手に汗握るゲームとは、まさにこのことを言うのだろう。メジャーリーグは現地時間10月28日、今年の世界一を決めるワールドシリーズの第1戦が行なわれ、ナ・リーグ第6シードから勝ち上がってきたフィラデルフィア・フィリーズが6対5でア・リーグ最高勝率のヒューストン・アストロズを撃破。12年ぶりのプレーオフでこの日も躍動した。

 試合序盤はアストロズの5番カイル・タッカーが2打席連発と爆発し、2017年王者がペースを握っていた。しかし、ワールドシリーズではなぜか弱いジャスティン・バーランダーが4回から突如崩れ、5回にJT・リアルミュートに2点適時打を浴びて試合は振り出しに。ブルペン陣の頑張りで延長戦に突入すると、再びリアルミュートが値千金の勝ち越し弾を放ってフィリーズが大逆転勝利を収めたのだった。

【動画】リアルミュートが値千金の決勝弾! フィリーズが先勝


 見事な逆転劇は、歴史的に見てもレアだった。ワールドシリーズで5点リードしたチームの成績は220勝5敗、勝率97.8%。わずか2.2%の確率を、この秋に見せた一気呵成の攻撃でフィリーズが引き寄せたのだった。直近でも、ここ20年間ではお目にかかることのなかった珍事。実は、“ある人物”はすでに経験しているのだ。アストロズの指揮官、ダスティ・ベイカーだ。
  ワールドシリーズの5点差大逆転劇が最後に発生したのは、アナハイム(現ロサンゼルス)・エンジェルスとサンフランシスコ・ジャイアンツが戦った2002年第6戦。この時にジャイアンツを率いていたのがベイカーだったのである。そして、この試合も実に歴史的な一戦として記憶されている。

 下馬評はバリー・ボンズが所属するジャイアンツが有利とされ、球団初のワールドシリーズに進出したエンジェルスは第5戦まで2勝3敗と後がなかった。第6戦も7回表を終えてジャイアンツが5対0でリード。48年ぶりの世界一がもうそこに迫っていた。しかし、その裏に3ランを浴びると、続く8回にもエンジェルス打線の勢いを止められず逆転負け。第7戦も落としてシリーズに敗れることになった。

 御年73歳のベイカー監督は今季、史上12人目の監督通算2000勝を達成した名将だ。これまで指揮してきた5球団でいずれも地区優勝を達成しているのは彼だけで、しかもサイン盗み問題で名声が地に落ちたアストロズの監督を引き受ける人格面への評価も非常に高い。しかし一方で、「勝負弱い」といのも指摘されている。

 2000勝した監督ではただ一人、世界一の経験がなく、ワシントン・ナショナルズ時代は勝てばシリーズ突破の試合で9連敗というメジャーワースト記録も樹立。そこにきて、この日の「勝率97.8%」からの大逆転負け。自身が20年前に経験した屈辱の敗戦を味わうことになり、脳裏によぎるのは再びのシリーズ敗退かもしれない。

 果たして希代の名将は、“不吉”なデータを乗り越えて、自身初の世界一を掴み取れるだろうか。

構成●THE DIGEST編集部

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