現地時間5月29日(日本時間30日、日付は以下同)、ボストン・セルティックスが敵地FTXアリーナでマイアミ・ヒートを100−96で下し、シリーズ戦績4勝3敗でイースタン・カンファレンス・ファイナルを突破。この結果により、6月2日からスタートする今年のNBAファイナルは、リーグが創設された1946−47シーズンから今なお残るセルティックスとゴールデンステイト・ウォリアーズ(当時はフィラデルフィア・ウォリアーズ)が激突することとなった。

 両チームによるレギュラーシーズンの直接対決は1勝1敗。しかしながら、セルティックスでNBAファイナルに出場した経験を持つ選手は皆無で、ベテランのアル・ホーフォードもプレーオフ通算141試合に出場しながら頂上決戦は初。これは、ファイナル不出場の選手として史上最多の出場試合数だった。

 一方のウォリアーズは、2015年以降の8年間で6度目のファイナル進出。スティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)の下、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーン、アンドレ・イグダーラはそのすべてを経験、ケボン・ルーニーは通算3度目と、頂上対決における経験値だけで言えばウォリアーズに分があるのは明白だ。
  もっとも、今季3シーズンぶりにウォリアーズへ復帰したイグダーラは、レギュラーシーズンはわずか31試合の出場にとどまり、スタッツも平均19.5分のプレータイムで4.0点、3.2リバウンド、3.7アシスト。プレーオフに入ってからは首のケガに悩まされており、デンバー・ナゲッツとのファーストラウンド第5戦から欠場が続いている。

 だが、38歳の大ベテランは今季、これまで以上にコーチとしての役割をこなしているという。29日にカーHCは、記者たちの前でこう話していた。

「今シーズンの我々には、(ベテランと若手が互いに支援していく)素晴らしいメンタリングシステムがある。若い選手たちがベテランたちとプレーし、彼ら(ベテラン陣)がしっかりと見てくれているんだ。特にアンドレは、カウンセリングとアドバイスという点で素晴らしい仕事をしてくれている。それは彼の持つユーモアと(トゲのない)嫌味、謎めいたメッセージといったアンドレならではのやり方なんだ」
  今季のウォリアーズには、アンドリュー・ウィギンズやジョーダン・プール、オットー・ポーターJr.など、主力のなかにもプレーオフ経験が浅い選手たちがいるほか、ジョナサン・クミンガとモーゼス・ムーディーはルーキーであり、若手もブレンドされたロースターを形成している。

 そんななかで、イグダーラは自らの経験と知識、コミュニケーション能力を駆使して、若手とベテランをつなぐ潤滑油として機能しているようだ。そんな大ベテランについて、ルーニーはこう話す。

「コーチとしての彼は、本当に率直すぎるね。彼は真実を口にしてしまうんだ。たとえそれが聞きたくないことであろうとね。僕は彼からたくさん学んだ。コートで一緒にいる時もね。このチームの選手たちに、些細なことや小さなことも教え込むという見事な仕事をしてくれた。ロッカールームでももの凄く大きな存在なんだ。このチームの皆にとって、彼は最高のリーダーなのさ」
  今年3月下旬、チームが黒星先行に陥っていた時のこと。トンプソンは背中を痛めていたイグダーラが戦列復帰できるかもしれないと会見で耳にすると、「おぉ。それは最高じゃないか。彼はもの凄くスマートでね。ディフェンスの時、常に正しいポジションにいてくれる。オフェンスでも同じさ。正しいプレーをして、クラッチショットを沈めることができる。それがアンドレ・イグダーラという男なんだ。(2015年の)ファイナルMVPであり、このフランチャイズにおいて非常に価値のある働きをしてきた。彼の復帰は大歓迎だね」とコメント。チーム内におけるイグダーラの信頼度の高さを物語る発言と言えよう。

 ファイナル期間中にイグダーラが復帰できるかどうかは現時点で微妙なところ。しかしもしコートへ立てなくとも、この男ならベンチやロッカールームで価値のある働きをしてくれると、選手たちとコーチ陣は確信しているに違いない。

文●秋山裕之(フリーライター)

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