春のマイル王決定戦、安田記念(G1、東京・芝1600メートル)が6月5日に行なわれ、単勝4番人気のソングライン(牝4歳/美浦・林徹厩舎)が数頭で繰り広げられた直線での追い比べを制して優勝。念願のG1タイトルを手に入れた。

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 2番人気のシュネルマイスター(牡4歳/美浦・手塚貴久厩舎)は、昨年に続いて2着と惜敗。3着には8番人気のサリオス(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)が入った。

 一方、1番人気に推されたイルーシヴパンサー(牡4歳/美浦・久保田貴士厩舎)は、後方から追い込みんだものの8着に終わり、今年の平地G1レースは、ここまですべて1番人気の馬が敗れた。

 おそらく秘策を立てていたであろうホウオウアマゾン(牡4歳/栗東・矢作芳人厩舎)がスタート直後のダッシュで先頭を奪い、安田隆行厩舎(栗東)の僚馬であるダイアトニック(牡7歳)とダノンザキッド(牡4歳)がそれを追走。3番人気のファインルージュ(牝4歳/美浦・木村哲也厩舎)は先団に付けたが、ソングライン、シュネルマイスターなどの人気馬が中団を進み、イルーシヴパンサーは16〜17番手という極端な後方にポジションをとった。
  1000メートルの通過ラップは58秒7。当日行なわれた1勝クラスの1600メートル戦でさえ57秒9だったことを考えると、ペースは明らかに遅い。特に600〜800メートル、800〜1000メートルはともに12秒0までラップタイムを落としており、究極の末脚勝負になるのが必定の流れとなった。

 そして迎えた直線。インでホウオウアマゾンが粘るが、馬場の中央からそれを交わしてダノンザキッドが先頭をうかがう。そこへ特に馬場状態のいい外目からサリオスとソングラインが襲い掛かり、さらには密集した内目からシュネルマイスターも馬群を割って猛追。ゴール前は大激戦となったが、最後にひと伸びしたソングラインがシュネルマイスターをクビ差抑えて優勝した。

 ソングラインはノーザンファームの生産で、父キズナ、母ルミナスパレード(その父シンボリクリスエス)という血統。昨春はNHKマイルカップ(G1、東京・芝1600メートル)でシュネルマイスターにハナ差で敗れていたが、今回は因縁の東京マイルで見事リベンジを果たした。 今年は2月にサウジアラビアへ遠征し、ターフスプリント(G3、キングアブドゥルアズィーズ・芝1351メートル)で勝利を収めた。しかし、帰国後初戦となる前走のヴィクトリアマイル(G1、東京・芝1600メートル)では、3コーナーでつまずくアクシデントもあって5着に敗れ、安田記念では4番人気にとどまっていた。

 しかし、中2週という厳しいローテーションのなかでコンディションを落とさず調整した厩舎スタッフのアシストはもちろん、大舞台で無類の勝負強さを発揮する池添謙一騎手の、ロスを避けつつ馬場状態のいい外目から追い込むという絶妙なコース取りもあって、混戦に断を下した。

 ここまで1600メートル以上の距離を走ったことはないが、血統から考えると中距離をこなしても何の不思議もなく、今後の進路についても注目の存在となった。
  一方、敗れはしたものの、ドバイ遠征から”ぶっつけ”で臨んだシュネルマイスターが、その影響を感じさせない仕上がりの良さで勝ち負けに持ち込んだのは流石というべきだろう。国内でいまだ馬券圏外に落ちたことがない安定した走りは健在だ。

 3歳時に毎日王冠(G2、東京・芝1800メートル)を制し、弥生賞(G2、中山・芝2000メートル)でも2着しているように、こちらも中距離をターゲットに据えたところで無理筋とは言えない。秋は天皇賞(G1、東京・芝2000メートル)を選択しても面白いだろう。

 3着のサリオスは、2歳チャンピオンになり、皐月賞(G1、中山・芝2000メートル)と日本ダービー(G1、東京・芝2400メートル)を連続2着とした能力の高さを久々に発揮した。馬体重は前走比−22キロで、グッと絞り込まれたことで走りにシャープさが戻った印象で、馬場状態が渋らなければ軽視は禁物だ。

 1番人気のイルーシヴパンサーは、8着に敗れたものの、上がり3ハロンは32秒6という最速タイムを記録しており、走破タイムも勝ち馬と0秒2しか差がない。敗因は“G1の壁”というよりも、スローペースのなかでの位置取り、コース取りのロスに求めるのが妥当だろう。流れに左右されるところはあるものの、これからも注視すべき馬であることに変わりはない。

文●三好達彦

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