リバプールが南野拓実の獲得を決めたのは2019年12月。フィルジル・ファン・ダイク(←18年1月サウサンプトン)やアリソン・ベッカー(←18年7月ローマ)と同じように重要な新戦力として、日本代表のアタッカーをアンフィールドに迎えた。

 ユルゲン・クロップ監督やスポーツディレクターのマイケル・エドワーズら複数人からなる移籍委員会(リバプールの補強戦略を決める合議制の機関)も、狙ったターゲットを首尾よく確保できたことを喜んだ。

 南野を獲得する決め手となったのが、チャンピオンズ・リーグ(CL)の直接対決でのパフォーマンスだ。19年10月2日、レッドブル・ザルツブルクの一員としてアンフィールドに乗り込んだ南野は、1-3から1点差に迫るゴールを奪い、さらにアーリング・ハーランド(現ドルトムント)の同点弾をアシストした。

 その後、モハメド・サラーが決勝ゴールを決めてリバプールの勝利に終わったが、以前から南野を補強候補としてマークしていたクロップとエドワーズは、本腰を入れて獲得に乗り出したのである。

 このとき、南野にはリバプールの他にも複数のクラブが目を付けていた。マンチェスター・ユナイテッド、ボルシアMG、そしてミランがなかでも熱心だった。しかし、リバプールは彼らに奪われる前に行動を起こし、レッドブル・ザルツブルクが設定する契約解除違約金700万ポンド(約10億850万円)を支払い、争奪戦を制したのだった。
 
 それから2年が経とうとしているが、南野はリバプールで苦戦を続けている。昨シーズンの後半はサウサンプトンにレンタルに出され、戻ってきた今シーズンもここまで出場機会が限られている。

 プレミアリーグでは出番がなく、リーグカップのノーリッジ戦とチャンピオンズ・リーグのポルト戦の2試合に出場したのみにとどまっている。先発したノーリッジ戦は2ゴールを奪って勝利に貢献しているが、ポルト戦は3-0とリードした67分の投入で23分間ピッチに立っただけだった。

 出場機会が限られている理由のひとつは守備の問題だ。南野は高さが足りず、それが守りの局面で穴になると、クロップは懸念している。

 クロップはレギュラーを固定して戦うタイプの指揮官でもある。とりわけプレミアリーグの試合ではスタメンはほとんどいじらず、今シーズンもここまで前線の3トップは、サラー、サディオ・マネ、そしてディオゴ・ジョッタを7試合中6試合で起用している。CFの本来のレギュラーであるロベルト・フィルミーノがコンディション不良でジョッタに取って代わられているが、いずれにしてもこの4人がレギュラー格で、南野はディボック・オリギとともに控えの位置付けだ。
  当面の間の出番はリーグカップに限られるだろう。とすれば、南野にリバプールでの未来はないのか。

 クロップは見限ってはいない。チームメイトも信頼を寄せている。南野についてロッカールームで語られる言葉は常にポジティブで、「トッププレーヤー」、「いいヤツだ」と誰もが口を揃えて称賛する。

 指揮官も賛辞を惜しまない。9月下旬にはこう語っている。

「タキ(南野の愛称)は本当に素晴らしいタレントだ。アジアからザルツブルクに渡り、そしてリバプールにやって来た。しかも、すぐにこの難しい状況(新型コロナウイルスのパンデミック)になってしまった。スタジアムにはサポーターもおらず、そのなかでプレミアリーグに適応しなければなかなかった」

 たしかに、移籍してすぐにパンデミックという未曾有の事態に見舞われ、南野は出鼻を挫かれた。ロックダウンで行動が制限され、プレミアリーグ再開後もチームメイトと一緒に食事をしたり、雑談を交わしたり、同じ時間を過ごすことができなかった。新しい環境、新しいチームに適応するのに、これは想像以上に重いハンデだ。選手は日々の交流からピッチ上での相互理解を深めていくものだ。
  それでも、昨シーズン後半のサウサンプトンへのレンタル移籍が、南野にとって貴重な経験になったと、クロップは言う。

「サウサンプトンに行って、まったく違う選手になって帰ってきた」

 そして、こう言葉を継ぐ。

「フィニッシュはもちろん卓越しているが、しっかりゲームに絡むことができる。中盤に引くタイミングも心得ている。より幅広くチームに貢献できるようになった。選手にはすぐに結果を求めてはいけない。時間を与えることが肝心だ。彼にはその時間がある。それはアドバンテージだ」

 この言葉どおり、クロップは獲得した新戦力に十分な時間を与え、じっくりとチームに取り込んでいく。もちろん、南野も見捨ててはいない。むしろ、今シーズンこそはと期待を寄せている。年明けの1〜2月にアフリカ・ネーションズカップがあり、サラー(エジプト代表)、マネ(セネガル代表)、ケイタ(ギニア代表)が最大で5週間チームを離れるからだ。南野の力が必ず必要になる。その時は間違いなくやってくる。

文●ドミニク・キング(デイリー・メール紙)
text by Dominic KING / Daily Mail

翻訳●松野敏史
translation by Toshifumi MATSUNO

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