渡邊雄太の3ポイントコンテスト参戦に現地メディアが注目するなか、元同僚の発言が波紋「彼はプレッシャーに耐えられないと思う」<DUNKSHOOT>
そんななか、今月9日に公開された現地メディア『FanDuel TV』で、現地時間2月18日に行なわれるオールスターサタデーナイトのイベントのひとつ、3ポイントコンテストの話題となり、ブルックリン・ネッツで活躍する渡邊雄太の名が挙がった。
番組にはアナリストとしてシャムズ・シャラニア記者、進行役のミシェル・ビードル、プロデューサー兼ホスト役のエディ・ゴンザレス、そして元NBA選手のチャンドラー・パーソンズが出演。渡邊について激論が交わされる一幕があった。
1月11日終了時点で、今季最も3ポイントを成功させているのはバディ・ヒールド(インディアナ・ペイサーズ)の165本で、成功率ではケンテイビアス・コールドウェル・ポープ(デンバー・ナゲッツ)の48.0%がトップ。1試合の平均成功数では、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が最多の5.0本を沈めている。
一方、渡邊は27試合で74本中39本の3ポイントを決めており、成功率52.7%(平均1.4本成功)を記録。一時はリーグトップに立ったものの、11〜12月の故障離脱で規定を外れ、現在はランク外となっている(※チームの消化試合につき1本の成功が必要。渡邊は規定に1本足りず)。
それでもシャラニア記者は、「彼はその中に含まれるべきだ」と渡邊のコンテスト出場を強く推薦。ビードルも「彼はいないといけないね」と同調した。
ところが、パーソンズは「あの男を3ポイントコンテストに出すことはできないな。彼はプレッシャーに耐えられないと思うね」と否定的なコメント。
もし渡邊が3ポイントコンテストに選出されれば、もちろん日本人史上初の快挙となる。強豪ネッツでローテーション入りする献身的なロールプレーヤーの出場は、日本やネッツのファンだけでなく、世界中のバスケットボールファンから“異色の存在”として注目を浴びることになるだろう。
ただパーソンズは「彼が素晴らしいシーズンを送っているのは分かっている。成功率が高いのは知っているよ。でも、NBA最高のシューターの話になった時、ユウタのことを考えるか?」と持論を展開。
その意見に対し、ビードルは渡邊のことをベストシューターの1人と見ており、シャラニア記者も「彼は3ポイントコンテストに出るべきだぞ、チャンドラー。両コーナーからの3ポイント成功率で、彼はNBAのトップなんだ」と猛プッシュ。だがパーソンズも意見を曲げず、「彼が勝つことはないだろうな」と激論を交わしていた。 そのパーソンズは、NBA通算9シーズンで4球団を渡り歩き、キャリア平均12.7点、4.5リバウンド、2.7アシスト、3ポイント成功率37.3%(平均1.6本成功)を記録した206cmのフォワード。
2年目の2012−13シーズンにはヒューストン・ロケッツで3ポイント152本、成功率38.5%(平均2.0本)をマークしたほか、14年1月24日のメンフィス・グリズリーズ戦では当時のリーグ新記録となるハーフ(後半)で10本成功という活躍も見せた(その後2018年にクレイ・トンプソンも達成)。
2016年にはグリズリーズに移籍し、渡邊がNBA入りした18−19シーズンまで在籍。当時2WAY契約を結んでいた日本人フォワードと、わずかな期間ながら共闘も経験しただけに、今回の発言は“元同僚”ゆえの厳しい意見だったとも受け取れる。
NBAの3ポイントコンテストは、1986年に第1回が行なわれ、初代王者にして3連覇を達成したラリー・バード(元ボストン・セルティックス)を筆頭に、スティーブ・カー(元シカゴ・ブルズほか)、レイ・アレン(元ミルウォーキー・バックスほか)ら名だたるシューターが優勝。現役ではカリーが2度制しているほか、ヒールドやトンプソン、渡邊の同僚のカイリー・アービングらが優勝を経験している。
時間制限があるなか、選手たちは指定されたスポットからそれぞれシュートを打っていくのだが、その日の調子やアリーナとの相性、会場の雰囲気で大きく流れが変わる。昨年は213cmのカール・アンソニー・タウンズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)が初出場でチャンピオンになっており、渡邊も優勝する可能性は決してゼロではない。
もしかすると、パーソンズは自身がコンテストに招待されたことがなく、挑戦さえできなかったことを今でも根に持っているのかもしれない。
文●秋山裕之(フリーライター)