9月1日に開幕したユーロバスケット2022は、10日から決勝トーナメントがスタート。13日に行なわれた準々決勝2戦目は、ホスト国ドイツが、ヤニス・アデトクンボ擁する優勝候補の筆頭、ギリシャと対戦した。この好カードに、約1万4000人収容のメルセデスベンツ・アリーナはソールドアウトとなった。

 詰めかけた地元ファンの期待を裏切らない力強い戦いぶりで、ドイツが序盤からリードを奪ったが、ヤニスが得点にアシストにリバウンドにと、あらゆる得点に絡む活躍でギリシャが猛追。

 第2クォーター終了間際には、コスタス・スローカスがハーフライン付近から放ったシュートがネットに吸い込まれ61―57。このミラクルショットでギリシャが流れを掴むと思われた。

 ところが第3クォーター、3ポイントを連発して得点を伸ばしたドイツに対し、イージーバスケットをミスするなど、歯車が狂ったギリシャは10分間でわずか10点(ドイツは26点)にとどまった。

 さらに最終クォーター残り5分、エースのヤニスが2度目のアンスポーツマンライクファウルで退場処分に。一方のドイツも、デニス・シュルーダーが2度のテクニカルファウルで退場と、両チームのトップスコアラーがコートを去る波乱の展開となった。

 ヤニスの離脱はドイツ側にとって確実にプラス要素。最大22点までリードを広げたドイツが107−96 で勝利を手にし、現地時間16日に、スペインと準決勝を戦うこととなった。

 ギリシャのディミトリオス・イトゥディスHC(ヘッドコーチ)は、「今日はドイツの方が良いゲームをした。彼らが勝つにふさわしい」と潔く負けを認め、「しかしここからが始まりだ。この経験から我々は貴重な学びを得る必要がある」と前を向いた。
  もっとも、長年ギリシャ代表を取材し、今回のチームも事前合宿から追っていた同国のカメラマンは、「今回の代表は、どこか噛み合っていなかった」と本音を漏らしていた。

 NBA で2度MVP 受賞歴のある世界的スターのヤニス・アデトクンボがいることで、一部のチームメイトには「自分たちは最強」という驕りが見受けられた。

 また、ヤニスだけ特別なガードマンやフィジオセラピスト、専属カメラマンがつき、ミルウォーキー・バックスのスタッフがコーチスタッフに参入といった特殊な状況に違和感を覚えていたチームメイトもいた(ちなみにヤニスのガードマンは、アメリカのオバマ元大統領のSP を務めていた凄腕だった)。

 今大会のギリシャのロスターはヤニスやタイラー・ドーシー、アメリカで生まれ育った元NBA選手のニック・カレイテスら「アメリカ組」と、「国内組」に2極化されていた。ヤニス自身は非常に謙虚で努力家で、奢るような人物ではないものの、バックスの圧力といった彼を取り巻く環境が、チームに少なからず波風を立てていたそうだ。

 スーパースターを抱えることの難しさが浮き彫りになった形だが、これでNBA の新旧MVP、ニコラ・ヨキッチ(セルビア)とヤニス(ギリシャ)、そしてユーロリーグMVPの ヴァシリエ・ミリッチ(セルビア)と、世界2大リーグのMVPがベスト4入りを果たせずに姿を消すという、予想を裏切る展開となった。

 イタリア対フランス、スロベニア対ポーランドの対戦では、はたしてどんな結果が待ち受けているだろうか。

文●小川由紀子