ユタ・ジャズが開幕から5戦で4勝と好調だ。

 彼らはこの夏、2017−18シーズンから5年間続いたルディ・ゴベア&ドノバン・ミッチェル体制を解体。大型トレードに加え、34歳の新人HC(ヘッドコーチ)、ウィル・ハーディを新指揮官に迎える大胆なチーム改革を敢行し、フレッシュなスタートを切った。

 そこで即戦力として目覚ましい活躍を見せているのが、ミッチェルとのトレードでクリーブランド・キャバリアーズから加わった、フィンランド人フォワードのラウリー・マルッカネンだ。

 マルッカネンといえば、9月のユーロバスケットで、フィンランド代表を55年ぶりのベスト8進出に導く大活躍を披露したのが記憶に新しい。さらにラウンド16のクロアチア戦では、43得点を叩き出した。

 新天地のジャズでも、開幕戦からスターターとして出場。初戦は昨季のシーズンMVPニコラ・ヨキッチを擁するデンバー・ナゲッツを下し、2戦目のミネソタ・ティンバーウルブズ戦では、昨季までのチームの主軸ゴベアと早くも対峙した。
  ゴベアは10本のオフェンシブ・リバウンドを含む23リバウンドを奪うなど、さすがの名ディフェンダーぶりを見せつけたが、試合はジャズがオーバータイムの末に勝利。マルッカネンは24得点、13リバウンドと、この試合に出場した全選手中唯一のダブルダブルを記録している。

 そして3戦目のニューオリンズ・ペリカンズ戦でも、マルッカネンはゲームハイの31得点を稼ぎ2試合続けてダブルダブルを達成。またもオーバータイムにもつれこんだこのゲーム、第4クォーター残り1分を切って107−110とペリカンズに3点リードを許したあとの攻撃で、ジョーダン・クラークソンがあらぬ方向へまさかのパスミスを犯す。

 しかしこれにマルッカネンが飛びついてアウト・オブ・バウンズの危機から救い、パスを受けたクラークソンが3ポイントを決めて同点に持ち込んだのだが、こうしたプレーはまさにマルッカネンの真骨頂。最終的に1点差でジャズが勝利を収めた。 この5試合でマルッカネンの出場時間が最も短かかった4戦目のヒューストン・ロケッツ戦で、ジャズが今季初黒星を喫したのは偶然かもしれないが、彼がすでに新チームの勝敗を左右する存在となっているのは間違いない。

 マルッカネンの持ち味は、コートの両サイドで、どんな動きでもやってのけるという多才さにある。

 先述したユーロバスケットでは、スロベニアのルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)やギリシャのヤニス・アテトクンボ(ミルウォーキー・バックス)も40得点超えのスーパープレーを披露したが、彼らとマルッカネンには明確な違いがあった。前者2人は、個人技を駆使することでチームを劣勢から救う働きをしていたのに対し、マルッカネンはむしろ周りを動かす黒子的な役割を果たすなかで、自らも数字も叩き出していた。

 ジャズへのトレードが決まったのは、ユーロバスケットが始まった頃だから、世界がまだ彼のそんな超絶パフォーマンスを目にする前だった。そしてオールラウンダーを必要としていたジャズの構想にハマる人材であることを、彼はこの大会で証明していたのだ。
  ハーディーHCも、開幕からのマルッカネンの好パフォーマンスについて「夏の経験に上積みしたもの」だとコメントしている。

「彼のパフォーマンスは非常に素晴らしかった。彼の多才さは貴重だ。我々は毎晩、彼に『フロアの両サイドでいろいろなことをやってくれ』とお願いすることになるだろう。彼はウィングの選手から(ニコラ)ヨキッチまでガードするなど、なんでもやってのける。ピック&ロールもこなせば、スクリーンもセットする。スペースを作る動きもできる。コーチとして、あのレベルの多才さを持つ選手を持てるというのは、非常に贅沢なことだよ」

 チームメイトたちも、すでにそれを実感している。

 前述したペリカンズ戦後、スターティングガードのマイク・コンリーが第3クォーターのカウンター攻撃の場面を振り返り「彼が猛烈にダッシュしたから、俺もスピードアップしたんだ。そしたら彼がスピードを緩めて、俺にパスを出してくれた」とマルッカネンの走り出しに敬意を表していた。 ゴベアとのトレードでウルブズから加入したマリーク・ビーズリーも「毎試合、彼はいろいろ違ったことをやってくれるんだ。シュートも打つし、リムへも向かっていくし、ダンクもできるし、動き回ってチームのためにあらゆることをやってくれる」と称賛している。

 マルッカネン自身もそうした自分の役回りに充実感を感じている様子で「自分はここにフィットしているみたいだ。毎回コートに立つたびに、両エンドでアクティブに、アグレッシブなプレーをしようとトライしているんだ」と語った。
  長いシーズンが今後どのように展開していくかはわからないが、ハーディーHCは「彼は間違いなく、これまで見せてきた以上のものを持っている」と期待を寄せている。キャリア1年目にオールルーキーチームに選ばれた実力をもつマルッカネンは今季、さらに一皮剥けたパフォーマンスを見せてくれそうだ。

 ちなみにジャズには、同じくユーロバスケットで大ブレイクしたイタリア代表のシモーネ・フォンテッキオもいる。ルーキーフォワードは約16分出場した4戦目のロケッツ戦で、13得点、3リバウンドを記録。マルッカネンとフォンテッキオは同じ2017年のドラフトにエントリーし、前者は全体7位指名、後者は指名漏れと明暗分かれたが、運命の巡り合わせで共闘する機会を得た。

 彼ら新戦力を武器に、新たな時代を切り開くジャズの今シーズンに注目したい。

文●小川由紀子

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