ユーロバスケット2022は9月10日から決勝トーナメントが幕を開け、ウクライナ対ポーランドはポーランド、フィンランド対クロアチアはフィンランドがそれぞれ接戦を制し、ベスト8に駒を進めた。

 そして次の優勝候補のセルビアとギリシャが登場するラスト2戦もまた、ハラハラ、ドキドキの展開となった。

 D組を首位で勝ち抜けたニコラ・ヨキッチ擁するセルビアと、C組4位のイタリアの一戦は、序盤からセルビアのシュートが次々と決まり、あっという間に14点差がついた。しかしイタリアも集中力を切らすことなく、タイトなディフェンスをベースにしたフィジカルなプレーで食い下がる。

 そんななか、思わぬ神風が吹いた。

 感情的の起伏が激しいことで知られる元イタリア代表選手のジャンマルコ・ポチェッコHC(ヘッドコーチ)が、第3クォーター途中に2度のテクニカルファウルで退場処分に。ところが一見逆風かと思われたこの事態がかえって選手たちの士気を高め、その直後にイタリアは逆転。

 この日アウトサイドシュートが絶好調だったイタリアは、第4クォーターにも連続で長距離弾を鎮めてリードを広げる。残り2分半で攻守の支柱であるニコロ・メッリ(元ニューオリンズ・ペリカンズ)がファウルアウトとなるも、94−86で優勝候補最右翼だったセルビアを締め出した。
  6本の3ポイントを決めたマルコ・スピスは、「コーチが退場になった瞬間、僕たちの中に何かほとばしる思いが芽生えた」とコメント。

 ポチェッコHCはコートを去る際、選手1人ひとりへ言葉をかけていたがそれは「私のために勝ってくれ」という熱いメッセージだった。その言葉に賭けて、選手たちは全力を尽くしたと、27歳のポイントガードは明かした。

 ラウンド16 最終戦のギリシャ(C組1位)対チェコ(D組4位)の対戦も、手に汗握る大接戦が繰り広げられた。

 第1クォーターを20−20のイーブンで終えたチェコは、第2クォーターも、終盤にBリーグ横浜ビーコルセアーズ所属のセンター、パトリック・アウダの連続8得点で45−41とリードを奪って前半戦を折り返した。

 試合後トーマス・サトランスキーが語った言葉を借りれば、チェコはヤニス・アデトクンボの周囲に「壁を築く」ようなディフェンスを講じ、前半は4得点に封じ込めた。
  それでも“グリーク・フリーク”は後半に入ると得意のペネトレーションから徐々に加点。チェコも粘りを見せ、残り6分までリードをキープし続けた。しかしその後は相手のタイトなマンツーマンディフェンスにも苦しみ、94―88とギリシャが逆転勝利を収めた。

 両軍最多の33分44秒コートに立ったヤニスは、後半だけで23得点をマーク。世界№.1級の選手をどう扱っているかと聞かれたディミトリス・イトゥディスHCは、「ヤニスは非常に謙虚で、真剣で、この競技に、仲間達に、コーチ陣に自分を捧げる姿勢を持っている。彼のような選手がいるだけで、周りがついていく。彼は常に、仲間や対戦相手や、組織に多大な敬意を抱いている人物だ」と答えた。

 惜しくも敗れたチェコにも、会場中から大きな拍手が贈られた。司令塔サトランスキーは、FIBAがスタッツを集計し始めた1995年のユーロバスケット以来最多の17アシストを記録。5試合で10本以上のアシストを決めた大会史上初の選手となった彼は「仲間たちやコーチ陣を誇りに思う」と清々しい表情で語った。
  NBAとユーロリーグのMVPのヨキッチ擁するセルビア敗退というサプライズはあったが、全試合が接戦となり、いずれも勝ち上がるべくして勝ち上がったチームであることを証明したラウンド16 。奇しくも3試合が94−86、そして最後のギリシャ戦も94−88と、「94」はこの日のラッキーナンバーだったようだ。

 準々決勝は、以下の対戦カードで行なわれる。

9月13日 第1試合:スペイン対フィンランド、第2試合:ドイツ対ギリシャ

9月14日 第1試合:フランス対イタリア、第2試合:スロベニア対ポーランド

文●小川由紀子