アメリカで開催されていたU-18ワールドカップも終わり、現在の高校3年生世代の試合は、公開競技として行なわれる国民体育大会を残すのみ。ドラフト会議が約1か月後に迫り、高校球界逸材たちの進路に対する関心も高まっている。

 今年の甲子園を経験した「スター」と言える選手で、プロ入りが有力視されているのは、浅野翔吾(高松商)、山田陽翔(近江)、松尾汐恩(大阪桐蔭)だろう。

 では、すでに多くのプロ球団がリストアップしているとされる彼らにマッチしそうな球団はどこか。現在のチーム事情などから探ってみたいと思う。今回は、夏の甲子園で異彩を放ったスラッガーである浅野を取り上げる。

―――◆―――◆―――

 先のU-18W杯にもスカウトを派遣していた巨人、夏の香川大会初戦に球団代表が視察に訪れたDeNAなどがドラフトに熱心と見られているが、本人の特性やチーム事情からも、この2球団が浅野に合っていると言えるのではないだろうか。

 まず、巨人はこの3年間、投手の上位指名が続いており、過去10年を振り返っても2位以上で指名した高卒野手は岡本和真(2014年1位)と増田陸(2018年2位)の2人しかいない。後者が今年ようやく一軍デビューを果たしたものの、レギュラーの高齢化は顕著で、若手の強打者タイプは必要不可欠だ。
  特に右打ちの外野手となると支配下で最も若いのが29歳の石川慎吾であり、絶対数も不足している。低迷するチームの空気を換えるという意味でも甲子園のスターである浅野は、まさにうってつけ人材と言える。また、高い注目度の中でも全国の舞台で圧倒的な成績を残した大舞台での強さも追い風となりそうだ。

 DeNAは巨人に比べるとレギュラーは高齢化していない。だが、外野手は桑原将志、佐野恵太、オースティン、楠本泰史といずれも中堅と言える年齢となっており、期待の高かった細川成也も伸び悩みが続いている。

 右の強打者という意味でも上位で指名した伊藤裕季也がトレードで楽天へ移籍し、牧秀悟より下の年代は駒不足の感が否めない。過去10年の指名を振り返っても、高卒野手の上位指名は森敬斗(2019年1位)だけで、強打者タイプは1人も指名しておらず、そろそろ高校生の大物が欲しいところだ。本人はホームラン打者ではなく中距離打者を目指すと話しているが、東京ドームや横浜スタジアムであれば、ある程度のホームラン数を打てる打者になる可能性も高い。

【関連記事】「間違いなく1位で消えますね」――今夏に声価を高めた高松商・浅野翔吾。プロスカウトの“疑念”を打ち砕いた身体能力 一方、パ・リーグでマッチしそうな球団と言えば、西武か。

 日本人の外野手では愛斗がようやくレギュラーになりつつあるが、まだ盤石と言える存在ではなく、次に出場が多いのは大ベテランの栗山巧となっている。二軍の若手を見ても育成ドラフト出身の高木渉と長谷川信哉が目立つくらいで、将来のレギュラー候補は不足している印象だ。

 内野手も含めてレギュラーの高齢化は大きな課題であり、他のポジションも気になるところだが、将来性の高い外野手を優先するというのであれば、筆頭候補として浅野を挙げるのも理解できる。また浅野自身も思い切りの良さが魅力の打者であり、これまで栗山、中村剛也、浅村栄斗、森友哉といった高校生野手が育ってきた土壌もプラスである。もしも、西武入団となれば、「山賊打線」の復活を担う存在として期待できるだろう。
  プロ野球全体のドラフトを振り返っても、高校生の外野手が高順位で指名された例は多くない。だが、昨年は吉野創士(楽天)が1位でプロ入りしており、右打者で強く振れる選手の需要は全体的に見ても高まっているように見える。

 打者としてのスケールの大きさは、高身長の吉野の方が上かもしれないが、高校3年時点での外野手としての総合力は浅野の方が間違いなく上。他の候補との兼ね合いを考えても1位指名の可能性は高い。セ・リーグはここで挙げた2球団以外にも野手の有望株が必要な球団は多いだけに、複数球団による競合と言うことも十分に考えられるだろう。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

【関連記事】阪神やDeNAは獲得すれば未来は安泰? 課題の守備力も向上した“打てる捕手”松尾汐恩を推したい理由――“超高校級逸材3傑”の未来を占う

【関連記事】近江・山田陽翔を勧めたい2球団。「投手スケール」では物足りなさも、魅力は十分――“超高校級逸材3傑”の未来を占う

【関連記事】【2022ドラフト候補ランキング|1〜10位】トップ2は矢澤&蛭間で変わらず。日本文理・田中も“二刀流”に可能性を秘める