ニューヨーク・ヤンキースの怪物スラッガーが凄みを増している。アーロン・ジャッジだ。

 現在30歳の長距離砲は、目下、本塁打を量産するペースが歴史的な高水準に達している。8月までに51ホーマーをマークしたジャッジは、ア・リーグのタイトルレースでも2位ヨーダン・アルバレス(ヒューストン・アストロズ)に20本差をつけて断トツトップに君臨。もはやホームランキングの地位は堅いと言っていい。

 ここまでの圧倒的な活躍を見せれば、ア・リーグMVPに推挙されるのは、もはや当然。ライバルには、昨季に続いて二刀流で異彩を放つ大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)が挙げられているが、ジャッジの“人気ぶり”は偉才にも劣らない。

 米メディアや現地記者たちの多くが、ジャッジをMVPとする理由に挙げるのが、やはり本塁打数の圧倒的多さだ。今のペースで行けば、シーズン63本。それはロジャー・マリスが1961年に残したア・リーグ記録(61本)を破る本数になる。

 もっとも、メジャー全体で見た場合、マリスの記録は全体7位。1位のバリー・ボンズ(2001年)が残した記録とは12本差もある。にもかかわらず、なぜ元ヤンキースのレジェンドが残した記録が、大谷の二刀流と並び称されるほどに重要視されるのか。それは米球界の悪しき記憶に関係している。
  というのも、マリスの本数を超えたマーク・マグワイア、サミー・ソーサ、そしてボンズは、のちにドーピング検査で禁止薬物の陽性反応が検出されたからだ。つまり、現役時代にステロイドなどを使用していないマリスの61本こそ何にも汚されない“真の記録”というわけである。

 ちなみに、ヤンキースの地元紙『New York Post』の名物記者ジョン・ヘイマンは、それについて興味深い意見を提示している。

「我々は心の中で、マリスの記録が真実であることを知っている。だからジャッジが63本塁打ペースを保ち、ヤンキースとアメリカン・リーグのホームラン王となれば、本物のメジャーリーグ王者となる。

 ボンズ、マグワイア、ソーサは自身の身体をホームランマシンに変身させた。その頃の彼らが残した数字は蜃気楼のようなものだ。歴史は何が本当の正義なのかを教えてくれる。少なくとも3人の有名な詐欺師が作った偽りの“記録”ではない」

 ここまで強調されるマリスの大記録。仮にこれを破れば、大谷と繰り広げているMVPレースにおいては、ジャッジがより優位と見られていきそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

【関連記事】白熱するMVPレース論争! 「当然の選択」であるジャッジと「当たり前と思ってはいけない」大谷翔平を推す声は二分

【関連記事】「99.99%、ジャッジだ!」米記者はMVPレースのほぼ終焉を宣言。大谷翔平を推さない理由はやっぱり本塁打に?

【関連記事】神様ルースに続いたジャッジの“歴史的一発”は「オオタニに台無しにされた」。NY紙が大谷翔平の特大弾に落胆