近年、野球やサッカーのように、バスケットボールも海外でプレーする、または志す選手が増えている。その時に多くの選手が直面するのが「言葉の壁」だ。高校時代に名門・桜花学園で活躍し、現在は海外でのプロ契約を目指して活動している山田愛さんに、海外で戦ううえで必要な4つのポイントや、おすすめの勉強法を語ってもらった。

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■言葉の違いは文化の違い

 私は海外でのプレーに挑戦している過程で英語を身につけてきました。日本人の中には、文法を完全にマスターしないと英語を話せないとか、恥ずかしいとか、話すべきじゃないと思っている人もいるかと思います。相手が話した内容を聞き返すことも、相手に失礼ではないかと思う人もいるかもしれません。
  でも、言葉の違いは文化の違いです。アクセントもアメリカ人に合わせる必要は無く、イギリス訛りやオーストラリア訛りがあるように、ジャパニーズ訛りでもいいと思います。個性だと感じることができたら、恥ずかしさも消えるのではないでしょうか。海外では上手く話すことよりも自分の意見を伝えること、相手が話していることをわかるまで聞くことが普通だと思います。

 海外のチームの監督は、戦術について選手に理解しているかどうかを確認してきたり、意見を求めてきたりします。監督は選手に戦術を理解・納得させ、試合で勝利することが役割で、選手は戦術を理解・納得して試合で実行することが役割。その関係はフラットだと感じます。私は、日本ではこういった役割分担を経験したことがなかったので、これも文化の違いなのかもしれません。

 もし、試合で監督が戦術や細かな動きの指示をしてきた時に、英語がわからなかったり、理解しているのか不安な様子を見せてしまったらどうなるでしょうか。監督はアメリカ人や英語がわかる人を使おうという心理になると思います。信頼度や存在を認めてもらうためにも英語力は必要で、たとえ片言だとしても自分の意見をはっきり言うこと、理解していると見せることはとても大事です。
 ■国際アスリートになるために必要なこと

 海外で挑戦している過程で、国際アスリートになるために必要な4つのことがわかってきました。

1)英語
 英語ができないと、海外でプレーしたくてもできません。自分を理解してもらうためにも、相手を理解するためにも、競技のスキルと同じくらい重要だと思います。

2)熱意と行動力
 自分の熱い想いを行動で表現すること。言葉だけでは伝わらない熱意を相手に伝えることができます。私はアメリカで開催されたコンバインに日本から参加して、視察スタッフにアピールしたことらから、WNBAのレジェンド選手ベティ・レノックスと知り合いました。さらに、その後に彼女に連絡を取り、一緒トレーニングすることもできました。

3)自分の直感を信じること
 直感と計画は両方必要。でも特に直感で感じたことには色々な意味があり、その直感を拾って行動できるか、見落としてしまうかで色々なことが変わってくると思います!毎日毎秒、一瞬一瞬の判断で生きているので、チャンスの直感を感じたら、しっかり掴み取っていけるアンテナが必要です。自分の道や目標に沿って行動していれば、絶対にチャンスは訪れます。
 4)自分の軸、自信を持つこと
 自分の軸を持っている人は本当に強い。安定したプレー、自分のリズムでプレーできる人は、普段から自分のリズムで生活し、それがプレーにも影響をもたらしていると思います。そして私生活も人に流されることなく、自分の目標へ向かっていけるので、自分の軸を持つことはとても大事。遠慮や譲り合いはあまり必要なく、主張や自分の評価をしっかり口に出していくアピール、自信をもって過ごすことが必要だと思います。

■海外でのプレーを目指す人におすすめの勉強方法

 海外でのプレーを目指す人は、スキルの向上はもちろんですが、並行して語学力を身につける必要があると思います。

 これから海外でのプレーを目指そうと思うなら、まずはオンライン英会話を始めるといいと思います。日本では英語を中学や高校で学んできているので、脳ではわかっているのですが、口がまわらなかったり、喋ることが難しいので、まずは“英語を喋れる口”を作ることをおすすめします。
  私が、「英語がもっと上手くならなきゃ!」と思ったのは、オーストラリア滞在中に地域の子どもたちにバスケのクリニックをした時です。指導対象の子どもたちは5歳くらいなのですが、自分の英語の発音が悪いととにかく理解されない。「これやって」と話したつもりでも、発音が悪いと「何て言っているの?」とリアクションをされる。少し英語力がついたと自信を持ち始めた頃だったこともあり、そんな子どもの正直なリアクションにとても落ち込みました。この一件から、英語がもっと上手くなりたいと思いました。

 意思疎通ができるくらいまで英語力ある人は、「英語で人に何かを教える」ということをやってみると上達が早いかもしれません。

 私は、日本人グローバル化計画推進協会(JAGPP)が主催するジュニアアスリート支援企画のサポーターとして、将来世界での活躍を目指す様々な競技の10代のジュニアアスリート達と楽しく英語を話しています。世界で活躍する選手になるという同じ目標を持ち、スポーツという共通の話題があり会話も弾みます。

 私がバスケットボールを通して英語を学んだように、自分の興味のあるテーマに関する英語から学ぶことで、楽しく上達できると思います。

 映画が好きな人はお気に入りの映画を、英語の上映や字幕で見ることもいいと思います。映画を楽しみながら、発音の確認ができたり、シチュエーションで使う単語なども覚えられるようになると思います。
 ■英語を身につけてみて感じたこと

 英語ができるようになって、自分の人生がとても楽しくなりました!バスケットをしていたから出会える人がいたように、英語がわかるようになったからできた友達や出会えた人がいます。色々な言語に触れることで、世界の人と話せるなんて本当に素敵だと思います。

 また、英語での情報がわかるようになると、情報量が一気に増え、考え方やメンタル面の幅も広がります。日本語にはない英語のニュアンスなどもあり、とても面白いです。(必要になるかどうかわかりませんが)次はフランス語にも挑戦しようと思っています。

【山田愛 Ai Yamada】
1995年7月17日、三重県出身。桜花学園高校で全国三冠を達成。世代別日本代表U16アジア選手権で優勝。U17世界選手権で4位。卒業後、JXサンフラワーズ(現・ENEOSサンフラワーズ)に入団し日本一を経験したがケガにより2019年に退団。その後、オーストラリアでバスケを再開。海外で活躍するプロ選手を目指し、2020年、21年とオーストラリアでプロ契約したが、コロナでリーグが開催されなかった。現在は海外活動を支援してくれるスポンサーを探しながら、海外プロプレーヤーとしての活動再開を目指している。