プロ野球は前半戦が終了。大記録が飛び交った2022年前半戦だが、期待を裏切ってしまった選手もいる。今回は後半戦の巻き返しが期待できるセ・リーグの3選手をピックアップした。

●上茶谷大河(DeNA)
10登板 50.2イニング 2勝6敗 防御率5.15

 上茶谷は2勝6敗、防御率5.15で前半戦を終えた。防御率7.15でシーズンを終えた前年に引き続き不調と見る向きもあるかもしれない。しかしよくよくデータを眺めると、失点増加は単に調子が悪いことが原因ではないことが分かってくる。

 注目したいのが「LOB%」という指標だ。LOB%とは投手が出した走者を還さなかった割合を表す。この指標は平均が75%前後となるが、今季の上茶谷は54.5%。他の投手に比べ、出した走者を多く生還させてしまっていたようだ。ただ、この指標は投手の力量とは関係なく上下動しやすい指標として知られている。つまり、上茶谷が多く走者を還しているのは運の要素も大きいということだ。

 実際、投球内容を見ると、今季の上茶谷は好成績を残したルーキーイヤーの2019年と遜色ない。守備や運の影響を受けやすい防御率ではなく、投手の実力が反映されやすい指標を見るとよく分かる。

 奪三振割合(奪三振/打者)は19年の17.5%に対し今季は18.3%、与四球割合(与四球/打者)は19年の8.7%に対し今季は5.6%。むしろ投球内容は1年目よりも良くなっていて、後半戦は「運」が揺れ戻してくれば、成績を持ち直す可能性は高い。
 ●カイル・ケラー(阪神)
13登板 12イニング 0勝2敗1H 防御率4.50

 もう1人投手で紹介したいのが、阪神の新外国人投手ケラーだ。初登板から2戦連続でセーブシチュエーションから逆転負けを許す背信投球もあって、ここまでは防御率4.50と結果を残せていないように見える。しかし、6月に再昇格した後は素晴らしい投球を続けている。とりわけ注目したいのは奪三振と与四球だ。
   被安打の発生は野手の守備や運など、投手にはコントロールできない部分が大きく作用する。一方、三振と四球にはそうしたノイズがほとんど入らず、投手の実力がそのまま反映されやすい。果たして、ケラーのK%(奪三振/対戦打者)は46.9%、BB%(与四球/対戦打者)は4.1%。NPB平均はそれぞれ20%弱、10%前後で、平均的な投手の倍以上のペースで三振を奪い、半分以下に四球を抑えていることになる。

 そして実はこの数字、デニス・サファテ(ソフトバンク)がMVPに輝いた2017年の成績に酷似しているのだ。

 この年、サファテは、K%が42.9%、BB%が4.2%と圧倒的な数値を記録し、防御率は1.02とまさに難攻不落の存在だった。ケラーが今後も現状のペースを維持できれば、CS出場へ向けて大きな追い風となるだろう。
 ●京田陽太(中日)
140打席 打率.176 3本塁打 8打点 OPS.558

 打者では中日の京田陽太に注目したい。プロ1年目からドラゴンズの正遊撃手を務めてきた京田だが、今季は攻守に精彩を欠き、5月5日に二軍降格。6月18日に昇格し、いきなり2試合連続マルチ安打を記録したが、その後は再び低空飛行が続き、7月11日再度二軍へ落された。

 だが、京田の打撃に例年から特別な変化が起こっているわけではない。三振や空振りの割合も例年と同じ。にもかかわらず成績を落としているのは、インプレー打球の結果による部分が大きい。インプレー打球がどれだけ安打になったかを表す「BABIP(Batting Average on Balls In Play)」という指標がある。この指標はリーグ平均値が.300程度となるが、京田の前半戦の値は.188でリーグ平均を大きく下回っている。

 だが、BABIPは極端に高い・低い打者は、打席数が増えるごとに平均値に近づいていくことでも知られている。京田の.188という値は極端に低い値であるため、今後は持ち直す見込みが大きい。もっとも、京田の場合はまず首脳陣からの信頼を再び取り戻し、出場機会を勝ち取っていかなければならないが。

※データは前半戦終了時点

文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

文●DELTA(@Deltagraphs/https://deltagraphs.co.jp/)
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社刊)が4月6日に発売。

【関連記事】「勝ち星=投手の実力」にあらず。勝利による評価の“限界”とは?【野球の“常識”を疑え!第1回】

【関連記事】【2022ドラフト候補ランキング|1〜10位】トップ2は矢澤&蛭間で変わらず。日本文理・田中も“二刀流”に可能性を秘める<SLUGGER>

【関連記事】実力以外の要素に大きく左右される打点の欠陥。“打撃三冠”で評価する時代は終わった?【野球の“常識”を疑え!第2回】<SLUGGER>