私は元々、クリスチアーノ・ロナウドのマンチェスター・ユナイテッド復帰に賛成だった。あくまで開幕間もない現時点での話だが、この考えが間違いでなかったのは、すでに数字でも証明されている。
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 プレミアリーグで3戦3得点、チャンピオンズ・リーグ(CL)でも開幕節で、いきなりゴールを決めている。もちろん、ここからどうなるかが最重要事項なのは理解しているが、怪我などで長期離脱さえしなければ、彼がゴールを量産するのは確実だろう。

 ユナイテッドにとって素晴らしい補強となったのは言うまでない。

 移籍金は総額2000万ポンド(約30億円)、加えて決して安くはない巨額なサラリーも支払わなくてはならない。しかし、だ。C・ロナウドはただのトップクラスの選手ではない。フットボーラーとして高い意識を保ち続け、己とチームが成長するためなら飽くなき努力を惜しまない男だ。チームにゴールをもたらすだけではなく、周りの選手にも好影響をもたらすのは間違いなしである。

 振り返ってみれば、ファーギー(ファーガソン元監督の愛称)がいなくなってからのマンチェスター・Uは移籍市場で失敗を繰り返してきた。2013年の夏に獲得したマルアン・フェライニに始まり、すでに膝にガタがきていたセバスティアン・シュヴァインシュタイガー、殻を破れなかったモルガン・シュネデルランやメンフィス・デパイなどが、その代表例だろう。

 だが、C・ロナウドの獲得はここ数年の大物たちの加入とは一線を画す。長く苦しんできたレッドデビルズに一閃の光をもたらし、オレ・グンナー・スールシャール監督の掲げる盟主復権を果たすためにも、これ以上にない素材なのだ。
  もちろん、結果を出さなければ、スールシャール監督もクラブから三下り半を突き付けられる可能性がある。それでも総合的かつ客観的に考えても、C・ロナウド獲得はポジティブな材料にしか見えない。

 一部では、成長著しいメイソン・グリーンウッドをはじめとする若手の出場機会を少なくするという声も聞かれる。だが、そもそもグリーンウッドはC・ロナウドとは異なるポジションでプレーしており、ここまでは互いに調和が取れているように見える。

 グリーンウッドにとって百害あって一利なし。万が一19歳のイングランド代表FWや、もうひとりのホープであるマーカス・ラシュフォードの出場機会が大幅に減少するようであれば、それはほかの選手がしっかりと結果を出しているからに他ならない。

 思い出してほしいのが、ズラタン・イブラヒモビッチがマンチェスター・Uにやってきた16-17シーズンだ。当時、今のC・ロナウドより1歳若い35歳でプレミアリーグ初挑戦を果たした大型CFは、大黒柱としてチームをけん引し、公式戦で27ゴールを決めた。その間にティーンエージャーだったラッシュフォードは着実に成長を遂げていった。
  それだけに、現在のマンチェスター・UでC・ロナウドは、容易にシーズン30得点を決めると読んでいる。

 4-2-3-1が基本システムとなっている今のマンチェスター・Uの攻撃陣はイブラヒモビッチの在籍時よりも完成度が高い。その顔触れは、C・ロナウドを筆頭に、ラシュフォード、グリーンウッド、ジェイドン・サンチョ、エディンソン・カバーニ、アントニー・マルシアル、ブルーノ・フェルナンデス……と文字通りの多士済々だ。

 このなかでレギュラー格となるのは3、4人。全員が万全の状態であれば、右からグリーンウッド、B・フェルナンデス、サンチョ。そしてセンターにC・ロナウドとカバーニが起用される。つまりラシュフォードとマルシアルがはじき出される格好だ。

 過去数シーズンのマンチェスター・Uにとって若きラシュフォードが絶対に欠かせない存在だった事実を考慮すれば、どれだけチームがグレードアップしたかが分かる。
  もちろん批判が全くないわけではない。守備に徹しないC・ロナウドに加えて、ポール・ポグバと言った中盤も守備を好まないタイプであり、攻守のバランスを危惧する声は小さくないのだ。私も正直いって妥当な意見だとは思う。

 ただ、マンチェスター・Cでのセルヒオ・アグエロ(現バルセロナ)も守備の責務は限定的だったが、彼はエースとしてゴールという結果を出し、チームはプレミアリーグと国内カップ戦を総ナメした。つまり、タイトルの獲得方法は様々にあるのである。

 ちなみにマンチェスター・Uが最後にプレミアリーグを制覇した2012–13シーズンは、中盤にマイケル・キャリックとトム・クレバリーを主に抜擢。そこにアンデルソンやライアン・ギグスでローテーションを回していたが、優勝の主因となったのは、アーセナルから引き抜いた主砲ロビン・ファン・ペルシの存在に他ならなかった。

 当時29歳だったオランダ代表FWも決して献身的にトラックバックをし、守備に奔走するタイプではなかった。それでも力不足に見えた中盤でもリーグタイトルを手繰り寄せられたのは、26ゴールで得点王にもなったファン・ペルシの絶対的な決定力があったからだ。
  中盤の貧弱さは確かに否めない。しかし、C・ロナウドにはそれを補っても余りあるほどの得点力、そして圧倒的なカリスマを含めたチームを引っ張れる魅力がある。サンチョやグリーンウッドのような若い攻撃陣にとって、彼のプロフェッショナリズムを間近で見られることほど有益なものはあるだろうか?

 ユベントスではレアル・マドリー時代よりもスピードが落ちたようにも思えたが、今のC・ロナウドは以前のシャープさが戻ったように見える。あれで数か月後(2月5日)には37歳になるのだから恐ろしい。若い選手たちも「自分を律して身体をしっかりとケアできれば、1日でも長くサッカーを続けられる」と考えるに違いない。

 さらに怪我の少なさもC・ロナウドの長所であり魅力だろう。例えば、同年代であるカバーニは、試合に出場さえすれば結果を残したものの、負傷が絶えずに安定性に欠いた。シーズン終盤になってゴールを量産したが、やはり1年を通して活躍しなければ意味がない。

 C・ロナウドという稀代のカリスマが、マンチェスター・Uとの今後2年間で、プレミアリーグ制覇、もしくは毎シーズンのように優勝争いをできるチームへと押し上げられれば、彼を獲得した意味は十分にあったといえる。
  今後がどういう結果になるかは分からない。しかし、今回のC・ロナウド獲得によって、マンチェスター・Uはエキサイティングなチームに戻ったのは間違いない。かつてイングランドのR・マドリー的な存在として君臨し、グラマラスで、見るものをワクワクさせた常勝軍団へ。彼らはその領域に近づいている。

 ここまでの内容をざっと読み返してみると、この原稿はマンチェスター・Uのサポーターが書いた内容にも映るかもしれない。しかしそういった勘違いのないように一つだけ断言しておきたい。

 私は決してマンチェスター・Uのファンではなく、あくまで今回のC・ロナウドの移籍の持つ意味合いの大きさを表現したかっただけである。つまりそれほど彼の復帰は、大きな影響力をもたらしているのだ。

取材・文●ジェイミー・ジャクソン/The Guardian マンチェスター・フットボール特派員
By Jamie Jackson / The Guardian Manchester football correspondent
翻訳●松澤浩三