1月14日に行なわれた2022−23シーズンのラグビーリーグワン・ディビジョン1第4節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ対NECグリーンロケッツ東葛の一戦は、40-7で昨季3位のスピアーズが勝利した。

 開幕戦で昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアスを撃破したスピアーズ。これまで苦手としてきた“天敵”から、実に18年ぶりとなる勝利を飾って一気に勢いづいた印象だ。
 
 南アフリカ代表のSHファフ・デクラークが加入した横浜キヤノンイーグルスとの第2節は、残り8分で10点差を追いついてドローに持ち込むと、前節は昇格組の花園近鉄ライナーズを77−12で粉砕。3節終了時でリーグ最多の135得点をマークし、昨季王者・埼玉パナソニックワイルドナイツに2ポイント差の2位と順調なスタートを切っていた。
  しかし、ビジター3連戦を2勝1分けで乗り切り、迎えた今季初のホームゲーム、本拠地・江戸川陸上競技場でのグリーンロケッツ戦は、昨季入れ替え戦の末に辛くもディビジョン1残留を果たしたチームを相手に、前半は思わぬ苦戦を強いられる。

 開始3分にWTB木田晴斗のゲインからSH谷口和洋につないで幸先良く先制トライを奪ったものの、17分にラインアウトからモールを押し込まれてFL亀井亮依にトライを許し、コンバージョンゴールで追いつかれると、その後もグリーンロケッツの粘り強いディフェンスに苦しみ、なかなか追加点を奪えない。小雨の降るピッチコンディションにも影響され、単純なハンドリングエラーやセットピースでの軽率なペナルティも少なくなかった。

 それでも、今季のスピアーズは一味違う。我慢の時間帯をしのぐと、前半終了間際に密集から再び谷口が巧みにスペースを突いて勝ち越しトライ。さらにハーフタイムを挟んで修正を施した後半に4トライを重ねて、グリーンロケッツを突き放した。「スピアーズのFWはデカくて重いし、9番(谷口)と10番(SOの押川敦治)のゲームメイクも良かった。うちのチームも60分まではいいゲームができたが、トップ4に入るような強いチームは、そこからの20分が違う」

 試合後、グリーンロケッツのキャプテンでFBレメキ ロマノラヴァが認めたように、後半はスピアーズが自慢のフィジカルパワーを武器にゲームを支配した。

 80分間を通して足を止めないハードワークはもちろん、選手層の厚さ。とりわけ若手の突き上げも、好調の大きな要因だろう。この日は前節にハットトリック(3トライ)の南アフリカ代表HOマルコム・マークス、司令塔のオーストラリア代表SOバーナード・フォーリーをスタメンから外し、メンバーを入れ替えて臨んだが、それでも確実に勝利を掴んでみせたのは、チームとしての総合力が高まっている証拠だ。

 昨季新人王のWTB根塚洸雅(24歳)、この日も2トライを挙げ開幕から4戦連続トライと波に乗る木田(23歳)、前節にリーグワンデビューを果たし、この試合で初スタメンを飾った押川(23歳)、途中出場からリズムを変えたSH藤原忍(23歳)といったヤングガンズが、チームに勢いとエナジーをもたらしている。
  今季4戦目にして初めてリザーブに回った藤原も、大きな手応えを感じているようだ。

「(昨季と比べて)しっかりとした状況判断のもとでゲームをコントロールできていると思います。チームとしても、まずは強いランナーに当てて流れを引き寄せる、それができなければキックでエリアを取っていくという狙いが明確なので、多少ミスをしてもそのプロセスに立ち返れる。そうした強みがあるのは大きいですね」

 1年前、帝京大を日本一に導いた押川はバーナードに代わって10番を背負ったこの日の出来を「最初は緊張もあったし、それほど評価は高くない」と冷静に自己分析したが、それでも前半にこのルーキーがテンポ良くボールを動かし、相手を走らせたことがジャブとなって後半の一方的なゲーム展開につながったのは間違いない。ハーフタイムにはチームメイトに対してこんな指示も送ったという。

「苦しい時に難しいプレーをするのではなく、自分たちの強みであるコンタクトの部分に立ち返ろうと、FWにも僕のほうからコミュニケーションしました。全員が連動したアタックをすれば、必ず良いモメンタム(勢い)が生まれると話しましたが、それを後半にみんなが意識してやってくれたと思います」

 いやはや、堂々たるものである。 過去2シーズン連続でリーグ新人王(WTB/FBの金秀隆、根塚)を輩出してきたスピアーズには、若手が伸び伸びとプレーできる土壌があるのだろう。押川もそれを実感しているようだ。

「ミスを新たな学びとして受け入れてくれる環境が、ここにはあります。だから普段の練習からミスを恐れず、思い切ったプレーができるんです」

 さらに、今季から導入されたアーリーエントリー制度によって、押川の後輩で現在帝京大4年のCTB二村莞司にも、近いうちにリーグワンデビューの機会が訪れるかもしれない。こうして頼もしい若手が続々と台頭し、彼らが経験豊富なベテランから多くを学びながら、チームの成熟度を高めていくという好循環が、今のスピアーズの好調を支えている。
 「ランニングスキルや空中戦、状況判断とまだまだレベルアップしなければならない部分は多いですが、選手である限り、もちろん今年のワールドカップ出場を目指します」

 そう力強く、きっぱり言い放った木田。現在リーグトライ首位タイ(6トライ)を走る23歳をはじめとする若手有望株たちが、今年9月フランスで開幕するワールドカップの日本代表候補に名を連ねるまでに成長を遂げれば──。

 この日、スピアーズはトライ数でグリーンロケッツに5本差をつけて完勝。15日に試合が行なわれた首位ワイルドナイツも勝利し、リーグ4連勝。スピアーズは勝点1差の2位と好位置につけている。今シーズン、絶好調なスピアーズがリーグワンの頂点に立ったとしても、なんら不思議ではない。

取材・文●吉田治良

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