2013年にウィンブルドンのダブルスを制したペン・シューアイ(中国)が消息不明になった騒動は、いまだ波紋を広げている。

 事の発端とも言える出来事が明るみになったのは11月4日だ。ペンが自身のSNSで、中国共産党最高指導部メンバーの一員であった75歳のチャン・カオリー前副首相から性的暴行を受けていたと告発したのだ。

 ところがその告発後にペンは消息不明に。中国国営放送『CGTN』は、「告発は真実ではない」「今は自宅で休んでいてなにも問題はない」と記したメールを公にし、彼女がコーチらと会食している動画や自宅でくつろいでいる写真などを次々と公開した。だが、WTA(女子テニス協会)は、「検閲のない状態での透明性のある調査を求める」と懐疑的な見方を示し続けていた。

 いまだ彼女の安否は不明のままだ。そんななかで現地時間12月1日に、WTAのスティーブ・サイモン会長は、「理事会の全面的な支持のもと、香港を含む中国でのWTAトーナメントを直ちに中止する」と発表。「ペン・シューアイは自由にコミュニケーションを取ることを許されず、性的暴行の疑惑を否定するよう圧力をかけられているような状況にある。良心的に考えて、そこ(中国国内)で競技を行なうことはできない」と訴えた。

 WTAツアーに多大な収益をもたらしてきた中国は、女子テニスの発展の鍵を握る国でもある。ゆえに今回の決断は、テニス界にも大きな痛手になりかねない。それでも「選手やスタッフ全員が直面しうるリスクについて大いに懸念している」と中国ツアーの中止を決断したサイモン会長に賛同する声は小さくない。
  男子テニス界の絶対王者であるノバク・ジョコビッチは、男子国別対抗戦「デビスカップファイナルズ」の記者会見において、「僕は決断を全面的に支持する」と主張した。

「僕らはまだペン・シューアイの健康について十分な情報が得られていない。WTAはもちろん、ATPも含めて、すべての人が説明を求めることは悪いことだとは思わない。今回の決断はとても大胆で、勇気あるものだと思う」

 さらに34歳の大スターは、「ATP(男子プロテニス協会、WTA、PTPA(プロテニス選手協会)、男性プレーヤー、女性プレーヤー、それぞれがお互いにサポートし合うことが重要だ。何が起こっているのかを明確にしていく必要があるんだよ」と、テニス界全体の団結を求めた。

「正直なところペンの詳細はしっかり見ていない。でも、この数週間前に、彼女はプライバシーの尊重を求める訴えをしていたのは知っている。それについて中国から十分な説明がないのは本当に悲しいことだ。これはひとりのテニス選手の命が問題で、当然だけど、テニスコミュニティーとして団結する必要がある」

 同じく中国でツアー大会を開催しているATPが、ジョコビッチの発言を受けて、どう動くのか、来年2月に迫った北京五輪への影響など、ペンの安否を巡る問題は世界規模と化している。

 はたして、この先、消息不明となっているペンの問題は解決へと向かうのか。何より世界が彼女の無事を願っている。

構成●THE DIGEST編集部