になるのかと注目度は上がっていく。それでも 那須川のスタンスが変わることはないだろう。それは“強くなること”勝つために闘うこと“だ。

 今回の鈴木戦も、ノックアウトを狙って強引に攻めるような場面はなかった。勝負の哲学を崩さないのも、那須川天心の強さなのだ。

文●橋本宗洋

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