「エリックと私は本当にラッキーだ」名将カーがナッシュの解任に言及「彼に必要なのは安定した環境だけ」<DUNKSHOOT>
NBAの世界でチーム成績が振るわない場合、最初に批判の矛先が向かうのはコーチだが、今季ここまで勝てなかったのはナッシュHCが最大の要因なのか。
ネッツで指揮を執った約2シーズンというもの、ナッシュは数多くのことに振り回されてきた。
昨季アービングは新型コロナウイルスのワクチン未接種の姿勢を貫いて多くの試合でプレーできず、デュラントはケガで長期欠場。さらに一昨季途中に加入したジェームズ・ハーデンはハムストリングのケガに悩まされ、シーズン途中にフィラデルフィア・セブンティシクサーズにトレードされた。
代わりに加入したセス・カリー、アンドレ・ドラモンド(現シカゴ・ブルズ)こそ先発として活躍するも、メインターゲットのシモンズは背中のケガで全休と、最後までベストメンバーで戦うことができなかった。
1日のマイアミ・ヒート戦を前に、ゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHCは次のように語っていた。
「私にとってはいい通知になった。すべてのコーチは、選手たちやフロントオフィス、オーナーシップによって振り回されてしまう。このリーグでコーチが生き抜いていくためには、安全な状況が必要なんだ。エリック(スポールストラHC/ヒート)とゴールデンステイトの私は本当にラッキーだ」
現役HCの中で、同一チームで最も長く指揮を執っているのはサンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポビッチの27シーズン。スポールストラは15シーズン、カーが9シーズン、デンバー・ナゲッツのマイケル・マローンが8シーズンと続いている。
カーHCにとって、ナッシュはウォリアーズでコンサルタントを務めてきた元同僚。ここ数年、ネッツが取り巻く状況で指揮官を務めることの難しさをこう評していた。
「我々のうち誰かをあの状況に置いたとしても、スティーブよりいい仕事ができなかったかもしれない。それが真実なんだ。私たちにとって仲のいい友人として、スティーブのことを残念に思う。
だが同時に、私はもし彼が戻ることを望めば、素晴らしいコーチになることができると思う。彼に必要なのは、もっと安定した環境だけだからだ」
NBAのヘッドコーチを解任されても、コーチとしてのキャリアが終わるわけではない。アシスタントコーチとして他チームで経験を積んでHCへ返り咲くケースもあれば、他チームの指揮官へ就任することもある。
特に現代のNBAではカーを筆頭に、ドック・リバース(シクサーズ)やネイト・マクミラン(アトランタ・ホークス)、チャンシー・ビラップス(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、ジェイソン・キッド(ダラス・マーベリックス)、タロン・ルー(ロサンゼルス・クリッパーズ)と、現役時代にPGとしてプレーしてきた指揮官が多いだけに、ナッシュが新たなキャリアを歩む可能性は十分あるのではないだろうか。
文●秋山裕之(フリーライター)