今年のNBAドラフトで全体1位指名を受けたルーキー、パオロ・バンケロ(オーランド・マジック)。デビュー戦から期待通りの活躍を見せて大きな話題となっているが、昨年のドラ1ケイド・カニングハムも、改革期にあるデトロイト・ピストンズで、今季はますます真のリーダーとしての成長ぶりを発揮している。

 平均17.4点、5.5リバウンド、5.6アシストという成績でルーキーイヤーの昨季を終えたカニングハムは、2年目を迎えた今季もマジックとの開幕戦から18得点、10アシストのダブルダブルをマーク。その後も毎試合コンスタントに2桁得点をあげているが、特に5戦目のアトランタ戦からは得点数がさらに上昇。開幕4試合のアベレージが平均18.5点だったのに比べ、5戦以降は27.7点と、10点近くも増加している。

 とりわけ7試合目のゴールデンステート・ウォリアーズ戦では23得点、10リバウンド、9アシストとトリプルダブルにあと一歩という活躍で、昨季チャンピオンから白星を奪った。
  彼のパフォーマンスが向上している理由について、『The Athletic』のジェームズ・L・エドワーズ三世記者が指摘しているのは、シュートセレクションが変わったことだ。5試合目以降はミドルレンジからのジャンプシュートが増加。直近4試合は平均10.3回のプルアップジャンパーを試投し、成功率58.5%と高い数字をあげている。

 これは“ミドルレンジの鬼”デマー・デローザン(シカゴ・ブルズ)が同じく直近4試合で平均10本放ち、成功率5割でリーグ2番手につけていることからも、その凄さがわかるだろう。

 その裏にあるのは、“自分の弱みを冷静に分析して改善に努める”というカニングハムの姿勢だ。

 もともと負けん気の強いカニングハムは、これまでビッグマンが前に立ち塞がっても、さらに挑戦意欲を燃え上がらせてリムに向かっていくところがあったという。しかし今は違う。たとえばミルウォーキー・バックスに2点差で惜敗した31日のゲームでは、シュートに向かおうとした際にヤニス・アテトクンボが立ちはだかると、一瞬ボールをキープ。ガードのグレイソン・アレンがマッチアップしてきたところを狙ってショットを決めている。
  ヤニスの身長は213cm、一方でアレンは193cm。この20cm差を利用して、確実に得点を狙いにいくという冷静な判断だった。

 そんなカニングハムについて、ピストンズのドゥエイン・ケイシーHC(ヘッドコーチ)は、「マイアミ・ヒートのカイル・ラウリーら、NBAでも数人しか持っていない素質を持っている」と評価している。

「彼は生まれながらのリーダーだ。彼もほかの若いプレーヤーと同じようにミスを犯すかって?それはもちろんだ。しかし彼は、自分が失敗したら、そのことに自分ですぐに気がついて修正できる。もの凄く賢い選手だよ。並の21歳ではない。

 彼と話していると、とても達観した人物であることがわかる。このリーグで現在何が起こっているか、すべて把握しているんだ。古い魂を持っていると感じるよ。ただの新進気鋭の若手とは違う。まるで、もうずいぶん長い間このリーグにいるプレーヤーのようだ」
  彼の母キャリーも、かつてインタビューで「ケイドは昔から、年齢よりも成熟した子どもだった。常に自分がやることについて、責任を持って行動する」と証言しているが、その彼をさらに成熟させた出来事がふたつある。

 親友の死、そして父親になったことだ。

 カニングハムは、地元テキサスで過ごした頃の親友2人を、それぞれ16、17歳という多感な時期に、相次いで亡くしていた。そのことが彼に独特の人生観をもたらし、9月に21歳の誕生日を迎えた時にも「21歳まで生きて、こうしてここにいられるなんて、僕は恵まれている。来年もまたこうして誕生日を迎えて、さらなる恵みを感じたいものだよ」とコメント。21歳の若者からはなかなか聞けないセリフだが、日々をいかに充実して過ごすか、その重みを彼は常に実感しながら生きていた。

 それからカニングハムは、大学に進学する前に父となった。今年で4歳になるライリーちゃんは、彼にとって「身体の中に幸せの塊が詰まった存在」だという。そしてなにより、最大のモチベーションの源だ。
 「彼女のために、どんなことでもベストを尽くさなければならない。人生に対する見方が変わった。もっと真剣に向き合えるようになったんだ」

 カレッジ時代から、ライリーちゃんは父の試合を欠かさずスタンドで観戦しているという。

 今季のピストンズには、キャリア9年目を迎えたベテランのボーヤン・ボグダノビッチや、今年のドラフトでそれぞれ5位、13位指名を受けた新人ジェイデン・アイビー、ジェイレン・デューレンといった新戦力が加入。カニングハムを中心に、チーム再建に取り組んでいる。
  4日のクリーブランド・キャバリアーズ戦では、相手の高さにも苦しみ88−112と手痛い大敗を喰らったが、ケイシーHCが指摘しているように、カニングハムはこの敗戦からも学びを得たことだろう。

 若きエースの2年目の挑戦は、始まったばかりだ。

文●小川由紀子

【PHOTO】NBA最強の選手は誰だ?識者8人が選んだ21世紀の「ベストプレーヤートップ10」を厳選ショットで紹介!