今夏のNBAは、ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)のトレード要求、ユタ・ジャズがエーススコアラーのドノバン・ミッチェル放出を模索中と、2人のスターの動向に注目が集まっている。

 彼らの移籍先候補に挙がっているひとつがマイアミ・ヒート。2020年にイースタン・カンファレンスを制してNBAファイナル進出を果たし、昨季も第7戦の末にイースト決勝で敗れた強豪であり、現有戦力でも優勝を狙えるチームだ。

 このヒートで“最も価値が高い”トレード要員と評されているのがバム・アデバヨ。ここ3シーズン連続でオールディフェンシブ2ndチームに選出され、最優秀守備選手賞(DPOY)の投票でも3シーズン連続でトップ5入りした実力者である。

 昨季平均19.1点、10.1リバウンド、3.4アシスト、1.4スティール、フィールドゴール成功率55.7%をマークした206cm・115kgのビッグマンは、トレードトークの渦中にいることについて、その胸中を告白。現地時間7月22日(日本時間23日、日付は以下同)に地元メディア『SOUTH FLORIDA SUN-SENTINEL』へ「それが現実ってこと。僕は自分でコントロールできることをしていく。もちろん、それは何かをする機会ではあるけど、僕としてはコントロールできることじゃない」と話していた。
  昨夏アメリカ代表として東京オリンピックへ出場し、金メダルを手にした25歳の真骨頂はやはりディフェンス。「僕は(DPOYを)ここ2年間で勝ち取っているべきなんだ。そして今シーズンは僕が手にすることになるだろうね」と自身の目標を掲げていた。

 今年4月。ヒートのエリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)は、アデバヨへ最大級の賛辞を送っていた。

「我々の試合をひとつでも観てほしい。このチームにはディフェンシブなシステムがあり、それが彼のタフネスと万能性を基に成り立っているとわかるはずだ。

 彼は本当に1番(ポイントガード)から5番(センター)までガードしてしまう。450選手(30チーム×本契約の15選手)のうち、すべてのポジションでボールマンとやり合える選手なんて片手でしか数えられないはずだ。そして彼はその限られたリストの中でも上位にいる。実にユニークな選手だよ」
  ヒートにはジミー・バトラーやカイル・ラウリー、タイラー・ヒーロー、ヴィクター・オラディポといった好選手たちがいるのだが、昨季リーグ5位のディフェンシブ・レーティング(109.1)を残した堅守を誇るチームでディフェンシブアンカーを務めるアデバヨは、スタッツ以上に大きな存在と言っていい。

 そのアデバヨは2017年のドラフト1巡目14位でヒートから指名され、在籍5シーズン目を終えたばかり。1年目からローテーション入り、2年目の後半から先発センターへ定着すると、2020年にはオールスターにも選ばれるなど、リーグ屈指のディフェンス力を誇る多才なビッグマンだ。

 チームへの愛着もあることから、アデバヨは31日に『The Miami Herald』の取材に対し、ずっとヒートでプレーしたいという思いを口にしていた。
 「もしできるなら、もちろんそうしたい。僕のキャリアはここまでこのコミュニティにいることができている。ドラフト14位でこの球団に入り、今ではこの組織の基盤になることができているんだから」

 ヒートにはバトラーというリーダーシップを発揮する闘将がおり、チーム内でアンタッチャブルな位置づけにいる。

 ただ、それはアデバヨにも言えることで、攻守両面でここまでオールラウンドなビッグマンはリーグでもそう多くない。もしデュラントかミッチェルを獲得するためにアデバヨを手放してしまえば、ヒートは特にディフェンス面で大幅な戦術変更が必須となるだけに、慎重な判断が求められるだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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