2022−23シーズンのブルックリン・ネッツは、開幕からなかなか波に乗れず、7戦目を終えて2勝5敗と低迷。この時点でスティーブ・ナッシュHC(ヘッドコーチ)の解任へ踏み切り、アシスタントコーチのジャック・ヴォーンを暫定指揮官へ昇格させた。

 そんななか、チームの二枚看板の1人であるカイリー・アービングは、先日反ユダヤ主義の映像作品のリンクを自身のSNSへ投稿。支持する意思こそ示さなかったものの、明確に否認しなかったことで問題へ発展したため、ネッツは無報酬で最低5試合の出場停止処分を科した。

 さらなる苦境に立たされたかと思われたものの、ネッツは現地時間11月4日のワシントン・ウィザーズ戦に128−86で快勝すると、翌5日のシャーロット・ホーネッツ戦も、終盤に逆転して98−94で2連勝。6日を終えた時点で4勝6敗(勝率40.0%)まで持ち直し、イースタン・カンファレンス9位とプレーイン・トーナメント圏内へ上昇した。
  この2試合、アービングに加えてベン・シモンズもヒザの痛みで欠場と、ビッグ3のうちコートに立っていたのはケビン・デュラントのみ。それでもネッツはアウェー2連勝と調子を上げてきた。

 もともと、今季のチームには昨季までユタ・ジャズで先発を務めていたロイス・オニールや、ニック・クラクストンという成長中のビッグマン、チーム最古参シューターのジョー・ハリス、ベテランガードのパティ・ミルズなど、実力者が多く在籍。そのなかで、2連勝をマークできたキーポイントのひとつとして挙げられるのは、渡邊雄太をセンターに配置したスモールラインナップだろう。これについて、ヴォーン暫定HCはこう話す。

「我々はテンポを上げてプレーできるかを見ているところだ。得点源となれる選手たちを何人か欠いているから、彼らの不在を埋めることができるかどうかを、少し小さな布陣を起用して見ている」

 ネッツはウィザーズ戦でミルズ、ハリス、デイビッド・デュークJr.、マーキーフ・モリスに渡邊、ホーネッツ戦でもデュラント、オニール、ハリス、キャム・トーマスに渡邊というスモールラインナップを送り込んでおり、それらがここまで奏功している。 特にウィザーズ戦で起用したミルズ、ハリス、トーマス、オニール、渡邊という布陣は、2m超えが渡邊のみという“超スモールボール”と言っても過言ではないメンバーだった。

「全体的に見て、フレキシブルなラインナップでなければならないと考えていた。(ダニエル)ギャフォード(ウィザーズ)がいるなら、ユウタを起用するアドバンテージがあると考えていたんだ。彼はフロアを広げられるし、彼の周囲にシューターを配置することもできる。そうすることで、ケビンを抑えることが難しくなるんだ」

 この2試合、渡邊はウィザーズ戦で今季最多の14得点、8リバウンドに2ブロック、ホーネッツ戦では8得点、3リバウンドにシーズンハイの3アシスト、2スティールをマーク。ロールプレーヤーとして見事にチームを補完した点も見逃せない。
  さらに3ポイントは7試合連続で成功、とりわけ直近3戦は毎試合2本をヒット。28歳の日本人フォワードは、3ポイント成功率57.9%でリーグ3位にランクインしている。

 アービングの動向、シモンズの復帰時期など、依然として今後も不透明なネッツだが、攻守両面で奮闘する渡邊の献身的な働きは、間違いなくプラス要素をもたらしていると言っていいだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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