男子テニス元世界1位で往年の名テニスプレーヤーとして知られるボリス・ベッカー氏が、欧米スポーツメディア『EUROSPORT』のポッドキャストに登場。世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に対し、心配のコメントを寄せた。

 今季は全豪・全仏・ウインブルドンを立て続けに制覇し、グランドスラムで驚異的な強さを見せたジョコビッチ。男子テニス界史上初となる年間ゴールデンスラムの偉業達成に多くのテニスファンから大きな期待を寄せられていた。

 しかし、迎えた東京オリンピック準決勝では24歳のアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ/4位)に逆転で敗退。さらに、年間グランドスラムの可能性が残されていた全米オープンでは苦しみながら決勝へ進んだものの、ダニール・メドベージェフ(ロシア/2位)にまさかのストレート負け。その試合後に行なわれた記者会見では、「次はどこでプレーするのか本当に全く決めていない」と発言。実際にここ1か月以上は、どの大会にも出場していない。

 現段階でジョコビッチはパリマスターズ、ATPファイナル、デビスカップ・ファイナルの3大会へ出場し、2021年シーズンを締めくくる予定だ。そんななか、2013年から16年の約3年間にわたってジョコビッチを指導したベッカー氏は、かつての愛弟子が長らく実戦から遠ざかっている背景に、全米で年間グランドスラムを逃したことが大きく関係しているのではないかと懸念している。

「ノバク(ジョコビッチ)は、今年の全米オープンで(年間グランドスラムの)大きなチャンスを手放してしまったことをまだ消化しきれていないと思う。物事は彼の思い通りにはいかなかった。ノバクは感情的に参っているようにも見える」
  ジョコビッチといえばグランドスラムで通算20勝、マスターズでも36勝を誇るなど数々の輝かしい功績を残してきた。そんな彼の圧倒的な強さゆえに会場のテニスファンが対戦相手を応援するケースが多く見られるが、先の全米決勝では年間グランドスラムがかかる中で2セットダウンと絶体絶命の状況に立たされたジョコビッチに対し、観客が大声援を送るシーンがあった。

 これまでグランドスラムを含め様々な大会でアウェーのような雰囲気で戦うことが多かったジョコビッチは、試合中にも関わらずファンからの温かい声援に感涙。ベッカー氏はその場面こそがジョコビッチが立ち直るためのきっかけになるのではないかと考えているようだ。

「あのような瞬間を心に留めておくことが、(今後の)彼の励みになる。全米決勝で彼が受けた大喝采は、彼にとって非常に良いものだった。あのスタンディングオベーションを見れば、ノバクがキャリアの最終段階で愛される道を歩んでいることがよくわかるはずだ」

 そして最後にベッカー氏は「彼がすぐにまたプレーできることを願っている」と34歳の世界王者へエールを送った。

 世界ランク1位の座を守り続けているジョコビッチが常に抱えるプレッシャーは計り知れないものがある。まずは心身の疲労を癒やした上で、まだまだ今後も全選手の大きな壁となって立ちはだかってほしい。

文●中村光佑

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