何度耳にしたのか分からない校歌はこの夏、3回“しか”流れなかった。

 第104回全国高校野球選手権大会は8月18日、準々決勝が行なわれ、第3試合は下関国際が大阪桐蔭を5対4で破ってベスト4進出を決めた。3度目の春夏連覇を目指した王者・大阪桐蔭は8回までリードしていたなか、9回に2点を勝ち越されての敗戦に、選手たちも茫然自失とするしかなかった。

 しかし試合全体を通して、決して大阪桐蔭のゲームではなかった。

 初回の攻撃、名門はいきなり牙をむく。先頭の伊藤櫂人が9球粘って四球で出塁すると、プロ注目の大型捕手・松尾汐恩が先制の二塁打を放ち、4番の丸山一喜も続いて2点を奪う。しかし、下関国際打線も3回に1点を返すと5回に同点。流れが傾きつつあるかと思いきや、その裏にまさかの落球で大阪桐蔭に1点をリードされてしまう。

 これで王者は盤石……と思われたが、6回表、2死から下関国際が粘って1点を返し、それでもすかさず大阪桐蔭が1点リード。さらに2死ながら満塁のチャンスを作り、“いつもの”大阪桐蔭であればここでダメ押し点を奪えただろうが、4番・丸山は空振り三振に終わる。

 さらに7回裏、相手のミスもあって無死一、二塁の場面を作り、7番・大前圭右が手堅く送りバントをしたが、これが中途半端なフライに。飛び出したランナーは二人とも帰塁できず、大会史上9度目のトリプルプレーでまたも追加点を奪えなかった。

【動画】勝負を分けたトリプルプレー! 大会9度目の“珍事”をチェック
  嫌な流れのなかでも、5回からマウンドに上がった2年生左腕・前田悠伍は8回表の下関国際の攻撃を2三振含む三者凡退でゼロに抑えて流れを渡さない。その裏、大阪桐蔭は1死二、三塁とダメ押しのチャンスを作って試合を決めにいったが、2番・谷口勇人、3番・松尾が連続三振。どうしても1点が加えられない。

 こうなれば流れは下関国際にわたってしまう。先頭の赤瀬健心が出塁すると、連打が続いて、4番・賀谷勇斗がセンター前に勝ち越し2点タイムリー。好機を逃し続けた大阪桐蔭はその裏、あっけなく三者凡退に終わって春夏連覇の夢は潰えることになった。

 どうしてもフォーカスされるのは7回のトリプルプレーだろう。あの名門が喫したのも驚きの上に、守る下関国際の冷静な判断も見事だった。しかし試合後、大阪桐蔭の西谷浩一監督も「なかなかうまくいかなかった」と振り返ったように、この日の王者は“らしからぬ”ミスが多かった。

 2点を先制した初回、1死一、三塁とさらにリードを広げられそうな場面で、5番・海老根優大が盗塁死。2回も先頭打者が出塁したがバント失敗。さらに併殺打で無得点に終わった。そして7回はトリプルプレー。大阪桐蔭は自らのミスでアウトを何度も献上する形になってしまった。

 準々決勝の前日、西谷監督は「(下関国際は)守りも攻撃もしぶとくやられるチーム。お互い粘り合いのゲームになるんじゃないか」と話していたが、結果として自分たちが粘り切れず、昨年の神宮大会、今春のセンバツから続く“3連覇”は幻に終わってしまった。

構成●THE DIGEST編集部