ベストナインやゴールデン・グラブ賞、各種タイトルホルダーが決まり、MVPに沢村賞、新人王(特別賞)も発表された。スポットライトを浴びた選手たちはまぎれもなく2021年の「顔」だが、表彰台には上がれなくても受賞者に匹敵する輝きを放った選手がいる。そんな実力者の活躍を、各ポジションから一人ずつピックアップして振り返ろう。

【先発】上沢直之(日本ハム)
12勝6敗 160.1回 防御率2.81
 いずれもリーグ3位の勝利、投球回、防御率を記録し、QSオリティ・スタート)率87.5%、被打率.208、被本塁打率0.45はいずれも2位の充実ぶり。田中将大(楽天)の日本復帰初登板で注目を集めた4月17日の一戦に投げ勝つと、5月以降で3先発以上した月は必ず防御率2.20以下の安定感を誇った。オフの契約更改では1億円プレーヤーの仲間入り。

【救援】平良海馬(西武)
24HP20S 60.0回 防御率0.90
 開幕から39試合連続無失点記録を樹立。序盤でセットアッパーからクローザーへ役割を変え、史上2人目の20ホールド&20セーブも記録した。東京五輪で本塁打を打たれて後半戦はやや失速したとはいえ、レギュラーシーズンでは被弾ゼロで防御率が前年から半減。変化球の投球割合増により救援ベストの被打率.176と被OPS.504、同最多の70奪三振と打者をねじ伏せた。
 【捕手】木下拓哉(中日)
打率.270 11本塁打 43打点 OPS.748
 自慢の強肩でリーグ最多の盗塁刺29回を記録し、阻止率.426は2位。最優秀バッテリー賞選出時は、相方の柳裕也も「力を最大限に引き出してくれた」と賛辞を惜しまなかった。チームの日本人選手で唯一2ケタ本塁打(11本)に到達するなど打撃でも活躍し、ベストナイン捕手の中村悠平(ヤクルト)以上だった。

【一塁手】坂倉将吾(広島)
打率.315 12本塁打 68打点 OPS.857
 序盤は主にマスクをかぶりながら「隠れ首位打者」として持ち前の打棒を発揮し、一塁での出場が増えた後半戦はほぼ5番に固定された。昨季は対左投手に打率.216と弱かったが、今季は相手投手の右左を問わずに3割超えと課題を克服。ベストナイン投票では異なるポジションで票割れも、リーグ2位の打率とOPSは一塁で受賞のマルテ(阪神)を上回った。

【二塁手】浅村栄斗(楽天)
打率.269 18本塁打 67打点 OPS.817
 4年ぶりに20本塁打に届かずOPSも楽天移籍後のワーストで、昨季まで5年連続受賞のベストナインも逃がした。それでも、OPSは.800の大台を超え、本人としては物足りなくとも二塁手としは依然として水準以上。また、101四球はリーグ最多にして初めて三振(96)の数を上回り、後ろを打つ島内宏明の打点王獲得をアシストした。
 【三塁手】宮﨑敏郎(DeNA)
打率.301 16本塁打 73打点 OPS.808
 毎月打率2割7分以上を記録して、最終的には4度目の3割クリア。三振率9.3%はリーグ2位(昨季まで4年連続でリーグベストト)で、「1988年世代」が全体的に下降線をたどっても、いまだ錆び付いていない職人ぶりを証明した。FA権を取得して迎えたオフは去就に注目が集まったが、球団史上最長の6年契約(推定総額12億円+出来高)で残留を決めた。

【遊撃手】エチェバリア(ロッテ)
打率.203 4本塁打 24打点 OPS.536
 打撃で大苦戦し、遊撃でのディフェンスも守備率.969が示すようにミスが多く「見栄えほどに守備力は高くない」との認識は適切だろう。それでも、アクロバティックなプレーで幾度もハイライトを作り、ファンを魅了し続けた。CSファーストステージ第1戦では8回に同点弾を叩き込んでバット投げ。印象面では間違いなく今季を代表する一人だ。

【左翼手】栗原陵矢(ソフトバンク)
打率.275 21本塁打 77打点 OPS.804
 外国人選手がうまく機能できないチーム状況で持ち前の汎用性を発揮した。全試合に出場し、外野両翼をメインに内野両コーナーと捕手も務めて計3失策のみ。クリーンアップを中心に2〜7番を任されながら、キャリアハイの打撃成績を残した。東京五輪では唯一の打席となった準々決勝のアメリカ戦延長10回に犠打を決めてサヨナラ勝ちをお膳立てした。
【中堅手】桑原将志(DeNA)
打率.310 14本塁打 43打点 OPS.843
 2年連続打率1割台のどん底から見事な巻き返し。内野転向も打診されて春季キャンプは二軍スタートも、開幕戦で「1番・センター」の座を射止めると、打線の牽引役としてリーグ5位の打率と同最多の39二塁打を記録した。161安打と14本塁打はキャリアハイと鬱憤晴らし。オフは年俸1億円到達に加えて、変動制の4年契約も手にした。

【右翼手】オースティン(DeNA)
打率.303 28本塁打 74打点 OPS1.006
 コロナ禍でチーム合流は4月半ばと出遅れたが、本塁打率13.3はキングの岡本和真(巨人)をも上回った。同一シーズンで他11チームからのホームランは球団史上初。昨季よりもボール球の見極めが向上して、規定打席未満ながらOPSはリーグ2位の水準に達した。東京五輪でも2本塁打を放ちベストナインに選出。オフには3年8億5000万円の契約をゲットした。

【指名打者】マーティン(ロッテ)
打率.233 27本塁打 75打点 OPS.855
 3・4月だけで10本塁打を放ち、月間MVP授賞と快調な滑り出し。ところが9月下旬に自打球を当てた右足甲を骨折して戦列を離れ、復帰後は足を引きずりながらのプレーでチームを鼓舞したが低空飛行に。同じタイミングで打線も勢いを失い、改めて存在感が浮き彫りになった。指名打者起用が増えても、リーグ2位の9補殺とライトでの強肩も健在だった。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。