春のマイル王決定戦、安田記念(G1、東京・芝1600メートル)が6月5日(日)に迫った。実績馬、上がり馬が参集して混戦と見られる今年、各馬の力量をプレビューしてみたい。

 実績的に一番手と見られるのが、昨年のNHKマイルカップ(G1、東京・芝1600メートル)の覇者であり、直後の安田記念で3着、秋のマイルチャンピオンシップ(G1、阪神・芝1600メートル)で2着に食い込んだシュネルマイスター(牡4歳/美浦・手塚貴久厩舎)が断然だろう。

 同馬は上記以外に、昨年の毎日王冠(G2、東京・芝1800メートル)でダノンキングリー、ポタジェという古馬のG1ウィナーを破って優勝している。タフなコース設定ゆえ、1600メートル以上での実績を持つ馬の活躍が目立つ東京のマイル戦だけに、これもプラス材料と言える。

 ただし今年は、3月のドバイターフ(UAE・G1、メイダン・芝1800メートル)で8着に敗れて以来のレースとなるため、海外遠征明けという不安が残るのも確か。大きく凡走するとは思えないが、今回はやや評価を割り引いて対抗格としたい。
  逆に、破竹の4連勝で東京新聞杯(G3、東京・芝1600メートル)を制したイルーシヴパンサー(牡4歳/美浦・久保田貴士厩舎)の勢いは大注目に値する。

 昨年の皐月賞(G1、中山・芝2000メートル)で10着に大敗したが、仕切り直しとなった5月の1勝クラス戦から覚醒。1600〜1800メートルのレースを強い競馬で制し、東京新聞杯では今回上位人気になるであろうファインルージュ(牝4歳/美浦・木村哲也厩舎)を0秒3も突き放して圧勝し、一躍マイル戦線のトップクラスとの評価を受けるようになった。

 大の東京コース巧者で、これまで5回走って4勝2着1回で、4連勝はすべて東京でのもの。そのいずれも最速の上がりを記録しており、磨きがかかった末脚の切れは東京の長い直線でこそ、と言える存在。晩成の馬が多いハーツクライ産駒であり、その成長力でマイルG1初挑戦という壁を突き破れるとみて、ここは主軸に推したい。

 ファインルージュは、勝利こそないものの、桜花賞(阪神・芝1600メートル)で3着、秋華賞(阪神・芝2000メートル)で2着、そして今年は5月15日のヴィクトリアマイル(東京・芝1600メートル)で2着に入るという優れたG1実績を持つ。

 大きく崩れたのは、距離が長すぎたオークス(G1、東京・芝2400メートル)の11着のみで、あとはすべて3着以内に入っている安定感が素晴らしい。ヴィクトリアマイルから中2週という強行スケジュールにはなるが、その点さえクリアできれば、上位争いに加わることは必定だろう。
  ソングライン(牝4歳/美浦・林徹厩舎)も侮れない1頭だ。

 昨年のNHKマイルカップでシュネルマイスターの2着になり、今春はドバイのターフスプリント(UAE・G3、メイダン・芝1351メートル)で海外初勝利を挙げた。

 帰国初戦のヴィクトリマイルはやや精彩を欠いて5着に敗れたが、これは“本番”前のひと叩きと考えてよい。富士ステークス(G2、東京・芝1600メートル)を制した舞台で、復活を狙っている。

 その他では、4連勝でマイラーズカップ(G2、阪神・芝1600メートル)を制した上がり馬のソウルラッシュ(牡4歳/栗東・池江泰寿厩舎)、昨年のホープフルステークス(G1、中山・芝2000メートル)の覇者であるダノンザキッド(牡4歳/栗東・安田隆行厩舎)に注目だ。特にソウルラッシュがマイラーズカップで見せた、直線だけで10頭以上を一気にごぼう抜きにした爆発的な末脚は特筆ものだった。

 逆に、高松宮記念(G1、中京・芝1200メートル)でビッグタイトルを手にしたナランフレグ(牡6歳/美浦・宗像義忠厩舎)は、1400メートル以上の距離経験が無いスプリンターで、今回は苦しいように思う。
  最後に“一発”を秘めた穴馬を挙げておきたい。

 朝日杯フューチュリティステークス(G1、阪神・芝1600メートル)を制し、皐月賞、日本ダービーでともに2着したサリオス(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)は、そのポテンシャルの高さを見直すべき1頭だ。

 3歳秋には毎日王冠を制し、昨秋も香港マイル(G1、シャティン・芝1600メートル)では当地の強豪2頭に次ぐ3着に食い込んでいる。この馬も〔3・1・0・1〕と、東京コースを得意にしているのも魅力的である。

 もう1頭の“推し”は、ディープインパクト産駒のヴァンドギャルド(牡6歳/栗東・藤原英昭厩舎)。ドバイターフ(UAE・G1、芝1800メートル)で、昨年は2着、今年は3着に食い込んだ能力の高さに比して評価が低すぎるのでは、と感じる。米国、香港、ドバイを転戦しながら養ったタフさでどこまで上位に迫れるかに注目だ。

文●三好達彦

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