古馬長距離路線の頂点を決する天皇賞・春(G1、阪神・芝3200メートル)が5月1日に行なわれる。

 今年は、京都競馬場が改修中のため、昨年に続いて阪神競馬場が舞台になる。昨年はレコードタイム(3分14秒7)という高速決着となったが、29日時点での予報によると、当日の天気予報は「曇りのち雨」となっており、それほどのスピード勝負にはなりそうにない。それを踏まえながら、今春の”盾争い”を展望してみよう。

 今年の大きな特徴は、出走を予定している馬のうち、昨年同様にG1ホースが1頭しかいないこと。昨年の菊花賞(G1、阪神・芝3000メートル)を逃げ切り勝ちしたタイトルホルダー(牡4歳/美浦・栗田徹厩舎)ただ1頭だけなのだ。

 長距離戦線が手薄になるのは日本のみならず、欧米を中心とする主要開催国でも同じような傾向を示しており、春の天皇賞や菊花賞に出走するトップホースが年々減少する傾向はオールドファンにとって寂しい限りだが、引退後の種牡馬ビジネスを考えればやむを得ないことではある。

 とはいえ、騎手の駆け引きや血統を含めた予想が特に重視されるなど、長距離レース特有の魅力が失われたわけではない(と筆者は思いたい)。

 出走馬中、唯一のG1馬であるタイトルホルダーを差し置いて、1番人気に推されるであろう存在が、昨年の天皇賞・春で勝ち馬のワールドプレミアに0秒1差の2着となった、ディープボンド(牡5歳/栗東・大久保龍志厩舎)である。
 昨年は天皇賞ののち、休養を挟んでフランスへ遠征し、海外初出走となったフォワ賞(仏G1、ロンシャン・芝2400メートル)を逃げ切り勝ち。そのポテンシャルの高さから、クロノジェネシスとともに出走した本番の凱旋門賞(G1、ロンシャン・芝2400メートル)でも期待を集めたが、きわめて悪い馬場状態が響き、最下位の14着に敗れた。

 その成績もあって、帰国後に出走した有馬記念(G1、中山・芝2500メートル)では5番人気に甘んじたが、中団待機から直線ではインを突いて急追。勝ったエフフォーリアとは0秒1差の2着に入って意地を見せた。

 そして、今年初戦の阪神大賞典(G2、阪神・芝3000メートル)では中団からの差し切りという貫禄勝ちで連覇を達成。一段と成長した姿を見せた。

 枠順が大外の18番枠を引いたのは不運だったが、陣営は「レースが上手な馬なので心配はない」と語る。また、手綱を取る和田竜二騎手も、「去年はパワーに頼るところがあったが、ことしは切れ味も出てきた。順調にきているので、気分よく走らせられれば結果は付いてくる」と自信をのぞかせている。

 正直なところ、手薄な今年のメンバーから考えて、筆者はディープボンドの主役の座は動かし難いと考える。 順当な評価をすれば、やはりタイトルホルダーになろう。

 昨秋の菊花賞は単騎逃げに持ち込むと、後続には自身の影も踏ませず、5馬身差で余裕の圧勝を遂げた。そのあとの有馬記念では2番手から粘り切れず5着に敗れたが、今季初戦の日経賞(G2、中山・芝2500メートル)は再び得意の逃げを打ち、後続に迫られはしたものの先頭でゴール。上々のスタートを切った。

 多少速めのペースでも、単騎逃げに持ち込めればしぶといのが本馬のストロングポイント。こちらも16番枠と外目のゲートに入ったのはツキがなかったが、鞍上の横山和生騎手が攻めの騎乗で先頭を奪えば、好勝負は必至だろう。

 G1レース初挑戦ながら、ファンから熱い視線を注がれているのはテーオーロイヤル(牡4歳/栗東・岡田稲男厩舎)だ。

 初勝利まで4戦を要し、重賞初挑戦の青葉賞(G2、東京・芝2400メートル)では4着に敗れてしまったが、ひと夏を越して10月の1勝クラスから連戦連勝で一気にオープンまで駆け上がり、ことし初戦のダイヤモンドステークス(G3、東京・芝3400メートル)を4連勝で制し、ついに重賞ウイナーの仲間入りを果たした。

 そのダイヤモンドステークスは、自身初の3000メートル超のレースとなったが、直線で抜け出して、さらに後続に2馬身半もの差をつけた長距離適性の高さは注目に値するもの。初のG1戦という壁の高さはあるが、本場の今後を占ううえでの分水嶺になる可能性がある一戦だ。
 ここまでの馬で「2強+1」というのが勢力地図になると思われるが、ほかに”穴候補”を挙げておく。

 ステイヤーズステークス(G2、中山・芝3600メートル)、阪神大賞典と、長距離重賞で連続2着したアイアンバローズ(牡5歳/栗東・上村洋行厩舎。ステイヤーズステークス、万葉ステークス(OP、中京・芝3000メートル)、阪神大賞典と、3レース連続で3着に健闘したシルヴァーソニック(牡6歳/栗東・池江泰寿厩舎)が上位進出を狙う伏兵か。

 そしてもう1頭、大穴候補として、アメリカジョッキークラブカップ(G2、中山・芝2200メートル)で11番人気ながら2着に食い込んで大波乱を巻き起こしたマイネルファンロン(牡7歳/美浦・手塚貴久厩舎)を選ぶ。

 2走前までは1800〜2000メートル戦ばかりを走っていたが、初の2200メートル戦で最後まで脚を伸ばしたレースぶりは長距離適性を感じさせる。そして、父ステイゴールドという意外性に満ちた血統、思い切りのよいレース運びが持ち味の松岡正海騎手が手綱をとる、この2点も魅力的だ(ちなみに松岡騎手は2009年の本レースを12番人気のマイネルキッツで制している)。

”てっぺん”までは難しくとも、3連系の馬券なら狙う価値があるかも?

文●三好達彦

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