今夏の移籍市場最終日でボローニャからアーセナルに加入した冨安健洋。日本代表戦明けでわずかなチーム練習しか消化していない状態で先発出場したデビュー戦(対ノリッジ)で攻守に安定したパフォーマンスを発揮すると、以降は不動の右SBとして、ここまで4試合に出場している。

 開幕から3連敗を喫していたチームが、加入以降は4戦負けなし(3勝1分け)で失点わずか1と見違える結果を残していることもあり、22歳の日本代表DFの評価はうなぎ昇りとなり、チームに安定感をもたらした「救世主」とまで呼ばれるほどである。

 屈強なFW陣相手に空中戦やデュエルでは負け知らずで、チームのバランスを取る巧みなポジショニングに、まだ回数は多くないものの、機を見ての攻撃参加やチャンスメイクなど、多くの引き出しを持つ冨安の存在は、プレミアリーグ全体にとっても大きな発見として捉えられているようだ。

 とはいえ、彼には早くからプレミアリーグのクラブも関心を示しており、昨季はニューカッスルが獲得の動きを見せ、そして今夏は最初にトッテナムがボローニャとの交渉に乗り出し、一時は移籍秒読みともいわれた。しかし、提示額と希望額のわずかな差を詰めることができないまま撤退、そして土壇場でアーセナルが名乗りを上げ、現時点では「当たりくじ」を引いた格好となっている。
  因縁のトッテナムとは6節に対戦し、冨安はソン・フンミンやハリー・ケイン相手にも十分に渡り合って3-1の快勝に貢献。一方、トッテナムは冨安の代わりに獲得した右SBのエメルソン・ロイヤルが途中出場でインパクトを残せずに終わったことで、現地メディアはこのポジションの補強をめぐって両チームが明暗を分けたと報じたものである。

 専門メディア『football.london』は「ガナーズは未知数のDFと契約し、トッテナムはスペインの強豪バルセロナからDFを獲得した」と表現し、「当初は後者が勝ったと思われた」と綴っているが、トッテナムはヌーノ・エスピリト・サント監督就任以降から冨安の特性がチームに必要なものだと主張し、またテクニカルディレクターのファビオ・パラーティチは最近までセリエAのクラブで活動しており、冨安についても熟知しており、ゆえに獲得に熱心さを示していた。

 にもかかわらず、獲得目前にありながら手を引いたのは不可解極まりなく、結果的にサポーターからも非難を浴びることとなったが、スポーツ専門メディア『GIVEMESPORT』は、「スパーズ」が土壇場で22歳のブラジル人に乗り換えた理由を、「ヌーノ監督が攻撃力を重視したため」と明かしている。

 2019年にバルセロナに加入し、昨季までベティスにレンタルされていたこのブラジル代表選手は、ここまでのキャリアで6ゴール11アシストを記録しているが、一方の冨安は5ゴール4アシスト。この差が、攻撃を重視するポルトガル人監督に、守備のユーティリティープレーヤーより、攻撃的なサイドプレーヤーの方が重要な役割を果たせると判断させたのだという。

 果たせるかな、冨安がアーセナルで守備面の強さを活かし、4試合でわずか1失点の堅守に貢献することで攻撃にも好影響を与えているのに対し、エメルソンはプレミアリーグで出場した4試合で得点へも関与はなし。そして彼がピッチに立っている間(315分間)に、チームは7失点を喫している……。

構成●THE DIGEST編集部