このオフ、阪神の藤浪晋太郎はメジャー移籍を目指している。12月1日には正式にポスティングを申請し、今後はメジャー球団との交渉が本格化していくと見られている。

 すでにダイヤモンドバックスやレッドソックスが接触しているとの報道もあるが、ここで藤浪にお勧めしたい球団がある。投手の“魔改造”を得意とするドジャースとレイズだ。

 ドジャースはここ10年連続でプレーオフに進出、うち地区優勝が9回というメジャー屈指の強豪球団だ。ムーキー・ベッツやフレディ・フリーマンらスーパースターを擁する一方、データ分析を駆使して多くの平凡な選手を飛躍させている実績も広く知られている。

 昨季で言えば、2021年途中までエンジェルスに在籍していたアンドリュー・ヒーニーがそうだった。大谷翔平とも仲が良かった左腕は若手時代から「将来のエース」と期待されながら伸び悩み、昨季は30試合で防御率5.83と平凡な成績だった。だがドジャースは、そんなヒーニーを「驚異のドクターK」へと生まれ変わらせた。
  ドジャースが指導したのは投球パターンの変更だ。それまでの代名詞だったカーブを封印し、代わりにスライダーをメインの変化球とした。また、スライダーの変化をあえて小さくする一方で球速を上げるとともに、リリースポイントを4シームと同じにさせて区別をつけにくくした。

 その結果、9イニング平均の奪三振率は驚異の13.62をマーク。怪我もあって72.2投球回にとどまったとはいえ、防御率も3.10と、前年から実に3点近くも改善された。

 また、エバン・フィリップスも”魔改造”の成功例だ。ドラフト17巡目でプロ入りし、21年8月には当時弱小のオリオールズを解雇された無名右腕はドジャース加入後、ヒーニーと同じように横に大きく滑るスライダーを習得。これが絶対的な決め球となり、今季は64登板で防御率1.14の好成績を残して“8回の男”に定着した。
 “魔改造”ぶりでは、レイズも負けてはいない。いや、むしろ投手に限るなら、ドジャースよりも一日の長があるかもしれない。

 総年俸では球界最低クラスに甘んじているが、データ部門への投資はMLBでも上位。そうすることで、ヤンキースやレッドソックスといった金満球団を向こうに回して毎年のように地区優勝を争っている。

 これまでも数多くの投手を“魔改造”してきたレイズだが、22年最大のヒット作は、先発ローテーションの一角を担い、135.1投球回で防御率2.46と好投したジェフリー・スプリングスだろう。今季開幕時点ですでに29歳、昨季までの通算防御率は4.73ともはや何の伸びしろもなさそうに見えたこの左腕を、レイズはどのように生まれ変わらせたのだろうか。

 端的に言えば、スライダーとチェンジアップの変化量を多くした。スライダーはより横変化を大きくして、左打者のフロントドアを攻められるように改造。 チェンジアップは逆に縦変化を大きくして、右打者の外角へ落とすボールにした。
  21年までは左打者を苦手としていたスプリングスだが、右打者に対しては4シームとチェンジアップを中心に攻めることで、打者の左右を苦にしなくなった。それが投球の安定感向上にもつながり、好成績を残せたというわけだ。

 スプリングスはレイズの指導法について「打者をどのようにアウトにするか。レイズに来ると、とにかくそれに没頭することができるんだ」と表現している。「(ボールの)握りを変えたり、変化を改良したり、リリースを調整したり。本当に多くの助けを得られたよ」。

 高卒1年目の13年から3年連続2ケタ勝利、15年には奪三振王を獲得した藤浪だが、近年は足踏み状態が続いている。だが、2m近い長身や155キロを超えるストレートなど、スペックの高さは誰もが認めるところ。

 ちょっとしたキッカケさえつかめれば、メジャーでも活躍できる可能性は十分あるはずだ。その「ちょっとしたキッカケ」を最も与えてくれそうなのがドジャースとレイズなのである。

構成●SLUGGER編集部

【関連記事】「20本塁打以上は難しい」「今のメジャーにいないタイプ」MLBスカウトによる吉田正尚の“リアル評”

【関連記事】「オオタニは下だ」MVP争いでまさかの“1位票ゼロ”。怪物アルバレスへの投票結果に米紙が不満「地球上で最強の左打ちだ」

【関連記事】大谷翔平が「地球上で最高の選手」だったからこそのMVP。ジャッジが漏らした言葉に感じたヤ軍主砲の“本音”