サッカー界では移籍金の高騰によって、ひとりの選手のために天文学的な金が動くのが日常茶飯事となっているが、金額の高さは移籍金だけでなく、放映権料などクラブの収入も以前とは比べ物にならないほどに上昇している。2020年にコロナ禍が世界に広まってからは、無観客などの措置によって世界のクラブは厳しい経営を強いられていたが、徐々にその影響が和らいできたことで、財政状況も回復しつつあるようだ。
  サッカービジネスに関するデータサイト「Football Benchmark」は、欧州8リーグの2021-22シーズン王者クラブ(イングランド=マンチェスター・シティ、スペイン=レアル・マドリー、ドイツ=バイエルン、イタリア=ミラン、フランス=パリ・サンジェルマン、オランダ=アヤックス、ポルトガル=ポルト、トルコ=トラブソンスポル)の、同シーズンの収益を『THE EUROPEAN CHAMPIONS REPORT 2023』で発表した。

 まず、各クラブのスポンサー収入、放映権料、チケット&グッズ収入などを含めた総収入、そして前年比(±%)は、以下の通りとなっている。

マンC:7億3100万ユーロ(約1038億円) +13%
マドリー:7億1400万ユーロ(約1014億円) +12%
パリSG:6億7000万ユーロ(約951億円) +18%
バイエルン:6億2700万ユーロ(約890億円) +5%
ミラン:2億6900万ユーロ(約382億円) +16%
アヤックス:1億8900万ユーロ(約268億円) +51%
ポルト:1億4400万ユーロ(約204億円) −6%
トラブゾンスポル:5900万ユーロ(約84億円) +36%

 前年比では唯一、ポルトだけがマイナスとなっているのは、同シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)でグループステージ敗退(前シーズンはベスト8)を喫したことが大きいとされる。最多のマンCの7億3100万ユーロは、もちろん世界最高の数字であり、これに僅差で欧州王者(マドリー)を上回った。11年ぶりにスクデットを手にしたミランは前年比16%と、大きく収益を上げたものの、それでもマンCの約3分の1というところに、現在のプレミアリーグとセリエAの規模の違いが窺える。
  ちなみに「純利益」になると、以下のように順番は入れ替わる。プラス収支は4チームのみ。とりわけ、マドリーとバイエルンは安定した経営を行なっていると言えよう。一方、パリSGは他を圧倒する戦力補強などによって、3億6900万ユーロという莫大なマイナスに……。ミランはそれに次ぐ“赤字”を計上しており、今後もこれを減らすための営業努力が続くことになりそうだ。

マンC:4900万ユーロ(約70億円)
ポルト:2100万ユーロ(約30億円)
マドリー:1300万ユーロ(約18億円)
バイエルン:900万ユーロ(約13億円)
アヤックス:−2400万ユーロ(−約34億円)
トラブゾンスポル:−2500万ユーロ(−約36億円)
ミラン:−6700万ユーロ(−約95億円)
パリSG:−3億6900万ユーロ(−約524億円)
 
 続いて、各クラブの人件費について、その総額、総収入における割合、昨年比は、以下の通りである。UEFAが定める「ファイナンシャル・フェアプレー」では、総収入における人件費を7割以内に止めることを推奨するが、多くのスーパースターを招聘して莫大な年俸を支払っているパリSG、はなんと総収入額を5800万ユーロ(約82億円)超えてしまった! なお、最低はバイエルンの52%で、ここでもこのドイツの名門は“健全さ”を示している。

パリSG:7億2800万ユーロ(約1034億円) 109% +45%
マドリー:5億1900万ユーロ(約737億円) 73% +29%
マンC:4億1800万ユーロ(約594億円) 57% +4%
バイエルン:3億2400万ユーロ(約460億円) 52% −7%
ミラン:1億7000万ユーロ(約241億円) 63% ±0
アヤックス:1億900万ユーロ(約155億円) 58% +15%
ポルト:8900万ユーロ(約126億円) 62% −10%
トラブゾンスポル:4800万ユーロ(約68億円) 81% +35%
  最後に、各クラブが擁するチームの2013年1月1日時点での推定価値、昨年比は以下の通り。キリアン・エムバペ、リオネル・メッシ、ネイマールといった名手を擁するパリSGを上回るのがマンCで、その価値は昨年比で40%もアップしたミランの約2倍に記録している。ただ、上位2クラブにまだ、CL優勝の経験がないのも興味深い。莫大な投資が、欧州の舞台で報われるのは、どちらが先になるだろうか? あるいは、順位では下のライバルたちが、差をさらに広げていくのか……。
 マンC:12億6700万ユーロ(約1800億円) +2%
パリSG:10億800万ユーロ(約1431億円) +6%
バイエルン:9億9400万ユーロ(約1411億円) +8%
マドリー:9億3600万ユーロ(約1329億円) +15%
ミラン:6億9300万ユーロ(約984億円) +40%
アヤックス:3億ユーロ(約426億円) −15%
ポルト:2億6900万ユーロ(約382億円) +5%
トラブゾンスポル:1億3400万ユーロ(約190億円) +11%

構成●THE DIGEST編集部
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