八村塁が所属するワシントン・ウィザーズは、ここ数日間で3選手(ジョーダン・グッドウィン、クエントン・ジャクソン、デイビオン・ミンツ)と契約を結んだことで、トレーニングキャンプならびにプレシーズンゲームに向けて最大20名のロスター枠を埋めた。

 そんななか、現地時間9月13日に米スポーツメディア『The Athletic』がNBAのスカウトたちから見た八村の記事を公開。2019年のドラフトで日本人史上初となる1巡目(9位)指名でNBA入りしたフォワードを、現場のリアルな目線で評価した。

 キャリア3年目を終えた八村は昨季、個人的な事情によってトレーニングキャンプに合流できず、プレシーズンも全休。個別のワークアウトやフィルムセッションをこなし、レギュラーシーズン40試合目となる1月9日のオーランド・マジック戦で初出場を果たした。

 シーズン最後の43試合のうち42試合に出場し、平均22.5分、11.3点、3.8リバウンド、1.1アシストを記録。ラスト13試合でスターターを務めたとはいえ、多くの分野でキャリアワーストの成績に終わっている。

 それでも、フィールドゴール成功率49.1%、3ポイントの平均試投数(2.9本)と同成功数(1.3本)、成功率44.7%はいずれも自己最高と、NBA入り当時から疑問視されていたシューティングに改善の兆しを見せた。
 『The Athletic』でウィザーズ番記者を務めるジョシュ・ロビンズは、今回の記事を作成するにあたって4名のスカウトに話を聞いており、スカウトAは八村をこのように評している。

「彼は(見極めるには)難しいね。まだ若く、彼の年齢と同じ選手たちに比べてあまりにも経験が不足している。過去3シーズンで、多くの試合を欠場している」

 八村は1年目に鼠径部の負傷、2年目には流行性角結膜炎、昨季は個人的な事情など、様々な理由で離脱を経験しており、3シーズンの総出場試合数は計147試合(最大226試合)。これは19年のドラフト同期たちと比べても21位という少なさとなっている。

 一方でスカウトBは、「彼を一言で表すなら“スコアラー”だ」と八村の攻撃力を評価する。

 もともとペイントエリアとミドルレンジのジャンパーを得意としてきた八村は、3ポイントの精度もアップさせたことで、得点力については上昇していると言える。トランジションで先陣を走る脚力、ドライブからダンクへ持ち込む推進力などは申し分なく、3シーズン連続で平均2桁得点をクリアしている点はプラスに捉えるべきだろう。
 「彼にとって大きなことは、3ポイントが(昨季の)42試合で上達したこと。それはすごく大きい。これはあくまで小さなサンプルに過ぎず、120本くらいのショットしか放っていない。だが彼がこの部分を伸ばし続けていくなら、(成功率が)40%だろうと39%だろうと大きな飛躍だ。彼はこれまで本当にミッドレンジの男だったからね。彼のゲームに(3ポイントが)加われば、もっともっと価値のある選手になるさ」とスカウトBは語る。

 もっとも、3ポイントの精度が増したとはいえ、平均2.9本の試投数のうち2.7本がキャッチ&シュートで、半分以上の1.6本はディフェンダーが6フィート(約180cm)以上も離れたワイドオープンの状況で放っていたため、相手チームからあまり警戒されていなかったゆえと見ることもできる。

 夏の間、選手たちはワークアウトで自身のスキルを磨き、今月下旬から始まるトレーニングキャンプ、プレシーズンゲーム、そしてシーズン開幕に臨む。当然各チームとも対戦相手を研究してくるため、現状維持のままでは昨季と同等の成績を残すことは難しいだろう。

 そんな八村についてスカウトたちが弱点に挙げていたのはディフェンス。スカウトBとCは八村の守備を「せいぜい平均レベル」と指摘。ウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチやトミー・シェパードGM(ゼネラルマネージャー)は、八村が有能な2ウェイプレーヤーになれるポテンシャルがあると期待しているものの、現状ではあくまで可能性があるに過ぎないとスカウトたちは見ているようだ。
  1対1の守備だけでなく、チームディフェンスも理解し実行しなければならない環境で、八村はローテーションミスやマッチアップ相手を見失ってオープンショットを許してしまう場面もあり、その両面で向上していくことが必須。

 それでも、スカウトDは「彼にはサイズがあり、足を使って動くこともできる。それは重要なこと。彼には万能性があると私は見ている。スイッチして(自身の)スペースを守れるようになると思う」と伸びしろを期待していた。

 八村自身も昨季最終戦となった4月10日のシャーロット・ホーネッツ戦後、オフの課題として守備面を挙げている。

「(コーチたちと)ディフェンスについて話し合いました。相手のシューターをいかに止めるか、オフボールディフェンスをどうやって向上させるかなど、もっと映像を観て相手選手を研究すればその部分が向上すると思います」と、改善すべき分野であることを認識している。

 キャリア4年目となる今季、王者ゴールデンステイト・ウォリアーズとのジャパンゲームズ(プレシーズンゲーム2試合)で凱旋する八村は、ウィザーズの一員として初めて日本でプレーする傍ら、今後のNBAキャリアを占ううえで重要なシーズンを迎えようとしている。

文●秋山裕之(フリーライター)