リーグ最高級のビッグマン、ジョエル・エンビードを擁するフィラデルフィア・セブンティシクサーズは、昨季途中にブルックリン・ネッツからジェームズ・ハーデンを加え超強力デュオを形成。頂点を目指してプレーオフへ臨んだが、マイアミ・ヒートとのカンファレンス・セミファイナルで敗れてシーズンを終えた。

 このシリーズでは、開幕前にエンビードが右眼窩骨折と軽度の脳震盪によって最初の2試合を欠場。第3戦から復帰した大黒柱の奮戦もあり、2勝2敗のタイへ持ち込むも、第5戦から2連敗を喫した。シクサーズは過去5シーズンのうち4度目のイースト準決勝敗退と、今年も壁を超えることができなかった。

 シーズン終了後、バスケットボール運営部代表のダリル・モーリーは、ドック・リバースHC(ヘッドコーチ)の続投を明言。現状体制を維持して戦っていく方針を打ち出していた。

 現地時間6月30日に幕を開けたフリーエージェント(FA)戦線で、シクサーズはPJ・タッカーと3年約3320万ドル(約44億8200万円)、ダヌエル・ハウスJr.と2年850万ドル(約11億4750万円)、トレベリン・クイーンと2年330万ドル(約4億4550万円)で契約合意。
  さらにダニー・グリーン、今年のドラフト1巡目23位で指名したデイビッド・ロビーを放出し、メンフィス・グリズリーズからディアンソニー・メルトンの獲得にも成功した。

 来季契約(プレーヤーオプション)を破棄して完全FAとなったハーデンとは引き続き交渉を進めており、複数年契約を結ぶ意向だと『ESPN』などが報じているため、総合的に戦力アップして来季を迎えられると言っていいだろう。

 タッカーは即戦力のベテランで、3ポイントとディフェンスに秀でた3&Dとして計算でき、ハウスJr.とともにヒューストン・ロケッツ時代にハーデンとプレーした経験を持つ。

 昨季ロケッツで10試合に出場して平均4.3点を残したクイーンは、ロケッツ傘下のGリーグチーム(リオグランデバレー・バイパーズ)で平均25.3点、6.7リバウンド、5.2アシスト、3.2スティールをあげてMVP、オールGリーグ1stチーム、オールGリーグディフェンシブチームに選ばれた25歳。優勝にも貢献してファイナルMVPにも輝いている。
  24歳のメルトンは昨季リーグ2位の56勝26敗(勝率68.3%)を記録したグリズリーズで73試合に出場し、平均22.7分、10.8点、4.5リバウンド、2.7アシスト、1.4スティールをマーク。タイリース・マキシー、シェイク・ミルトンというスコアリングガードがいながら、得点力のあるメルトンとクイーンを加えたことは、ハーデンがスコアラーからプレーメーカーとしての色を強めたことをフロントが理解した証なのかもしれない。

 あとはエンビードの控えを務められるビッグマンを補強できれば、来季のロースターはほぼ完成する。

 5日に地元メディア『The Philadelphia Inquirer』とのインタビューに応じたメルトンは、自身の役割についてこう話していた。

「チームが求めているのは、イージーショットをクリエイトすることだと感じている。僕はこれまでも積極的にショットを放ってきたし、それをやっていく準備はできているよ。ドリブルをしすぎることもないからね」
  メルトンはショットの波こそあるものの、好調時は軽々と20点以上を叩き出すことができるだけに、昨季ベンチ得点でリーグ28位(平均27.2点)に終わったシクサーズで起爆剤となれるかもしれない。

「獰猛な男になる準備は整っている。僕はこの街で受け入れられて、彼ら(チームメイトたちやファン)から喜ばれると思う」と、メルトンは新天地での活躍に自信を見せる。

 トバイアス・ハリスやマティス・サイブルにトレードの噂があり、開幕までにまだ動きがあるかもしれないシクサーズだが、ここまでのFA戦線は順調と言っていい。ハーデンとの再契約が決まれば、再びイースタン・カンファレンス上位の戦力を有して来季に臨めるだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)