現地時間8月28日、レッドソックスの澤村拓一がDFAとなった。

 これを日本では「事実上の戦力外」と報じたメディアが多かったが、澤村は31日になり、3Aウースターへの降格が発表された。「戦力外」なのに、なぜ彼がレッドソックスの組織内に残留できたのか。おそらく首をかしげたファンもいるだろう。そこで、DFAの複雑な仕組みを改めて説明しよう。

 DFAは「Designated For Assignment」の略で、具体的には「選手を40人ロースターから外す手続き」を意味する。40人ロースターは、日本で言えば「支配下登録枠」のようなもので、MLBの試合に出場するためには40人ロースターに入っていなければならない。球団はこの40人から、メジャーの試合に出場できる26人を選び(26人ロースター。一軍登録のようなもの)、残りの選手をマイナーに配属する。

 40人枠外の若手有望株をメジャーに昇格させたい場合や、トレードで他球団から新たに選手を獲得した場合は、40人枠の誰かと入れ替える必要がある。この時、DFAとなって40人枠から外された選手はメジャーの試合に出場できなくなるため、日本では「事実上の戦力外」という表現が使われている。
  複雑なのはここからだ。球団はDFAにした選手を7日以内にトレードに出すか、もしくはウェーバー公示をする。ウェーバーで他球団から獲得の申し込みがあった場合は、いくらかの手数料と引き換えに選手を譲渡しなければならない。どの球団からも声がかからなかった場合、今回の澤村のようにマイナー降格を受け入れる場合もあれば、それを拒否してFAとなる場合もある。

 ここまで長々と説明をしてきたが、DFAになった選手が具体的にどうなるのか、分かりやすく実例を挙げてみよう。大まかに分けて3つのパターンがある。

1:ウェーバー/トレードで他球団へ移籍

 まずひとつは、先ほど述べたようにウェーバーやトレードを経て他球団に移籍する道だ。レッドソックスは澤村と同じ日にリリーフ左腕のオースティン・デービスをDFAとしたが、こちらはウェーバーでツインズへ移籍した。

 デービスのような便利屋リリーフや「一軍半」のユーティリティ・プレーヤーは、DFAで移籍するケースが多い。たとえば、内野全ポジションをこなす台湾出身のチャン・ユーは、今季開幕時点はガーディアンズにいたが、5月末にDFA経由の金銭トレードでパイレーツへ移籍。その1か月後には再びDFAとなって今度はウェーバーでレイズへ移籍。すでに今季だけで3チームに所属している。2:マイナー行きを受け入れて残留
 2つ目が、澤村のようにマイナー行きを受け入れる道だ。そもそも、サービスタイム(メジャー登録日数の合計)3年未満で、過去にDFAで降格した経験のない選手は、基本的にマイナー行きを拒否できない。つまりウェーバー公示を経ても獲得球団が現れなかった時点で、澤村に他の選択肢はなかった。

 昨年の有原航平(レンジャーズ)も同様のケースだ。彼も9月にDFAとなって3Aに降格し、この時も「事実上の戦力外」という表現が使われた。だが、有原はその後もレンジャーズ傘下にとどまり、今季は8月に再昇格を果たして白星も挙げている。
 3:解雇となって退団
 澤村をDFAとした時、レッドソックスは「ウェーバーで他球団に取られるのならそれも仕方ないし、自軍の3Aに置いておくのも悪くない」というスタンスだったはずだ。一方、単純に選手を解雇する際にもDFAの手続きを踏む必要がある。

 昨年5月、エンジェルスは10年2億5400万ドルの超大型契約最終年を迎えていたアルバート・プーホルスをDFAとしたが、これは純粋にプーホルスを戦力外=解雇とするための措置だった。今年5月にメッツがやはりベテラン二塁手ロビンソン・カノーをDFAとしたのも同じで、こういったケースでは「事実上の戦力外」という表現は正しい。ちなみにプーホルスはDFAから7日後の13日に解雇され、17日にドジャースと契約している。

 このように、一口にDFAと言っても、球団側の狙いや選手の「その後」はさまざま。本来は、ケースごとに「事実上の戦力外」なのかどうかを判断する必要があるのだが、最近の日本の報道はDFAとなった選手に、判を押したように「事実の戦力外」という表現を使う。

 プーホルスのような大物ならともかく、澤村のような中堅どころの中継ぎ投手やメジャーとマイナーを行ったり来たりの選手がDFAになった時にも「事実上の」を使うのは必ずしも適切ではないだろう。

構成●SLUGGER編集部