NBAファイナルはここまで3試合を終えて、ボストン・セルティックスが2勝1敗とリードしている。

 第3戦はセルティックスが終盤に地力を発揮したが、この試合からボストンに場所を移したことも彼らには大きな力となったようで、11得点、8リバウンド、6アシストを記録したアル・ホーフォードは試合後、「ファンのエネルギーが伝播したんだ。あの雰囲気を見た瞬間、“ああ、今夜は違う夜になるぞ”と思ったよ」とホームコートの恩恵を語っている。

 過去のファイナルのデータによると、最初の2試合で1−1とイーブンになったのは今回が40回目で、これまでの39回では、3戦目を制したチームが32回優勝を遂げているという。勝率にして、82.1%だ。

 また、最初の3試合を終えた時点で2勝をあげた側が最終的に頂点に立ったケースも、61回のうち49回と、こちらも率にすると80.3%と高い数値が出ている。

 統計通りにいくなら、優勝の確率が高いのは現時点でリードしているセルティックスということになるが、「(優勝は)7戦までもつれ込んでウォリアーズ」と予想するのは、サンアントニオ・スパーズで過去4回(2003、05、07、14)の優勝経験を誇り、07年にはファイナルMVPにも輝いたトニー・パーカーだ。
  現在は母国フランスのプロクラブ、アスベルの会長を務める彼が、アメリカの『USA TODAY紙』に語ったファイナルの思い出の中で、最後に勝敗を分ける要因として“経験値”を挙げた。

 セルティックス側にファイナル経験者が1人もいないことはすでに話題となっているが、マイアミ・ヒートに敗れた2013年も含め、ファイナルを5回体験しているパーカーも、「やはり経験は大きな要素となると思う」と語っている。

「ボストンはものすごく良いチームだし、素晴らしいディフェンス力を持っているのは明らかだ。でもゴールデンステイトは、優勝を成し遂げるための方法を見つけてそれを実現すると思う。なぜならファイナルという場こそ、経験が大きな役割を果たすから。それにゴールデンステイトは2018年以来優勝していないから、彼らも相当ハングリーだろうからね」

 実際、最終戦でヒートに敗れて優勝を逃した2013年の経験があったからこそ、修正箇所をあぶりだし、よりハングリー精神も増し、スパーズは翌年のファイナルに優勝できたと、パーカーは振り返っている。

 パーカーは、現ウォリアーズの中核であるステフィン・カリーとクレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンのトリオが初めて出場した2013年のプレーオフで彼らと対戦している。グリーンのルーキーイヤーだったその年、パーカーのスパーズはカンファレンス準決勝でウォリアーズと激突。スパーズが4勝2敗で勝利したが、この時パーカーは「このチームはこの先長い間、覇権をキープできる存在になる」と確信したという。
 「ステフとクレイにはほとほと手を焼いたから、シリーズが終わって本当にほっとしたんだ」とパーカーは振り返っているが、その予想通り、4年後の17年カンファレンス決勝では4勝0敗でウォリアーズが圧勝と、立場は逆転していた。

 パーカーは負傷でこのシリーズには出場していないが、カリー、トンプソン、グリーンにケビン・デュラントまでいた当時のウォリアーズの強さは圧倒的で、ウエストを無敗で勝ち上がると、ファイナルでもクリーブランド・キャバリアーズを4勝1敗で破って優勝。翌年もスパーズは1回戦で彼らに敗れ、バトンを渡すかのようにウエストの覇権はウォリアーズのものとなった。

 パーカーはまた、奇しくもウォリアーズとセルティックスの両ヘッドコーチ(スティーブ・カー、イーメイ・ユドカ)とも、スパーズ時代に共闘している。

 2人ともグレッグ・ポポビッチHCの教え子であり、パーカーによれば、ウォリアーズの指揮官となった時、カーはスパーズを手本にチームを構築していたのだという。

 身を持って成長を目の当たりにしたカリー、トンプソン、グリーンのトリオ、そして3度タイトルを獲得しているカーHC。彼らの総合的な経験値が、最終的にはセルティックスの勢いを上回ると、パーカーは予想している。
  その一方で、カンファレンス準決勝と決勝の両方で、それぞれミルウォーキー・バックス、マイアミ・ヒートと7戦を戦ったセルティックスに関して囁かれる“疲労問題”については、パーカーは自身の経験から否定した。

「それは大丈夫だ。もうこの段階になると、疲れていることなんて忘れてしまうんだ。特に若い彼らにとっては、ファイナルを戦っていること自体がとてもいい経験だからね。しかもファイナル期間中は休みが多くて、2〜3日開くから連戦でもない。だから疲労がボストンに影響することはないと思う」

 ファイナル中は“スーパーハイ”状態になり、しかもレギュラーシーズンで連戦に慣れている選手にとっては、ポストシーズンのほうが体力的には楽、ということらしい。

 両チームとも、3月末の試合を最後に連敗を喫していない。それは敗戦後に立て直す術を心得ているということだ。一時は逆転するも終盤に失速し、16点差で敗れた3戦目を振り返ってグリーンは、「ホームの観衆の前で相手を調子づけてしまうと、厳しい展開になる」と自戒していた。

 第4戦は同じ轍を踏むことのないよう、ウォリアーズも必ず修正してくるだろう。ファンからすれば、いっそうスリルが増すような長引くシリーズを見たいもの。創設75周年の記念シーズンを飾るにふさわしい、熱戦が続くことを期待したい。

文●小川由紀子