稲見萌寧にとってプロ入り後100試合目のトーナメント出場となった今年の『ニトリレディス』。開催コースがツアーでもトップクラスの難易度を誇る小樽カントリー俱楽部だっただけに、今年も激戦が繰り広げられたが、見事逆転勝利を収め、大会2連覇を飾った。

 今季は昨年からの腰痛や左手首痛に悩まされたことで、『ニトリレディス』が約3か月ぶりに挙げた2勝目だったが、気がつけばメルセデスランキングも3位に上がり、首位の山下美夢有、2位の西郷真央との差もわずかに迫っている。昨シーズンと比べれば、決して万全な状態ではないにもかかわらず、なぜ安定した成績を残せているのだろうか。

 稲見の武器はなんといってもその高いショット力にある。パーオン率に関しては19年から2シーズン連続で1位となり、今季も現在1位の指定席に座り続けている。しかも75・4986%と高い数字だけに驚きだ。

 ただ、今回はボールストライキングに注目したい。これはトータルドライビングの順位とパーオン率の順位を合算したものを順位づけたもので、トータルドライビングとは、ドライビングディスタンスの順位とフェアウエイキープ率の順位を合算したものになる。つまり、ボールストライキングで上位に来る選手はドライバーを握れば飛んで曲がらず、アイアンショットは正確にグリーンを捉えていることの証明でもあるのだ。まさにショット力を見るバロメーターであり、稲見は昨シーズンに初めて1位となったが、今季もここまで1位をキープしている。
  平均パット数(1ラウンドあたり)が昨シーズンの19位から今季は39位にまで落としているのに、平均ストロークでは昨シーズンに続き、今季も1位をキープしているのは、ショット力が衰えていないからだろう。ただ、稲見本人によれば、現在は決してベストな状態ではないという。「私のMAXが80くらいだとしたら、現在は60くらいですね」と分析するのだ。

 腰痛や左手首痛もあり、今季は昨年までのような何時間も練習に没頭するスケジュールを組んではおらず、ある意味だましながらやっている部分もある。今季は追い上げるものの、あと一歩届かなかった試合も少なくないが、MAXの状態まで調子を上げることができなかったことがその要因の一つなのかもしれない。
  とはいえ、それでもメルセデスランキングで上位にいるのは、棄権が2試合あるものの、全25試合にエントリーし、トップテン回数が15試合(1位)と安定しているからだ。確実にポイントを稼いできたことが結果として表われている。ただ、それも昨シーズン9勝を挙げて賞金女王に輝き、東京五輪でも銀メダルを獲得するなど、いろんな経験をしてきたことで、ゴルフ自体が確実に上手くなっていることに起因する。

『ニトリレディス』の最終日も、後半のハーフに入って4人がトップに並ぶ混戦だったが、他の3人がスコアを落としていくなか、稲見はしっかりとパーセーブを続け、1打も伸ばすことなく優勝カップを手にした。難ホールをパーセーブできる高い技術があってのことだが、改めて試合巧者を印象づけた。
  今後は『日本女子プロゴルフ選手権』や『日本女子オープンゴルフ選手権』、『JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ』など、ポイントの高い試合が残っており、メルセデスランキングの争いもどうなるか分からない状況だ。しかし、『ニトリレディス』で難コースを制して得た自信は大きく、さらに体の故障をカバーする高いショット力とマネジメント力があれば、稲見が同ランキングで1位に躍り出るのも時間の問題ではないか。

 心配なのは無理をしての故障だが、本人も体のケアを念入りに行なったり、痛みを感じたら棄権するなど、ケガに対してはかなり慎重になっているだけに、このまま無事にシーズンを終える可能性は高いだろう。

文●山西英希 
著者プロフィール/平成元年、出版社に入社し、ゴルフ雑誌編集部所属となる。主にレッスン、観戦記などのトーナメントの取材を担当。2000年に独立し、米PGAツアー、07年から再び国内男子、女子ツアーを中心に取材する。現在はゴルフ雑誌、ネットを中心に寄稿する。

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