プロ野球は開幕から約3か月が経過。各チームの戦力図や新戦力の出来もだいぶ見え始めている。今季の新外国人はメジャーで実績ある選手も多く来日したが、むしろ“無名”の男が話題を集めている。巨人のアダム・ウォーカーだ。

 巨人が今季の目玉として獲得したメジャーの元有望株だったグレゴリー・ポランコに比べ、ウォーカーはメジャー経験なしの独立リーガー。年俸も3400万円と格安だった。しかし、期待値は高くなかったものの、23日の試合を終えてチーム1位&リーグ6位の打率.299、15本塁打と予想外の大活躍。しかも大事な場面での一打が多く、その愛くるしい笑顔を含めて人気もうなぎ上りなのである。

 もっとも、来日当初にウォーカーが注目されたのは、打撃ではなくレフト守備だった。打球の追い方がとにかくたどたどしく、ホームに投げ返そうとしたかと思えば、送球はホームどころか内野にも届かず転々。この“弱肩”は相手チームに早々に狙われ、鈍足の選手でもレフト方向へ打球が飛べば、積極的に先の塁に向かって走っていた。

 では、本当にウォーカーの守備は“ひどい”のだろうか。今季レフトを守った100イニング以上の選手27人のうち、補殺数や走者の進塁抑止なども評価した送球貢献を示す「ARM」において、ウォーカーは納得(?)の最下位で−3.4と大きなマイナスを計上している。加えて、同じポジションの選手と比較して守備でどれだけ失点を阻止したかを示す「UZR」も、ワースト2位の−5.0とやはり苦しんでいると分かる。
  ここで「あれ?」と思った方もいるのではないだろうか。“あの”ウォーカーよりも、レフト守備で貢献できていない選手がいるのである。しかもそれが、4年連続&通算9回もゴールデン・グラブ賞を受賞している大島洋平(中日)と聞けば、さらに驚く人も多いのではないだろうか。

 これまでドラゴンズの絶対的センターとして、数々の好守を生み出してきた大島。しかし、立浪和義新監督は、この名手をレフトで起用する新機軸を打ち出した。実際、この配置転換は理にかなってはいた。

 2018年までは名手にふさわしいUZRを記録していた大島だが、2019年に−11.7と大きく下降すると、以降は3年連続でマイナスを推移。今季もセンターで254.0イニング出場いているが、UZR−6.4と改善の傾向が見えていない。センターは外野3ポジションの中で最も運動能力が求められる守備位置である。現在36歳のベテランも迫りくる“老化”に抗えなくなっているのは数字上からも明らかだったのだ。
【動画】まだまだスピードは健在! 大島洋平が通算250盗塁に到達 その点、レフトは守備の難易度がぐっと下がる。また、このポジションにはいわゆる守備が得意な選手は少ないため、他のポジションでマイナスだった選手でも、相対評価で違いを作りやすくもなる。おそらく、立浪監督もそうした期待を寄せていたはずだ。

 しかし、あの大島がレフトというポジションでUZR−5.3と大きくマイナスに落ち込むとは完全なる誤算だっただろう。しかも、ウォーカーや佐野恵太(DeNA/−4.3)、ロハス・ジュニア(阪神/−2.0)といった、お世辞にも守備がうまくない選手たちよりもUZRが下、両リーグワーストにとどまることも、決して予想できなかったはずだ。

 UZRは先に挙げたARMの他に守備範囲を示す「RngR」、失策抑止による貢献「ErrR」
などが構成要素になっている。“全盛期”の大島もARMでの貢献は平均レベルだったが、打球判断の良さやスピードで広範囲をカバーし、RngRで大きなプラスを生み出していた。ところが、守備の責任範囲が狭くなったレフトにあってRngRが−3.4と、レンジ面でも後れを取ってしまっている。
【動画】まだまだスピードは健在! 大島洋平が通算250盗塁に到達
  センター守備の下降は年齢面のファクターも大きいと思われるが、レフトでのパフォーマンスの低下は、4月27日の阪神戦で右ヒザに食らった死球が影響しているのかもしれない。「焦らず完全に治したい」として約1か月後に復帰したものの、守備では以前のスピード感は薄れ、肩の弱さから相手に先の塁へ進まれているシーンも散見される。

 問題は、本当に故障が原因なのか、ということだ。もしヒザを痛めた影響で精彩を欠いているのであれば、それこそしっかり治れば以前のような大島を見られる可能性が高い。しかし、これが年齢面による“劣化”だとしたら、来年以降に大きな不安を残す。

 幸い、打率.297とバッティング面ではさすがの実力を発揮しており、まだまだレギュラー以上の存在として大島がドラゴンズに必要不可欠なのは間違いない。しかし、以前よりも総合的な貢献度が減少しているという事実は看過できないはずだ。

構成●THE DIGEST編集部
データ提供●DELTA
【DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。
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