「まるで夢のような気分だよ!」

 ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP)が、MotoGP第16戦エミリア・ロマーニャ&リビエラ・ディ・リミニGPでMotoGPクラスのタイトルを決めた。

 22歳187日での戴冠は、マルク・マルケス(20歳266日)、フレディ・スペンサー(21歳258日)、ケーシー・ストーナー(21歳342日)、マイク・ヘイルウッド(22歳160日)、ジョン・サーティース(22歳182日)に次ぐ6番目の若さで、ヴァレンティーノ・ロッシ(ペトロナス・ヤマハ・SRT)の22歳240日より早い。

 フランス人ライダーによる最高峰クラスの王座獲得は史上初ということもあり、エマニュエル・マクロン大統領は「ファビオ! 何というレース、何という1年だ! フランス人として初めてとなる世界チャンピオンの称号、おめでとう!!」とコメントを発信。栄光の歴史がもたらされた母国は大いに盛り上がっているようだ。

「永遠に初めての王者!」と1面全部を割いた老舗スポーツ新聞『レキップ』や同国で最も古い歴史を持つ一般紙の『ル・フィガロ』はじめ、週明けの現地メディアは大きくこのニュースを取り上げた。

 クアルタラロの出身地、ニースの一般紙『ニース・マタン』は「ル・ニソワーズのクアルタラロがフランス初の王冠。MotoGP最高峰タイトルを獲得!」と、同じく南仏の都市、ペルピニャンの一般紙『インデペンデント』は「ファビオ・クアルタラロの伝説」と1面トップで紹介。モンペリエの『ミディ・リブレ』とコルシカ島の『コルセ・マタン』も1面で扱った。
  レースが行なわれたイタリアの『トゥット・スポルト』は「ヤマハの日。さよらなヴァレとクアルタラロの世界チャンピオン」、『コリエーレ・デッロ・スポルト』は「ヴァレの日にクアルタラロが勝利!」と報道。ジュニアカテゴリー時代に“El Diablo(悪魔)”の異名を取ったスペインの『ムンド・デポルティーボ』や『エル・ムンド』の見出しも飾った。

 また、キリアン・エムバペ、セルヒオ・ラモスといったサッカー選手、水泳のカミーユ・ラクール、陸上棒高跳びのルノー・ラビレニといったフランスゆかりのアスリートからも賛辞が集まり、フットボールの世界的ビッグクラブ、パリ・サンジェルマンからは「歴史的なMotoGPワールドタイトルの獲得おめでとうございます!」とのメッセージが贈られた。

 トップを走っていたランキング2位のフランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)が転倒し、あっけなく幕を閉じたようにも見えたチャンピオン争いだが、ミサノでのレース展開は、この1年間でクアルタラロが大きく成長したことを感じさせた。

 4位に終わったものの、急激に温度を上げると摩耗が進みやすいともいわれるミシュラン・タイヤで15番グリッドから追い上げ、表彰台争いを最終ラップまで演じた冷静な走りは、オフから取り組んできたメンタルトレーニングの賜物だろう。

 昨年も開幕から好調で、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の欠場もあり、チャンピオン候補の筆頭と目されたが、終盤に失速してランキングは8位。ロッシと入れ替わるかたちでファクトリー入りした今年も順調に勝ち星を重ねてきたが、ドゥカティ勢が調子を上げてきたシーズン後半は必ずしも楽な戦いではなく、一貫した走りで栄冠をつかみ取った。

 夢を実現し、屈託なく笑う22歳は話す。

「新しい夢はもう1回タイトルを獲得すること。もし実現すれば3回目を目指すよ!!」

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super