「史上最高の一戦」「壮大な大戦」。

 去る10月9日、アメリカのラスベガスで開催されたタイソン・フューリー(イギリス)とデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)によるボクシングのWBC世界ヘビー級タイトルマッチは、先述のような賛辞が相次ぐほどのビッグマッチだった。ゆえに敗者の“ダメージ”は計り知れない。

 敗れたのは、挑戦者としてこの一戦に臨んだワイルダーだった。もっとも全く見せ場がなかったわけではない。4回には力強い右拳を炸裂させ、王者から2度のダウンを奪い、世界屈指とも言われるハードパンチャーの矜持を示した。

 しかし、フューリーのタフさの前に手数が減り、次第に守勢に。そして立っているだけで精一杯という状態となっていた11回にロープ際でたたみかけられ、渾身の右フックを顔面に被弾。力なくリングに倒れこんだ。

 試合後に病院に直行して右拳の骨折が発覚したワイルダーは、全治6か月のドクターストップを余儀なくされた。しかし、今回のショッキングな敗戦ではその怪我以上に、自身が築いてきた名声が危ぶまれている。そのパフォーマンスに様々な批判が寄せられたなかで、もっとも辛辣だったのは、WBC世界ヘビー級暫定王者のディリアン・ホワイトだ。
  以前からワイルダーの言動に苦言を呈していた33歳のイギリス人ファイターは、英衛星放送『Sky Sports』で、「今回の試合であいつはあまりに多くの罰を受けすぎた」とディフェンスの甘さを指摘した。

「彼のチームが解雇したマーク・ブリーランド(元ボクサーのトレーナー)を失った影響が大きかったんだと思う。コーナーでのあいつはあまりにも受けすぎた。あのフューリーに対して、あそこまでパンチを打つのを認めるようだと勝ち目はない。

 耳から出血していたし、かなり殴られた3ラウンド以降は、ひどく疲れ切っていた。あいつが『俺は王だ。だから盾はいらない』と言っていたのは知っているけど、あまりに打たれすぎてどうにもならなかった」

 ワイルダーのパフォーマンスを非難したホワイトは、こうも言い放っている。

「あの敗戦は精神的に影響を与えるものだ。二度と闘いたくないと、キャリアを終わらせる可能性だってあると思う。どうなるか様子を見ないといけないけどね」

 今月22日には36歳となるワイルダー。気になる去就について、彼のトレーナーであるマリク・スコットは「現時点で『引退』は僕らのプランに全くもって含まれていない。それを考えるのはエネルギーが限界だと感じた時だけだ」と明言。リングから去るつもりはないとしている。

 心身ともに疲弊しているであろうワイルダー。はたして、百戦錬磨のファイターは、宿敵に対する連敗に何を想っているだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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