昨季イースタン・カンファレンス1位の49勝23敗(勝率68.1%)をマークしたフィラデルフィア・セブンティシクサーズは、優勝候補の一角と目されていたものの、アトランタ・ホークスに3勝4敗で敗れたことで、カンファレンス・セミファイナルで姿を消した。

 ロースターにはMVP投票で2位に入ったビッグマンのジョエル・エンビード、スコアラーのトバイアス・ハリスがおり、セス・カリーとダニー・グリーンというシューター、ディフェンダーとして定評のあるマティス・サイブル、元リバウンド王のアンドレ・ドラモンドといった選手たちがいるが、彼らとは別のところでシクサーズが注目されている。

 ファンやメディアが気になっているのは主軸のベン・シモンズが離脱していることだ。オールスターの常連で、ここ2年連続でオールディフェンシブ1stチーム入りしている211㎝の超大型ポイントガード(PG)は、トレードを要求しており、トレーニングキャンプに不参加。チームメイトたちの説得にも応じずに最悪シーズン全休となる可能性も浮上している。

 シモンズのトレードが成立しなければ、シーズン全休の可能性が高く、シクサーズは戦力ダウンしたロースターで長いシーズンを戦い抜かなくてはならない。
  とはいえ、シモンズ不在を嘆いてばかりではいられない。トレーニングキャンプをこなすシクサーズのドック・リバース・ヘッドコーチ(HC)は現在、2年目のタイリース・マキシーを先発ユニットのPGとして起用している。

「今日は彼にとって最高の日になった。私は彼がここまで必ずしも素晴らしいキャンプを過ごしているとは思っていない。かといって、出来が悪いというわけでもない。彼なりのやり方で、アグレッシブでいられるように模索している。彼には引き続き、スコアラーとしてアグレッシブでいてほしいと思う。でも同時に、今はチームも動かしていかなくてはならないんだ」

 現地時間10月2日(日本時間3日、日付は以下同)に記者たちの前で指揮官はそう語っており、ボストン・セルティックス時代に指導したラジョン・ロンド(現ロサンゼルス・レイカーズ)のケースと比較していた。
  ロンドにとってキャリア2年目となった07−08シーズン。セルティックスはポール・ピアースの周囲にケビン・ガーネット、レイ・アレンというオールスター選手をトレードで獲得してビッグ3を形成。ロンドは2年目ながら豪華戦力と化したチームを引っ張っていくこととなった。

「我々はロンドや他のポイントガードたちへ『ポールが打たなければ、あとレイとケビンが打たなければショットを打つんだ』と言っていたものさ。『君が打つ時というのはより良いショットでなければならない。そこで(ショットを放つ)感覚を学ぶんだ』とね。アグレッシブさを保ちつつ、皆を巻き込んでいかなければいけないから、PGは本当に難しいポジションだよ」

 その点、ロンドは生粋の司令塔かつリーダーで、将来の殿堂入り選手が3人もいる中で若手ながら声を出してセルティックスの牽引役の1人を務め、08年のNBAチャンピオンに大きく貢献。

 当時のセルティックスと今季のシクサーズを単純比較すると、前者に分があることは明らかだが、マキシーは「彼が言っていることは分かる」とリバースHCの言葉に理解を示す。
 「ポール・ピアースやKG(ガーネット)たちとプレーし始めた時、ロンドは確か2年目だった。僕のケースと似ているよね。僕は若手で、ジョエル、トバイアスというスーパースターたちがチームにいる。しかもセスやダニー、それ以外にも経験を積んだ選手たちが何人もいる」

 シクサーズにはマキシーのほか、シェイク・ミルトンあるいはカリーがプレーメーカーを務める可能性があるものの、ロンドのケンタッキー大の後輩で、ドラフト指名順位(1巡目21位)も同じマキシーはこう語る。

「今はただ、理解しようとしているんだ。どうすれば正しい方法でボールを配球できるのか、どうやって正しいパスを送れるのか、正しくリードしつつ、どうやったらオフェンスの中で本来の自分でいられるかをね」

 昨季61試合(うち先発は8試合)の出場で平均15.3分、8.0点、1.7リバウンド、2,0アシストを記録したマキシーは、このキャンプでスターターの座を勝ち取るチャンスがあることは間違いない。

 ベテランから若手まで、経験豊富な選手たちが揃うなか、プレーオフチームの司令塔役を勝ち取ることができれば、大きな自信へとつながるのは確実。この男が成長すればシクサーズが十分戦えるチームへと進化を遂げることができるだけに、今後の展開に注目していきたい。

文●秋山裕之(フリーライター)