球界最高の天才プレーヤーにまた一つ、いや数々の称号が一日で加わった。

 ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平は現地時間8月9日、敵地で行なわれたオークランド・アスレティックス戦に「2番・投手」で先発出場すると、投げては6回無失点で今季10勝目をマーク、打っては7回に今季25号となるソロ本塁打を叩き込む“リアル二刀流”で躍動した。

 前半戦で自己最多タイの9勝目を挙げ、「2桁勝利&2桁本塁打」の偉業が確実視されていたものの、そこからまさかの3連敗。チームも主力をトレードで放出するなか、大谷自身のモチベーションもなかなか上がらない状況が続いていたが、前回登板でやられた相手にリベンジを果たした。

 決して本調子には見えなかった。だが、この日も全91球中36球でスライダーを多投するなど、何と変化球が全体の69.2%を占めた。相手の狙いをかわすピッチングで6回までゼロを並べると、直後の7回にはインコースの難しい球を右翼席に運ぶ見事なバッティングを披露。「二刀流」としての存在感を遺憾なく発揮した。そして、この日は“大谷しか”達成できなかった数々の記録を達成している。その偉業を振り返ってみよう。
 ●“野球の神様”以来104年ぶりの2ケタ勝利&2ケタ本塁打

 日本時代から大谷がずっと比較されてきた“野球の神様”ベーブ・ルース。彼が1918年に達成して以降、前人未到の領域だった「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」にとうとう足を踏み入れた。大谷自身は試合後、「いいピッチングをしていれば必ずチャンスはあると思っていた」と語るように、本人からすればあくまで“通過点”に過ぎないということか。

●超ハイペースでイチロー超えの118号

 8月5日のアスレティックス戦で2本塁打を放ち、メジャー通算117号に到達。大谷自身も憧れているイチローのメジャー通算本塁打数に肩を並べた。同じく天才のイチローがメジャー19年間/9934打数かかった本数に、大谷は5年/1799打数で達した。そして、この日の7回に118号を放って“イチロー超え”を果たし、本塁打数は日本人メジャーリーガー単独歴代2位に浮上した。1位の松井秀喜まで57本。何事もなければ2年後には抜き去っていそうだ。●日米通算1000奪三振
 
 3回先頭のジョナ・ブライドを伝家の宝刀スプリッターで空振り三振に仕留め、大谷は日米通算1000奪三振(日本ハムで624個、メジャーでは376個)に到達した。メジャーでの球種別内訳は、スプリッターの168個を最多として112個がスライダー、69個が4シーム、24個がカーブとなっている。

●ア・リーグ50年ぶりの6回無失点&自援護弾

 上記の3つの記録が“積み上げ”系の記録となったが、こちらは試合単独で達成したもの。ア・リーグの投手が6回を無失点に抑えながら、自らホームランを放つのは1972年8月9日のデーブ・マクナリー以来、実に50年ぶりの快挙だった。

 感覚がマヒして「意外に普通の記録じゃない?」と思う方もいるかもしれないが、ア・リーグは1973年から指名打者制を採用しており、投手が打席に立つこと自体がほとんどなかった。大谷が二刀流だからこそ掘り起こせた記録と言えるだろう。
  大谷の魅力は何か。日本人離れした打撃、華やかな投球、颯爽とした走塁、少年の心を忘れない笑顔……挙げればキリがないが、「記録としての野球」の価値を感じさせてくれるということもあるだろう。大谷がその活躍によって初めて球史に名を刻んだものもあれば、過去に達成していた選手を現代に蘇らせてくれる。

 我々は大谷という存在を通して、綿々と続く野球の歴史の深さを感じることができる。大谷がいなかったら、「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」という記録に目が向けられることもなかったはずだ。この日、大谷が改めて証明したのは、二刀流としての実力だけでなく、歴史の伝道者たる姿でもあった。

構成●SLUGGER編集部
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