チェコ、ジョージア、ドイツ、イタリアの4か国で9月1日から18日まで行なわれたユーロバスケット2022は、スペインが優勝。フランスが銀メダル、ホスト国のドイツが銅メダルを獲得して、大盛況のうちに幕を閉じた。

 ここでは、この大会の総括として、今回のユーロバスケットを通しての注目トピックスを紹介する。

■Bリーグ戦士の活躍
 イギリス代表で、平均14.6点と、チームのトップスコアラーだったフォワードのマイルズ・ヘソンは、昨季はB2リーグの佐賀バルーナーズでプレーし、リーグのスティール王にも輝いた。今季は同じくB2の香川ファイブアローズでプレーする。

 彼は日本での経験について「日本のリーグはとても面白い。ここでプレーしたことで、コート上で、自分でできることの幅が広がった」とコメントしていた。

 ラウンド16のギリシャ戦で12得点をマークしたチェコのセンター、パトリック・アウダは横浜Bコルセアーズ所属だ。33歳のベテランは昨季抜群のコンビネーションを見せ、日本代表で活躍した河村勇輝のことを夏の間もずっとフォローしていたそうだ。

「彼はまだ若いけれど、すでにハイレベルでプレーできる選手であることを証明している。それに彼と一緒にプレーするのは本当に楽しいんだ。彼は素晴らしいパサーだからね。そういったタイプの選手と一緒にプレーするのはいつだって本当に喜びだよ」(アウダ)

 この大会でユーロバスケット史に残るアシスト数を記録したトーマス・サトランスキーのチームメイトならではのコメントだ。

 また、アウダはBリーグについて「日本でプレーしているバスケットボールは、こちらとはちょっとタイプが違うけど、個人的には日本のスタイルがとても好きで合っていると感じている。横浜でプレーした2年間は実りが多くて、新シーズンの開幕も本当に楽しみにしている。

 横浜の暮らしも快適だ。日本に来たばかりの頃は、いろいろな違いがあると感じたけど、これまでも違う国でプレーしてきたから、場所を変えることにも慣れているし、そうやって違う文化に触れることが大好きなんだ。毎日楽しんでいるよ」と語ってくれた。
  そして、王者スペインのセルジオ・スカリオロHC(ヘッドコーチ)の右腕としてコートサイドでも大声で指示を出していたルイス・ギルAC(アシスタントコーチ)は滋賀レイクスのHCだ。

 千葉ジェッツ時代の2021年、ファイナルMVPに選ばれたスペインのセバスチャン・サイズ(現アルバルク東京)は7試合で計32分と、コートに立つ機会は多くはなかったが、初の欧州王者を経験。

 他には、グループリーグで敗退したハンガリー代表のフォワード、ロスコ・アレンは新潟アルビレックスに所属している。ユーロバスケットでは全5戦、約20分のプレータイムで平均5.8点、2.4リバウンド。

 現在29歳の彼は、ハンガリーの生まれだが高校からアメリカのハイスクールでバスケに勤しみ、スタンフォード大に進学した。2016年のドラフトでは指名漏れしたが、ゴールデンステート・ウォリアーズやボストン・セルティックス、ロサンゼルス・レイカーズなどでサマーリーグ経験がある。

 ユーロバスケットの熱い風を吸収してBリーグに乗り込む彼らの今季の戦いぶりにも、注目したい。
 ■小国の奮闘
 グループAでスペインを破り、ラウンド16でもスロベニア相手に善戦したベルギー、準々決勝でスペインをあと一歩のところまで追いつめたフィンランド、そしてボスニア・ヘルツェゴビナやエストニアなども、わずかな差で決勝トーナメント入りは叶わなかったが、グループリーグを突破していても不思議ではない戦いぶりを見せてくれた。

 ポーランドに敗れた準々決勝戦の後にルカ・ドンチッチは「今回のユーロバスケットは本当に面白い。どこが勝ってもおかしくない」とコメントしていたが、ベルギーやポーランド相手に苦戦した、偽りない本音だろう。

 欧州全体でレベルは確実に向上している。

 エストニア代表のHC(ヘッドコーチ)は、「さらにチームを発展させるには?」との問いに、「選手たちがより高いレベルのリーグでプレーし、同時にコーチも、ハイレベルな場で経験を積むこと。そして願わくばNBA選手を輩出すること」と回答したが、NBAはおろかユーロリーグの選手もいないベルギーの善戦やポーランドの例もあり、NBA選手がいなくとも、ベスト4は十分に狙えることは証明された。
 
 また、5戦全敗に終わったB組のハンガリー、D組のオランダも、ハンガリーはフランスと4点の好勝負を見せるなど、いずれも決勝トーナメント進出は十分狙える戦いぶりだった。
  一方で、最も期待を裏切ったチームは、5試合での得失点差が-132のC組イギリスだ。FIBAの大会には、オリンピック同様、『グレートブリテン(英国)』として出場しているが、協会の運営予算は乏しく、選手が自腹で遠征費用をまかなったり、コーチ陣が無給のボランティア状態だったりと、この経済大国にして耳を疑う状況に置かれている。

 今大会では、出場24カ国の中で唯一、自国の放送局がこの大会の放映権を購入しなかった国として、メディアの間でも大きな話題となった。

 また予算だけでなく、クリーブランド・キャバリアーズのアシスタントコーチ、ネイサン・レインキングにHCを委ねるといった、協会の運営方針に大きな問題がある。

 しかしそれでも、今回のこの惨敗が教訓になりそうな気配はない。国内でのバスケ人口は非常に多く、ポテンシャルはあるだけに残念だ。

 ユーロリーグは約2週間後、NBAは約1ヶ月後に開幕する。心身両面の疲労から十分に回復するには時間が必要だろうが、充実した経験も残念な思いも、すべてを新シーズンのパフォーマンスに注ぎ込んでくれることだろう。

文●小川由紀子