現在、プロとして活躍している選手も、現役を引退してコーチをしている人も、小さい頃には憧れのプロがいたはずだ。【プロが憧れたプロ】シリーズの第23回は、JTAランキング28位の川橋勇太選手(マイシン)だ。

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 川橋はプロ3年目の24歳。大成高校から筑波大学に進み、4年生在学時にITFフューチャーズ(昭島)で優勝。内定していた就職先を断って2019年末にプロ転向した。あいにくプロのスタートと新型コロナウイルス拡大が重なり、なかなか海外には遠征できていないが、国内ツアーで成績を残し、今年1月にはJTAランキング17位をマークしている。

 そんな経歴からも察しが付くが、川橋は海外留学して大ブレークしたり、ジュニアエリートとしてトップを走ってきた選手ではない。地道に練習を重ね、自分のプレーを研究し、着実に階段を上ってきたタイプと言える。

 ジュニア時代に憧れたプロの名前を聞くと、「杉田祐一さんです。彼の試合が好きで、昔からYouTubeとかでよく見ています」との答え。それはファン的な感情ではなく、「ああいうプレーを取り入れたい」という意味での憧れだった。

 ジュニアの頃に杉田の全日本優勝を見たのが最初のきっかけだという川橋だが、本気で意識するようになったのは大学時代だ。「僕は入学して初めてITFフューチャーズに出場し、外国人選手とやって、体格差で負けたんです」と川橋は当時を振り返る。
  自分とは対照的に、杉田はパワフルな外国人選手にも打ち負けない。「杉田さんはショットが強力というわけではないし、サービスもそれほど速くないのに、何で勝てるんだろう? と興味が湧きました」

 川橋はその理由を考えた。そして導き出した答えが“タイミング”だ。

「杉田さんはベースラインから下がらない。前でしっかり外国人選手のボールをヒットして返す。下がったら体格的に勝てないとわかった上で、タイミングの早いカウンターテニスをしているんです」

 当時、川橋は自分のテニスを模索し、見いだしつつあった頃だった。「自分もカウンターで行くべきだと思い始めていたんです。そんな時に杉田さんのプレーを見て、しかも世界の30位台まで行っていた。最高のお手本になりました」

 具体的に杉田から取り入れたショットを尋ねると「ラニングフォアハンドや、コンパクトなバックハンドのダウンザライン、前に入ってのリターン……」と、次々に川橋はショット名を挙げる。本当によく研究していることがその言葉からうかがえた。

 まだ杉田と対戦したことはないという川橋。もし戦えたら「下がらずにどこまで打ち合えるか試したい」と目を輝かせる。きっとそれはとんでもなくハイテンポなラリーになることだろう。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

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